令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 認知スタイル

 ※この問題はページ下部のコメント欄からご協力よろしくお願いいたします。

 認知スタイルが出るのは3年ぶりですね!
 これは情報の知覚、符号化、体制化、記憶などに対して個人が一貫して示す方法のことです。
 簡単に言うと実際のコミュニケーションが好きなのか、本で勉強するのが好きなのか、ストレスに耐えながら勉強できるのかできないのか、のような人による違いのことです。クラスで一人くらいいますよね、とんでもなく明るく冗談を言ったりして周囲を楽しませる人。あんな感じの人は言語学習をすると座学よりもコミュニケーションのほうが好きなのか、言葉を使ってよく遊んだりします。

 思考型と内向型は初めて聞きました。ユングのタイプ論のことだと思います。
 こちらは内向か外向かという2つの態度と、思考か感情か、感覚か直観かの4つの機能によって、性格を8つに分類したものです。本読んでないので解説不能。

 選択肢1
 これは「あいまいさへの寛容」という認知スタイルの記述です。読解や聴解で分からない単語や表現が出てきても、文脈から推測したりして何とかなるタイプのことです。理解できないという状態に対して耐性が強い傾向があります。
 逆に一語一語しっかり訳して理解したいタイプの人は分からない言葉が1つでも出てくるとその状態に耐えられず、先生に聞いてしまったり投げ出したりします。

 選択肢2
 分かりません! 感情とあるので感情型?

 選択肢3
 場依存型とは、視覚的な場に依存し、コミュニケーションを好むようなタイプのことです。コンテクストの支えがあまりない座学なんかを嫌います。この記述が一番合うかなーという曖昧な感じです。

 選択肢4
 分かりません! たぶん衝動型の記述?
 ちなみに「場独立型」とは、視覚的な場に依存せず、分析や論理的思考が好きなタイプのことです。会話よりも暗記のほうが得意な傾向があります。

 この問題、あまり分からなかったです。タイプ論も読んでないし、学習スタイルに関することもそれほど詳しくないし…
 答えは3です。

 

問2 学習ストラテジー

 優れた言語学習者になるためにはどんな資質が必要なのか。オックスフォードはその必要な資質として次の6つを挙げています。それが学習ストラテジーです。

直接 記憶 記憶するために用いる暗記、暗唱、復習、動作などの記憶術。新しい知識を蓄え、蓄えた知識の想起を支えるもの。
認知 記憶した情報の操作や変換に用いるストラテジー。リハーサルしたり、既知の要素を組み合わせて長い連鎖を作ったり、分析・推論するなど。または、より理解を深めたりアウトプットするためにメモ、要約、線引き、色分けなどをして知識を構造化するなど。
補償 外国語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために用いるストラテジー。知識が十分でなくても推測やジェスチャーなどによって限界を越え、話したり書いたりできるようになる。
間接 メタ認知 学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。自分の認知を自分でコントロールし、自ら学習の司令塔となって学習過程を調整したり、自分自身をモニターする。
情意 学習者が学習者自身の感情、態度、動機などの情意的側面をコントロールし、否定的な感情を克服するためのストラテジー。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなど。
社会的 学習に他者が関わることによって学習を促進させるストラテジー。質問したり、明確化を求めたり、協力したりするなど。

 1 「計画を立てる」のはメタ認知ストラテジー
 2 「自分を褒める」のは情意ストラテジー
 3 「友達を作る」のは社会的ストラテジー
 4 「推測」という言葉が来たら補償ストラテジー

 したがって答えは4です。
 この学習ストラテジーは毎年出ているくらいの常連さん。試験を受ける方は必ず、必ず覚えてください!



問3 キーワード法

 キーワード法は令和元年度 試験Ⅰ 問題9 問4で出て以来2年ぶり。新試験になってからは2回目です。

 これは目標言語の覚えたい語と音韻的に類似した母語の言葉のイメージと結びつけ、その関連性によって語とその意味を記憶する記憶術のことです。具体的にどうやるかと言いますと…

 中国語に「王八蛋」という言葉があります。これは人を罵る言葉で、ここでは「バカ」という意味にしておきます。この言葉の発音は日本語の「ワンパターン」と非常に似ています。その音韻的な類似性を利用します。例えば同じような事を繰り返すワンパターンな人を頭で想像し、その人は「バカ」だという具合です。こうすると「王八蛋(ワンパターン)」と「バカ:が音声情報として結び付けられます。

 1 これがキーワード法の記述
 2 他者と関連付けて覚えるよりも、自分と関連付けて覚えたほうが記憶しやすいという記憶現象を自己関連付け効果と言います。これを利用した記憶術でしょう。
 3 何か名前がついている記憶術でしょうか。
 4 間違えるならこれ。でもこれはキーワード法ではない何か別のものです。

 したがって答えは1です。



問4 音韻処理能力

 第二言語習得に影響する要因として、言語適性というものがあります。言語センスと言われたりするものですが、じゃあ具体的にセンスって何のこと?
 一応MLAT(Modern Language Aptitude Test)というCarroll(1962)が開発した言語適性を測定する試験がありまして、言語適性は音韻符号化能力、文法的感受性、帰納的言語学習能力、記憶力の4つからなると言われています。

 一方、問題文に出てきているスキーハン(P.Skehan 1998)は、文法的感受性と帰納的言語学習能力は同じ能力だとして言語分析能力に統合し、言語適性は「音韻処理能力」「言語分析能力」「記憶力」の3つからなると言いました。

 この音韻符号化能力とは、「未知の音声を識別し記憶する能力」のことです。
 これとほぼ同じ記述が選択肢3にあります。

 したがって答えは3です。

 

問5 統合的動機づけ

 第二言語習得における、外国語学習の動機づけはガードナー(Gardner)が次の2つに分類しています。

統合的動機づけ その言語の文化が好き、その言語を話す人が好き、その文化に溶け込みたいという気持ちからくる学習のこと。
道具的動機づけ 何か他の目的を達成するために外国語を利用するような学習のこと。お金のため、進学や就職のためなど…

 選択肢1
 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ)

 選択肢2
 外部報酬を得るための原動力となるもの(外発的動機づけ)
 外国語を道具として利用する(道具的動機づけ)

 選択肢3
 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ)

 選択肢4
 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ)
 その文化に溶け込みたいという感情からくるもの(統合的動機づけ)

 選択肢4には統合的動機づけが見られます。
 したがって答えは4です。

 




2022年8月25日令和3年度, 日本語教育能力検定試験