平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説

2021年4月7日平成29年度, 日本語教育能力検定試験 解説

(6)「テイル形」に関する記述

 テイル形について、ここでは庵・清水(2016)の7つの用法で話を進めます。

進行中 動きが知覚可能な形で存在する 雨が降っている。
結果残存 変化の結果の状態が存在する コップが割れている。
繰り返し 同一主体が繰り返す事態や複数主体によって起こされる事態を表す 私は毎日6時に起きている。
経験・記録 過去の事態を発話時と関連づけて述べる 夏目漱石は1867年に生まれている。
完了 ある出来事が基準時以前に起こったことを表す 会場に着いたとき、コンサートは始まっていた。
反事実 現実には起こらなかった事態を表す あのときお金があったら、あのカメラを買っていた。
単なる状態
(形容詞的用法)
ル形がテンス的意味を持たない その鉛筆はとがっている。

 参考:http://www12.plala.or.jp/isaoiori/Tyuugokugowasya170701_iori.pdf
 参考:http://www.ls-japan.org/modules/documents/LSJpapers/meeting/158/papars/s/S-4_158.pdf

 
 選択肢1
 自他の対立があるのは動詞です。「開く」「開ける」のようなやつです。

 選択肢2
 有生・無生の対立があるのは存在表現です。
 日本語の存在表現は、主語が無生物の場合は「ある」、有生物の場合は「いる」です。

 選択肢3
 上記の表にもある通り、テイル形には完了の用法があります!!

 選択肢4
 所有を表すのは… 格助詞「の」でしょう。「私の財布」とか。
 上記の表には所有はありません。

 したがって答えは3です。

 

(7)アスペクトを表す用法の「ばかり」

 アスペクトとは、述語が表す事象の完成度を表す文法形式のことです。たとえばこんな感じ。

直前 荷物を置くところ
開始 荷物を置く
進行中 荷物を置こうとしている
完了 荷物を置いた
完了直後 荷物を置いたばかり
結果や状態が継続 荷物が置いてある
結果や状態の消滅 荷物が置いてあった

 1 比喩の「ばかり」 
 2 限定の「ばかり」 
 3 原因の「ばかり」 
 4 動作の直後を表す「ばかり」

 選択肢4だけアスペクト表現です。
 したがって答えは4です。

 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて
 参考:【N0文法】~ばかりの
 参考:【N4文法】~ばかり
 参考:【N2文法】~ばかりに
 参考:【N4文法】~たばかりだ

 

(8)終結のアスペクト

 ここでいう「終結」は、アスペクト上記の表の「完了」と同じです。

 選択肢1
 「~ておく」はあらかじめ物事を済ませることを表す文法です。動作直前のアスペクト表現です。

 選択肢2
 「~きる」は動作の完了(終結)を表すアスペクト表現です。

 選択肢3
 この文の「~てくる」は継続を表すアスペクト表現です。

 選択肢4
 「~つつある」は何らかの動作や状態がある一定の方向へ持続的に変化していることを表す、継続・進展のアスペクト表現です。

 
 したがって答えは2です。

 参考:【N4文法】~ておく/とく
 参考:【N3文法】~切る/きる/きれる/きらない/きれない
 参考:【N4文法】~てくる
 参考:【N2文法】~つつある

 

(9)動き動詞

 文章中に「動き動詞(非状態動詞)」とあるのがヒントになります。金田一晴彦の4分類で状態動詞ではないものは、継続動詞と瞬間動詞。この2つはまさに動きを表す動き動詞です。

 第四種の動詞は「山がそびえている」みたいに形容詞的に用いられ、物事の性質や様子を表します。でも「そびえる」は動きではないので事象の完成度っていうものもありません。「そびえている」の「ている」は継続・進展を表しているわけではありませんよね。

 ということで答えは2です!

 

(10)副詞が述語のアスペクトの解釈を変更している例

 副詞が述語のアスペクトに影響しているかどうかを見ます。

 選択肢1
 「こなごなに花瓶が割れている」では、終了後の状態を表すアスペクト「~ている」が用いられています。
 「こなごなに」をなくして「花瓶が割れている」としても「~ている」の解釈は変わらず終了後の状態です。
 副詞「こなごなに」があってもなくても、アスペクトの解釈は変わりません。

 選択肢2
 「ゆっくり幕が下りている」の「~ている」は進展を表すアスペクトで、今まさに幕が下りているところを表します。
 「ゆっくり」をなくして「幕が下りている」とすると、この「~ている」は終了後の状態を表しています。
 副詞「ゆっくり」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

 選択肢3
 「次々と当選が確定している」の「~ている」は進展を表すアスペクトです。
 「次々と」をなくして「当選が確定している」とすると、この「~ている」は終了後の状態を表しています。
 副詞「次々と」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

 選択肢4
 「毎日牛乳を飲んでいる」の「~ている」は習慣を表しています。これは繰り返しのアスペクト表現(習慣相)です。
 「毎日」をなくして「牛乳を飲んでいる」とすると、この「~ている」は進展を表しています。
 副詞「毎日」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

 したがって答えは1です。





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