連濁とは?
連濁(rendaku/sequential voicing)
複合語を構成するとき、後部要素の語頭子音が濁音化する現象を連濁と言います。後部要素の語頭の無声子音が母音(有声音)に挟まれた時、隣の音に同化するために起きます。
(1) かき + こおり → かきごおり
(2) て + かみ → てがみ
(3) ゆう + くれ → ゆうぐれ
(4) のこり + か → のこりが
濁音は本来語頭には立たないという日本語の性質があります。なので濁音になるということは、連濁した音が語中・語尾であることを示します。「かき」と「こおり」が合わさって「かきごおり」となったということは、「かき」と「こおり」という二語の組み合わせではなくて、「かきごおり」という一語になったということです。このように連濁は複合したことを表します。
連濁は試験の常連で、特に連濁が起きる条件について問う問題が多く出題されています。「水玉」等の多少の例外があって、その条件について完璧に説明できる法則は見つかっていませんが、連濁するものにはある程度規則性のようなものがあります。次に以下にまとめるのは、試験で出題される連濁を阻害する要因です。
日本語の音韻現象なので和語に起きやすい(漢語・外来語には起きにくい)
万葉集 三七五二にある「宇良我奈之伎」は「うらがなし(心悲し)」と読むように、連濁は奈良時代からあります。連濁はもともと和語に起きていた現象なので、現代でもやっぱり和語に起きやすい傾向があります。
(5) かんぜん + しょうり → かんぜんしょうり ※連濁しない (漢語)
(6) ノン + ストップ → ノンストップ ※連濁しない (外来語)
(7) かぶしき + かいしゃ → かぶしきがいしゃ ※連濁する (漢語)
(8) あめ + かっぱ → あまがっぱ ※連濁する (外来語)
「完全勝利」「ノンストップ」のような典型的な漢語、外来語は連濁しにくい傾向がありますが、「株式会社」「生醤油」「刺身包丁」「雨合羽」など、日本語として十分に定着している語は例外的に連濁します。これは日本語らしさ、和語らしさと関連があると言われています。
※「合羽」はもともとポルトガル語の「capa」
前部要素と後部要素が意味的に並列関係である場合は起きにくい
連濁が起きるのは複合語の後部要素の語頭子音ですが、どんな複合語でも連濁が起きるというわけでもありません。二語の組み合わせからなる複合語は前部要素と後部要素に分けられ、それらの関係性が連濁のしやすさとも関係しています。
複合語は、前部要素と後部要素の間にいろんな関係があります。
格関係 | 前部要素と後部要素の間に何らかの格助詞を入れると文ができるような関係。 [NでV型]の「手書き」、[NからV型]の「車離れ」、[NがV型]の「泡立つ」、[NをV型]の「雨乞い」、[NにV型]の「旅立つ」など… |
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修飾関係 | 前部要素が後部要素を修飾していたり、またはその逆だったりの関係。 生け花(生けた花)、近頃(近い頃)、白砂糖(白い砂糖)などの連体修飾関係もあれば、殴り書き(殴って書く)、狂い咲き(狂って咲く)、笑い死ぬ(笑って死ぬ)などの連用修飾関係もあります。 |
並列関係 | 前部要素と後部要素の間に格関係も修飾関係もなく、並列的に扱っているような関係。「草木」「白黒」「男女」などのN+N型、「上り下り」「飲み食い」「押し引き」などのV+V型、「好き嫌い」「甘酸っぱい」「暑苦しい」などのA+A型がある。 |
このうち、並列関係には連濁が起きにくいという特徴があります。例えば、「白黒」は「しろぐろ」、「好き嫌い」を「すきぎらい」とは言いません。逆に「車離れ」「縦書き」「青空」「分かち書き」みたいに前部要素と後部要素が格関係、修飾関係にある場合は起きやすくなります。
複合語の後部要素にもとから濁音が含まれている場合は起きにくい
複合語の後部要素にもとから濁音が含まれている場合、連濁は起きにくい。これをライマンの法則(Lyman’s Law)と呼びます。例えば、「はる+かぜ」のように後部要素にすでに濁音が含まれているときは「はるがぜ」とはならず「はるかぜ」のままになります。試験で頻出。この現象は、日本国内では本居宣長や賀茂真淵によって発見されていた規則だったんですが、アメリカの言語学会へ報告した人の名前がつけられています。
(9) はる + かぜ → はるかぜ ※連濁しない
(10) はれ + すがた → はれすがた ※連濁しない
※ライマンの法則にも「縄梯子」「避難梯子」等の例外が存在します。