「~ものの」と「~ものを」の違い
逆説を表す文法に「~ものの(N2)」と「~ものを(N1)」があります。
たった1文字しか違いませんが、ニュアンスも用法も大きく異なります。
ものの
既に発生したこと対して用います。意味は「しかし」とほぼ同じですが、それよりも硬い表現です。
前項では事実を述べて、後項には前項に対応する事柄がまだ行われていないか、通常起こらない、起こりそうにないことを述べます。
(1)(2)のように、後項には自信がなかったり、実現困難なことが続くことが多いです。
(1) 五十音を発音できるようになったものの、書けと言われれば自信がない。
(2) 歩いて帰ると言ったものの、雨が降ってきたので結局タクシーで帰った。
(3) 頭から落ちたものの頭部は骨折しなかった。
(4) 着替えたものの、どこにも行きたくない。
ものを
既に発生したことに対する仮定や可能性について述べます。
その仮定が実行されなかったことに対する不満、後悔、残念などのニュアンスを持ち、その事柄の結果に対して不満を感じているときによく用います。
「のに」に言い換えることができますが、「のに」よりも硬い表現です。
(5) 黙っていればいいものを、なぜ自分から話すようなことをしたのか。
(6) 車で行けばいいものを、歩いていくからそんなことになるんだ。
後項は省略可能なので、「~ものを。」で文を終わらせることができます。
(7) 薬を飲めばすぐ治るものを。(意地張って飲まないから悪化したんだ)
(8) 教えてくれたらすぐ助けにいったものを。
まとめ
「~ものの」は自信がない、実現困難なニュアンス。
「~ものを」は不満のニュアンス。後件は省略可。
どちらの文法にも含まれている「もの」は形式名詞なので、それに接続する形は名詞修飾形になります。
したがって動詞、な形容詞、い形容詞の名詞修飾形であればいずれも接続できます。
以上です。
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