「~てくる」と「~ていく」の違い①
「~てくる」と「~ていく」の違いについて2回に分けて紹介します。
今回はその1回目で、初級・中級の方々は最低限知っておくべき部分をまとめたいと思います。
「行く」と「行ってくる」の違い
(1) 学校に行く。
(2) 買い物に行く。
(3) 学校に行ってくる。
(4) 買い物に行ってくる。
まずは「行く」と「行ってくる」について。
「行く」はある地点から別の地点への一方向の移動を表します。
「行ってくる」は往復の移動を表します。つまり、ある地点から別の地点へ行った後、そこからまた元の場所に戻ります。
(3)は家から学校に行って、一定時間を挟み、学校から家に戻る意思があることが分かります。
(5) (ゴミ捨て場へゴミ捨てに)ちょっと行ってくるね。
(6) (留学のため空港で別れる際)行ってきます。
「行ってくる」は、すぐに戻るとは限りません。
(5)のように家からゴミ捨て場まで数分であっても使うことができますし、(6)のように留学して何年も帰って来ない場合でも問題ありません。
いずれにしても本人に「戻る意思」があれば、挟む時間が短期的か長期的かに関わらず使えます。
(7) 家出する。
(8)✕家出してくる。
(9)✕死んでくる。
したがって、もう戻ってこないことが前提である「家出」は、(8)のように「家出してくる」と言うと正しくありません。
(9)も同様、一度死んだら戻ってこれませんので原則非文です。
ただし、文脈によっては「死んで幽霊になって戻ってくる」という意味も表せますので絶対間違いであるとは言い切れません。
いろいろな言い方
「~てくる」「~ていく」以外にもいくつかの言い方があります。
(9) 人民公園で食べてくる。
(10) 人民公園で食べていく。
(11) 人民公園に食べに行く。
(12) 人民公園に行って、食べる。
この4種類は意味が少しずつ異なっていますので学習者にとっては混乱しやすい部分です。
(9) 今いるところから人民公園に行って、そこで食べて、また元いた場所に戻ります。
(10) 今人民公園にいて、そこで食べてから別のところに行くことを表しています。
(11) 「食べにいく」の「に」は移動の目的を表し、ここでは「食べるために行く」という意味になります。
(12) 今いるところから人民公園に行って、食べるという順次的動作を表しています。
(9)と(10)は格助詞「で」をとり、(11)と(12)は格助詞「に」をとりますので注意してください。
「いってきます」と「いってらっしゃい」
どこかに行く時の挨拶に「いってきます」、それに対する返答に「いってらっしゃい」があります。
これもまた往復の移動を表しています。
(13) いってきます(行く+来る)
(14) いってらっしゃい (行く+「来る」の尊敬語)
(15)✕いっていらっしゃい
「いってらっしゃい」は、「行く」と「来る」の部分に分けられます。
「来る」の尊敬語は「いらっしゃる」です。
「行く」と「いらっしゃる」が接続されて、「いってらっしゃい」となりました。
(15)のような言い方は不適切で、通常途中の「い」は省略されて言われます。
(16) いってこい
(17) いってらっしゃいませ
(16)は来るの命令形「こい」を接続した形です。
(17)は「ませ」をつけて更に丁寧にした形です。旅館などで宿泊客を送り出すときに用いられたりします。
まとめ
「行ってくる」は往復の移動を表しますので、戻る意志がある時に用います。
戻るまでの時間は短くても長くても、どちらでも構いません。
そもそも戻ることが前提でない動詞には接続できません。
「家出」「死ぬ」等々…
以上です。
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