母音、子音とIPA(国際音声記号)について
母音
母音は呼気の流れを妨げないで発する音です。その音の違いは唇の丸めの有無、舌の前後位置、舌の高さ(口の開き具合)の3つの要素で決まります。
母音 | 円唇性 | 舌の前後位置 | 舌の高さ(口の開き) |
---|---|---|---|
イ [i] | 非円唇 | 前舌 | 高母音(狭母音) |
エ [e] | 非円唇 | 前舌 | 中母音(半狭母音) |
ア [ɑ] | 非円唇 | 後舌 | 低母音(広母音) |
オ [o] | 円唇 | 後舌 | 中母音(半狭母音) |
ウ [ɯ] | 非円唇 | 後舌 | 高母音(狭母音) |
※試験では、アを [a] と表記します。だから試験に限り[ɑ]=[a]と思ってOK。
日本語は5母音体系の言語で、うち[o]だけが唇を丸めて発音します。
「イエアオウ」の順で発音すると、はじめ「イ」は舌の位置が高く、「ア」で一番低くなって、「ウ」に向かってまた高くなっていきます。その時の口の開き具合は 狭→広→狭 と変わります。
子音
子音は呼気の流れを声道のどこかで妨げて発する音です。その音の違いは声帯振動の有無、調音点、調音法の3つの要素で決まります。分かりやすく言うと、声道のどこで妨げるかが調音点、どうやって妨げるかが調音法です。
声帯振動の有無
発声時に声帯が振動すれば有声音、振動しなければ無声音。
カサタハパ行の子音は無声音で、それ以外の子音は有声音です。
ちなみに母音は全部有声音。
調音点
子音の調音に際して声道内で空気の流れを妨げる場所のこと。
その部分に舌を当てたり、接近させたりして空気の流れを妨げることで音を作ります。日本語の標準語では両唇、歯茎、歯茎硬口蓋、硬口蓋、軟口蓋、口蓋垂、声門の7つです。
両唇 | 上唇と下唇 |
---|---|
歯茎 | 歯のすぐ裏側 |
歯茎硬口蓋 | 歯茎と硬口蓋の中間 |
硬口蓋 | 上顎のツルツルした硬いところ |
軟口蓋 | 口の奥の柔らかくヒダがあるところ |
口蓋垂 | のどちんこ |
声門 | 日本語だと「は」「へ」「ほ」だけ |
調音法
調音点における呼気の妨害の方法のこと。
日本語の標準語では鼻音、破裂音、摩擦音、破擦音、弾き音、半母音(接近音)の6つです。
鼻音 | 鼻腔への通路が開いている状態で発する音。口蓋帆(軟口蓋後部と口蓋垂)の先端である口蓋垂を下げて呼気を鼻腔に通すことで鼻音を出します。 |
---|---|
破裂音 | 調音点で呼気の流れを完全に止め、その閉鎖を一瞬で開放し破裂させる音。(完全に閉鎖するので閉鎖音とも呼ばれます) |
摩擦音 | 調音点で隙間を作って、そのわずかな隙間に呼気を通して発する音。 |
破擦音 | 破裂の後に摩擦が生じる音。(つ、ち…) |
弾き音 | 調音点で舌尖を一度素早く弾いて発する音。舌尖だけやや上向きになって弾きます。 |
半母音接近音 | 「や」が「い+あ」の組み合わせで発音されるように、複数の母音が合わさり子音となっている音。([y][ɰ])[y][ɰ]は他の子音と違ってそれだけで発音できず、母音にくっついて発音できるちょっと特別な子音だから半母音と呼ばれてます。また、調音点に接近して発する音なので接近音とも呼ばれます。作る隙間は摩擦音よりも広く、摩擦が発生するほどではありません。 |
日本語の主な子音
IPA | 声帯振動の有無 | 調音点 | 調音法 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
かきくけこ | [k] | 無声 | 軟口蓋 | 破裂音 | – |
がぎぐげご | [g] | 有声 | 軟口蓋 | 破裂音 | – |
か゚き゚く゚け゚こ゚ | [ŋ] | 有声 | 軟口蓋 | 鼻音 | – |
さすせそ | [s] | 無声 | 歯茎 | 摩擦音 | – |
し | [ɕ] | 無声 | 歯茎硬口蓋 | 摩擦音 | – |
ざずづぜぞ | [dz] | 有声 | 歯茎 | 破擦音 | 語頭、または撥音、促音の後 |
ざずづぜぞ | [z] | 有声 | 歯茎 | 摩擦音 | 語中(撥音、促音の後以外) |
じぢ | [dʑ] | 有声 | 歯茎硬口蓋 | 破擦音 | 語頭、または撥音、促音の後 |
じぢ | [ʑ] | 有声 | 歯茎硬口蓋 | 摩擦音 | 語中(撥音、促音の後以外) |
