令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題14解説

問1 指示詞からの転用によってできたもの

 「彼方(あなた)」はもともと遠方を指す指示詞でしたが、今では相手を指す人称詞として用いられるようになっています。
 したがって答えは1です。

 

問2 敬意が低減(逓減)した人称詞

 ここでは「敬意が低減した」とありますが、これは敬意低減の法則(敬意逓減の法則)を指してます。もともとその語が持っていた他者に対する敬意が時間の経過、時代の変化とともに薄らいでいく法則のことで、代表的な例として「貴様」や「お前」が挙げられます。元々相手を敬う語だったのに、今では軽蔑の対象に用いられるようになってますね。

 したがって答えは1です。

 

問3 主語が一人称のみに制限される例

 各選択肢の文の主語に人称制限があるかどうかを見てみます。

一人称 二人称 三人称

 選択肢2の「はずだ」は一人称には使えません。
 選択肢3の「~たい」は一人称にしか使えず、二人称、三人称では「~たがっている/たいらしい」などを使わなければいけません。
 選択肢4の伝聞「らしい」は三人称にしか使えません。

 したがって答えは3です。



問4 親族間の人称詞

 親族間での状況を考えてみます。

 1 母親に対して自分のことを兄と自称しません。
 2 母親に対して「彼女」と呼ぶことはありません。
 3 妹に対して自分のことを名前で呼ぶことはありません。年上の親族には自分を名前で呼ぶことはあります。
 4 妹に対して「お前」「私たち」を使うことはあります。

 したがって答えは4です。

 

問5 人称詞の指導

 選択肢1
 目上の人に「あなた」を使うと失礼になる場合があるので、名前にさん付けをするよう指導するのは正しいです。

 選択肢2
 「私」は現代では、男性でも女性でも共通して使いますので不自然ではありません。

 選択肢3
 自称詞「自分」は体育会系な印象を与えることがあります。「私」にはそういうニュアンスはなく比較的中立的です。
 また、「自分」は「自分はどう思う?」みたいな他称詞としての用法もあります。「私」は自称詞です。この違いについては指導しておいたほうが良さそう。

 選択肢4
 正しいです。目上の人を「彼」「彼女」と呼ぶのは失礼です。

 したがって答えは2です。

 




2023年8月26日令和元年度, 日本語教育能力検定試験