令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説
問1 語の借用
外国語の言葉を借用して自分の言語の中に取り入れたものが外来語です。
選択肢1
英語の「sign」は署名するという意味を持つ動詞ですけど、日本語の「サイン」は名詞です。動詞にするには「する」をつけないといけません。原語の品詞がそのまま日本語でも同じ品詞になるとは限りません。
選択肢2
中国語「拉面」は、2つの形態素「拉」と「面」からできてます。それぞれの形態素を借用して、「ラーメン」が外来語として日本語に入りました。形態素レベルで借用は起きます。
選択肢3
威信の高い言語、これはダイグロシアにおける高変種のことです。例えばマレーシアでは中国語、マレー語、英語の3言語がありますが、中国語はより公的な場面で使われる高級な言語として扱われているそうです。では高変種から借用されにくく、低変種からはされやすいのかというとそんなことはないんじゃ… 例は挙げられませんけど。
選択肢4
「野球」という言葉があるのに「ベースボール」という言い方もあります。
同一概念を表すのに借用されているので、この記述は間違い。
したがって答えは1です。
問2 翻訳借用
こういう問題が好き。翻訳借用、初めて聞いた言葉でした。
また一つ勉強できました。
英語の「keyboard」を借用するとき、「key」を鍵、「board」を盤として中国語になりました。それが日本語にも来ています。こうして語の意味を翻訳して取り入れることが翻訳借用です。
そして選択肢2みたいなやり方は音訳借用と言います。
1 ????
2 音訳借用
3 ????
4 翻訳借用
答えは4です。
問3 意味の縮小
意味の縮小とは、借用元の言語での原義ではなく、特定の意味のみでの使用されることです。
選択肢4
「車」は、中世では牛の引く乗り物である<牛車>を指し、近世では<荷車>を指し、近代では<人力車>を指し、現代では<自動車>を指します。借用されたばかりの頃は、確かに車輪の付いた乗り物を指していた「車」ですが、現代ではもっぱら「自動車」を指す語として使われています。特定の意味のみで使用されるようになったので、これは意味が縮小しています。
したがって答えは4です。
問4 外来語の言い換え
言い換え提案は次のから見れます。
参考:「外来語」言い換え提案 ―分かりにくい外来語を分かりやすくするための言葉遣いの工夫―
1 翻訳語の作り方じゃなくて、言い換え語そのものを示してます。
2 これが答え
3 使用を減少させるためではなく、分かりにくい外来語を一般人にも分かりやすいように言い換えたり、説明を付けたりすることを目的としています。それから、リストになっているのが和語ではなく外来語です。
4 制限するためではありません。
したがって答えは2です。
問5 原語との音韻的違い
選択肢1
英語の strike は、これで一音節です。
でも日本語にすると「ストライク(sutoraiku)」という語になって、5音節5モーラになります。借用の過程でその言語の音韻体系に直されるということです。
ですから正しい記述。
選択肢2
外来語は、通常語末から3拍目にアクセント核が来るという特徴があります。これは強勢アクセントの位置を基にしたものではありません。関係ないとも言い切れませんが、英語の強弱アクセントを日本語のアクセントの規則に全て落とし込むのはできると思いません。
選択肢3
loose の se は無声音なのに、日本語にしたら有声音「ズ」になっています。記述通り。
選択肢4
ホワイトシャツ(white shirt)がワイシャツとなったらしいです。もともと同じ語だったのに、借用したら異なる形式になっています。記述通り。
したがって答えは2です。