たてと | [t] | 無声 | 歯茎 | 破裂音 | – |
つ | [ts] | 無声 | 歯茎 | 破擦音 | – |
ち | [tɕ] | 無声 | 歯茎硬口蓋 | 破擦音 | – |
だでど | [d] | 有声 | 歯茎 | 破裂音 | – |
なぬねの | [n] | 有声 | 歯茎 | 鼻音 | – |
に | [ɲ] | 有声 | 硬口蓋 | 鼻音 | (※1) |
はへほ | [h] | 無声 | 声門 | 摩擦音 | – |
ひ | [ç] | 無声 | 硬口蓋 | 摩擦音 | – |
ふ | [ɸ] | 無声 | 両唇 | 摩擦音 | – |
ばびぶべぼ | [b] | 有声 | 両唇 | 破裂音 | – |
ぱぴぷぺぽ | [p] | 無声 | 両唇 | 破裂音 | – |
まみむめも | [m] | 有声 | 両唇 | 鼻音 | – |
やゆよ | [j] | 有声 | 硬口蓋 | 接近音 | – |
らりるれろ | [ɾ] | 有声 | 歯茎 | 弾き音 | – |
わ | [ɰ] | 有声 | 軟口蓋 | 接近音 | – |
ん | [ɴ] | 有声 | 口蓋垂 | 鼻音 | 語末 |
(※1)日本語の「に」は有声歯茎鼻音[n]が口蓋化した[nʲi]で発音されることが一般的ですが、過去の試験では一貫して「に」は[ɲi]として出題されていますので、ここではそれに倣って「に」は「有声硬口蓋鼻音[ɲi]」としてまとめてあります。
覚えておきたい他の子音
IPA | 声帯振動の有無 | 調音点 | 調音法 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
英語のf | [f] | 無声 | 唇歯 | 摩擦音 | – |
英語のv | [v] | 有声 | 唇歯 | 摩擦音 | – |
[th]ink | [θ] | 無声 | 歯 | 摩擦音 | – |
[th]is | [ð] | 有声 | 歯 | 摩擦音 | – |
[l]ook | [l] | 有声 | 歯茎 | 側面音 | – |
江戸っ子口調 | [r] | 有声 | 歯茎 | 震え音 | – |
[wa]nt | [w] | 有声 | 両唇軟口蓋 | 接近音 | 両唇と軟口蓋の2か所で同時に調音する二重調音 |
硬口蓋化
日本語のイ段はちょっと特別。
「ア」「ウ」「オ」に前舌から中舌面の盛り上がるが加わると「ヤ」「ユ」「ヨ」
「カ」「ク」「コ」に前舌から中舌面の盛り上がるが加わると「キャ」「キュ」「キョ」
「サ」「ス」「ソ」に前舌から中舌面の盛り上がるが加わると「シャ」「シュ」「ショ」
…
この舌の盛り上がりは硬口蓋化(口蓋化)と呼ばれる現象です。イ段は全て子音調音時に前舌から中舌面が硬口蓋に向けて盛り上がります。だからイ段の調音点は他の段と違っておかしくなってます。
舌が関わる発音は全て硬口蓋化しますが、[p][b][m][ɸ]は舌を使わない両唇音なので舌の盛り上がりは関係ありません。だから「パ→ピャ」「バ→ビャ」「マ→ミャ」「フ→フャ」の過程では硬口蓋化しません。
ディスカッション
コメント一覧
アクセント型のドリルについてですが、大変恐縮なのですが、下記の点をご確認頂けませんでしょうか?
2)財布 解答:起伏式尾高型
・・・これは平板式平板型という可能性はないでしょうか?1)時計(解答:平板式平板型)と比較したとき、「とけいが」と「さいふが」が同じアクセントになってしまうので・・・。
126)紙 解答:平板式平板型
・・・これは起伏式尾高型という可能性はないでしょうか?124)舌(解答:起伏式尾高型)と比較したとき、「したが」と「かみが」が同じになってしまうので・・・。
手元にアクセント字典がなく、また、「OJAD」で調べても違いがわからないので、自信があるわけではないのですが、お時間があるときにご確認頂ければありがたく存じます。
>石川さん
返信が遅れまして大変申し訳ありませんでした。アクセントの問題について全てひと通り確認しました。
(2)「財布」について、確かに平板型でしたので修正しました。
(126)「紙」について、これもアクセントを調べたところ尾高型でしたので修正しました。
また、他にも(39)「蜘蛛」も誤りで、正しくは頭高型です。
ご指摘いただきありがとうございました。不備がありご迷惑をおかけしていますが、これからもよろしくお願いいたします。