令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ 問題3解説

 調音点や調音法については母音と子音の分類とIPA表記を参考にしてください。

1番 わたし → わらし

 「わたし」が「わらし」になる誤りです。

 「ら」は[ɾ]歯茎弾き音。
 歯茎に舌が触れて鼻腔への通路が閉じているのはaとcですが、弾き音は舌先が反り返るのが特徴です。

 1 歯茎弾き音
 2 歯茎鼻音
 3 歯茎破裂音/歯茎破擦音
 4 歯茎摩擦音

 したがって答えはaです。

 

2番 りょうきん → にょうきん

 「りょうきん」が「にょうきん」になる誤りです。

 1 歯茎鼻音
 2 歯茎硬口蓋弾き音
 3 歯茎硬口蓋摩擦音
 4 硬口蓋鼻音

 「に」は[ɲ]硬口蓋鼻音。(あるいは歯茎硬口蓋鼻音)
 舌が硬口蓋(歯茎硬口蓋)に触れながら鼻腔への通路が開いているdが答えです。

 

3番 しつれい → しちゅれい

 「しつれい」が「しちゅれい」になる誤りです。

 1 歯茎摩擦音
 2 歯茎鼻音
 3 歯茎硬口蓋破擦音
 4 軟口蓋破裂音

 「ち」は[tɕ]歯茎硬口蓋破擦音。
 歯茎硬口蓋に舌が触れて鼻腔への通路が閉じているのはcが答えです。

 

4番

 「ぶ」が「ぷ」になってます。

 「ぶ」は[b]有声両唇破裂音
 「ぷ」は[p]無声両唇破裂音

 声帯振動が必要な音なのに、振動せず発音されています。
 したがって答えはcです。

 

5番

 「こ」が「きょ」になっています。
 どちらも子音は[k]ですが、「きょ」は拗音。
 「こ」を発音するときに中舌面が硬口蓋に向かって盛り上がることで「きょ」になります。これは口蓋化と呼ばれる現象です。
 これによって[k]軟口蓋音だった「こ」が、少し硬口蓋方面に調音点がずれます。

 したがって答えはaです。

 

6番

 「しゅ」が「し」になっています。
 子音はどちらも[ɕ]ですが、母音が違います。
 「しゅ」の母音はウ、「し」はイです。

 イ [i] 非円唇 前舌 高母音(狭母音)
 ウ [ɯ] 非円唇 後舌 高母音(狭母音)

 イとウでは、舌の前後位置が違います。
 したがって答えはdです。

 

7番

 「ち」が「てぃ」になっています。

 「ち」の子音は[tɕ]無声 歯茎硬口蓋 破擦音
 「て」の子音は[t]無声 歯茎 破裂音

 調音点も調音法も違います。
 したがって答えはbです。

 

8番

 「か」が「く」になっています。
 どちらも子音は[k]なので、声帯振動、調音点、調音法は同じ。ただし母音が違います。

 ア [a] 非円唇 後舌 低母音(広母音)
 ウ [ɯ] 非円唇 後舌 高母音(狭母音)

 舌の高さが違います。
 答えはbです。

 




2023年1月8日令和2年度, 日本語教育能力検定試験 解説