令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

2021年10月29日令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説

(1)調音点

 声帯は喉頭の中央部左右にある喉頭粘膜のひだで、人はそれを動かして接近させたり開いたりすることで発声します。その左右のひだの間の通路を声門と呼びます。声帯に近いのは声門です。近いというか、すぐもう隣です。

 したがって答えは1です。

 こちらにある画像が分かりやすいです。
 参考:中咽頭がん 全ページ:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

 

(2)韻律(プロソディ)

 韻律(プロソディ)とは、アクセント、イントネーション、プロミネンス、リズム、ポーズなどの、表記からはどうであるか推測できない諸要素のことです。
 例えば、日本語の「そうなんですか」という表記だけを見て話し手がどのような言い方で言ったのかは確定できません。下降調のイントネーションで言えば納得ですし、上昇調なら疑問になります。プロソディは文字にできないので、文字にした途端消えてしまいます。日本語のひらがな、カタカナ、漢字は全てプロソディを表現できません。

 しかし中国語のピンインは違います。
 例えば私の名前「高橋龍之介」は、ピンインにするとこのように書きます。

gāo qiáo lóng zhī jiè
高 橋 龍 之 介

 アルファベットが並んでいますが、その上に線が書かれています。この線はアクセント記号です。
 中国語は4つの声調(アクセント)があり、それぞれどの声調で読めばいいのかピンインを見ればすぐ分かります。アクセントはプロソディで通常文字にすると消えてしまうものなのに、中国語のピンインはそれを記述する術を持ちます。

 したがって答えは3です。

 

(3)アクセント

 ※こちらの解説は「新明解日本語アクセント辞典」を参考にしています。

 選択肢1
 後部要素が動詞や形容詞の複合動詞、後部要素が漢語二字の複合動詞などは、原則として前部要素のアクセント型に関係なく、後部要素によってアクセントが決まると書かれています。前部要素のアクセント型に大きく影響するとは言えません。

 選択肢2
 高低アクセントにおけるアクセント核とは、高から低へと下がるところのことです。
 声の上がり目がアクセントになるのは共通語ではなく方言。

 選択肢3
 新明解の辞典には「動詞は名詞にくらべて型の数が少ない」と書かれています。
 名詞は2拍なら平板型、頭高型、尾高型の3種類、3拍以上なら平板型、頭高型、中高型、尾高型の4種類ですが、動詞は原則として2拍なら平板型(泣く)と頭高型(切る)、3拍以上なら平板型(笑う)と中高型(起きる)しかないそうです。
 この選択肢は間違い。

 選択肢4
 確かな記載が見つからないのですが、とりあえず経験から。
 以前アクセントについての資料を作っていた時にやけに平板型の語がたくさん見つかる現象に遭いました。その代わり尾高型を探すのがとても苦労したんですよね。肌感覚としては平板型が多そうではあります。
 ※こちらNHKのアクセント辞典などに記載があるでしょうか。ご協力お願いいたします。

 したがって答えは4です。

 

(4)イントネーション

 「海釣り」「窓枠」「猫除け」などの語はそれぞれ「海で釣る」「窓の枠」「猫を除ける」のように、前部要素と後部要素に格関係があったり、修飾・被修飾関係が認められます。これが統語構造というものです。[ ア ]には統語構造が入ります。

 ちなみに範列関係(パラディグマティックな関係)は、文中の同じ位置に置くことができる類義語や対義語などの関係のことです。例えば「~を見る」にはテレビや映画、アニメなどを入れることができるので、テレビ、映画、アニメには範列的な関係あるというふうにいいます。

 文中の強調したい部分を強めに言うことをプロミネンスと言います。普通に「私が髙橋です」と言うのと、「私が髙橋です」と「私が」を強くはっきり言うのとでは伝わり方が違います。プロミネンスはイントネーションを変化させることによって実現します。[ イ ]にはプロミネンスが入ります。

 ここで出ているフォーカスとは言語学の用語です。ある否定文において、否定される部分のことをフォーカスと言います。
 例えば「
好きでこんなことをやっているんじゃない」では、否定「んじゃない」のフォーカスが「好きで」です。フォーカスはイントネーションによるものではないので間違いです。

 なので答えは1ということになります。

 

(5)コミュニケーションエラー

 これはぱっと見数秒で答えは3だと分かる問題です。
 メタファーは比喩の一種だし、ダイクシスは発話現場にいないと分からない言語表現のことだし、シソーラスは辞書だし。問題文の韻律と何ら関係のないことを言っています。だから3です。

 選択肢3について…

 パラ言語情報とは、プロミネンス、イントネーション、フィラーなどのそれ自体文字にすることができず、言語情報に付随して命題を補完、補足するもののことです。ここではイントネーションはパラ言語情報の一つだというくらいで結構です。

 日本語において、平叙文のピッチ変化はへの字のようになり、疑問だったら上昇調のイントネーションだし、断定だったらまたそれらとは違うし… 細かい違いですけど言葉の意味を大きく変える機能があります。学習者がこのイントネーションの違い、その意味を知らないとコミュニケーションエラーが起きる可能性は十分にあります。

 





2021年10月29日令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説