令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説
問1 和製英語
これは今年度の問題で一番印象に残っている問題でした。
試験Ⅰが終わったあとも頭から離れなくて、ずっと考えていました。でもどれが和製英語でどれが英語なのかなんてその場で考えても絶対分からないんでむしゃくしゃしますね。
1 barricade(英語)
2 panel(英語)に勝手に人を表す「er」を付けた和製英語
3 scanner(英語)
4 motivation(英語)
パネラーでした! 勘でしたが当たってよかったです。 (本来は「パネリスト」だそうです)
したがって答えは2です。
問2 尊敬語と謙譲語の混同
選択肢1
他人の女性配偶者を指すときは「奥様」あるいは「奥さん」を使うべきですが、ここでは自分の女性配偶者を指す「妻」を使っています。
「奥様」は尊敬語ですが、「妻」は何でもない普通の表現なので、尊敬語と謙譲語を混同している例としては不適当です。
選択肢2
「貸してあげましょうか」を謙譲語「貸して差し上げましょうか」としてもなぜかふさわしくない感じがすると思います。「差し上げる」は「あげる」の謙譲語なのにも関わらず、使う場面によっては不適切な表現になってしまう不思議な言葉なんです。ここでは「お貸しします」のような謙譲語を使った直接的な表現や「これどうぞ」みたいな言い方でも構いません。
この例も尊敬語と謙譲語の混同ではありません。
選択肢3
正しくは尊敬表現「お+動詞ます形+ください」を使って「お座りください」と言うべきです。しかしこの学習者は「お+動テ形+ください」だと勘違いして間違っています。尊敬語と謙譲語の混同ではない誤用です。
選択肢4
「いる」の尊敬語を使って「ご兄弟は3人いらっしゃいますね」と言うべきでしたが、「いる」の謙譲語「おる」を使っています。
尊敬語と謙譲語を混同しています。
したがって答えは4です。
問3 非言語行動
公式発表の答えは4でした。
フランスもインドもアメリカもブラジルも、まったく行ったことがないから分かりませんけど…
選択肢4のようなハンドサインは、ブラジルでは「危険な自分をアピールする」ことを意味するらしい。
コメントでのご協力、ありがとうございました!
参考:【危険度別】海外で外国人にやってはいけない9のハンドサイン。日本語教師に聞いてみた – LIVE JAPAN (日本の旅行・観光・体験ガイド)
問4 日本語会話の特徴
選択肢1
これが答えです。
「よ」「ね」「よね」「な」などいろんな終助詞があります。
選択肢2
目上の人、例えば社長さんに二人称代名詞「あなた」などで呼びかけたら大変失礼になります。
日本語では「社長」と役職名で呼ぶか、「〇〇社長」のように苗字+役職名で呼ぶのが普通です。
選択肢3
A:新しいやり方を考えないとね。
B: 見つけないとね。
こういう会話スタイルは日本語でよく見られます。まるで話者同士がお互いの一つの発話を作っているような、話者同士の連帯感を強めようとしているような感じ。水谷はこれを「共話」と名付けました。
この選択肢の内容は逆です。日本では対話形式(一人が話した後にもう一人が話す)よりも共話形式の会話がよく見られます。
選択肢4
日本語は高コンテクストです。直接言葉にしなくても伝えたい意味が相手に伝わります。空気を読むとか、察してあげるようなコミュニケーションを好む傾向があります。言葉で表される内容に依存するのは低コンテクスト言語であり、日本語はそうではありません。言語そのものよりも文脈に依存して意味が決定します。
したがって答えは1です。
問5 フォリナー・トーク
先生が学生に話すときの話し方をフォリナー・トークと言います。
フォリナー・トークは学生のレベルに合わせられます。あまり上手ではない人にはゆっくり、やさしい言葉を使ったり、同じ言葉を何度か繰り返したり、同じ意味の別の言葉を連ねたりする特徴があります。
選択肢1
ビジネス? 違います。
選択肢2
これもフォリナー・トークと関係ないものです。
選択肢3
学習者の言語理解を助けるために用いるもの。この記述がフォリナー・トークです。
選択肢4
フォリナー・トークは学習者の学習効果を高められるとは限りません。日本語のレベルが低い人であれば分かりやすい、伝わりやすい日本語で話しかけてあげることによって会話も理解も進み、高められるかもしれません。しかし上級にもなると「先生、自然な日本語で話してください!」って言ってくる人もいます。そう言う人に対してフォリナー・トークを使い続けると、日本語がそれ以上上達しにくくなったりします。
したがって答えは3です。
ディスカッション
コメント一覧
お疲れ様です。
私も、パネラーを選びました! 勘です。したがって答えは⇒ 2ですね。
>松阪さん
ありがとうございます! さっそく間違えて書いていました。
すでに修正いたしました。
英語では”panelist”ですね。たまたま知っていたため、この問題は(珍しく?)自信を持って解くことができました(*^o^*)
試験前、何度もこちらのサイトを見せていただきました。独学者にとって心強い支えでした。感謝しています!
>アサノさん
なるほど! panelist、こっちですかあ。気づきませんでした。
ご協力いただきありがとうございます。
分からないこと等ありましたらコメントからいつでもお願いいたします。
問3は 選択肢4が違うっぽいですね。
https://livejapan.com/ja/article-a0002154/
日本では「OK」というような意味で使う、親指と人差し指でまるを作る仕草は、フランスでは「無価値、ゼロ」という意味になります。また、ブラジルでは危険な自分をアピールするハンドサインになります。肛門や女性器などを意味することも。
高橋先生、こんばんは。いつもお世話になりありがとうございます。
問3、私も最初選択肢1と選択肢2をざっと読み、固まってしまいました。3は、異文化コミュニケーションに関することで取りあげられることもあり、正と判断し消しました。
私はこれまでの仕事などで、南米と関わりがあったこともあり、選択肢4のジェッシャーは要注意ということを知っていたので、選択肢4を選ぶことができました。
https://www.otoa.com/support/mame/taboo02.php
選択肢1のジェッシャーは、南米でも「面白くない」という意味の他に、例えばサッカーの試合などで、相手のチームがゴールを決めたり、ペナルティー行為をしたりした際にブーイングの意味でもします。