令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

 副詞とは、単独で活用はせず、動詞、形容詞、形容動詞などの用言を修飾する語のこと。意味による分類と形態論・構文論的視点による分類がある。

 意味による分類では、様態副詞、程度副詞、陳述副詞に分けられる。

様態副詞/情態副詞 動詞を修飾し、その動作がどのように起こったかを表すもの。擬態語、擬音語、擬声語、一部の畳語もこれに含まれる。そのうち、動きの量や人の量などを表す副詞を量副詞と分類することもある。
陳述副詞 述語の陳述に呼応して用いられるもの。また、話し手の伝達的態度や事態に対する認識、評価を表すもの。必ず、もし、たとえ、たぶん、なぜ…
程度副詞 形容詞などの状態性の語を修飾してその程度を表すもの。たいへん、とても、すごく…

 形態論・構文論的視点による分類では、頻度の副詞、時間関係の副詞、様態の副詞、結果の副詞、程度量の副詞に分類されるようですが、この研究の様態副詞については曖昧で整理されていない状態のようです。

 参考:日本語副詞の構造的多義 Structural Homonymy of Japanese Adverbs(児玉望)
 参考:https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=34869&item_no=1&attribute_id=17&file_no=1

 

問1 様態副詞

 「事態の開始とともに発生し、修了とともに消えるさまを表す」様態副詞を選ぶ問題です。

 1 びしょびしょに濡れた後も、びしょびしょという状態が継続しています。
 2 からからに渇いた後も、からからという状態が継続しています。
 3 まるまると太った後も、まるまるという状態が継続しています。
 4 ちらちらと舞い終わると共にその状態は終了しています。

 したがって答えは4です。

 

問2 漸次的な変化を表す動詞

 問題文によると、程度副詞は感情・感覚を表す動詞と漸次的な変化を表す動詞に結びつくそうです。
 程度副詞とは、形容詞などの状態性の語を修飾してその程度を表すもの。たいへん、とても、すごく…

 ためしに各選択肢に程度副詞を接続してみます。

 1 ◯とても喜ぶ(程度副詞+感情・感覚を表す動詞)
 2 ✕とても眠る
 3 ✕とても生まれる
 4 ◯とても痩せる(程度副詞+漸次的な変化を表す動詞)

 選択肢1と4が程度副詞に接続できますが、1は感情・感覚を表す動詞であり、漸次的な変化を表す動詞ではありません。
 したがって答えは4です。

 

問3 程度副詞が様態副詞と共起する例

 この問いは令和元年度の問題の中で最も特別です
 これまでの過去問で出題されたことがある副詞の分類は以下の3つでした。

様態副詞
情態副詞
動詞を修飾し、その動作がどのように起こったかを表すもの。擬態語、擬音語、擬声語、一部の畳語もこれに含まれる。そのうち、動きの量や人の量などを表す副詞を量副詞と分類することもある。
陳述副詞 述語の陳述に呼応して用いられるもの。また、話し手の伝達的態度や事態に対する認識、評価を表すもの。必ず、もし、たとえ、たぶん、なぜ…
程度副詞 形容詞などの状態性の語を修飾してその程度を表すもの。たいへん、とても、すごく…

 上記の分類は問題文冒頭にある「意味的」な副詞の分類です。しかし問3では「形態論的」な副詞の分類について出題しているようです。これまで9年間意味的な分類しか出題してこなかったのに、今年度は突然形態論的な分類から出題していますので、参考書などは多少変更が必要になるはずです。

 ちなみに意味的な副詞分類は児玉望の『日本語副詞の構造的多義』が参考になります。
 そして形態論的な副詞分類(構文論的視点を取り入れた包括的な副詞分類研究)は仁田義雄の『副詞的表現の諸相』に詳しく書かれています。頻度の副詞、時間関係の副詞、様態の副詞、結果の副詞、程度量の副詞に分類されると書かれています。以下には簡単にまとめておきます。

頻度の副詞 事態生起の頻度・回数を表す。しばしば、たまに、再び等…
時間関係の副詞 動きや状態の時間的側面に言及するもの。ずっと、いつも、しばらく等…
様態の副詞 動きの過程がどのような様子であるかを取り上げるもの。[ドンと]叩く、[パッと]光る、[どんどん]進む等…
結果の副詞 動きの結果がどのような様子であるかを取り上げるもの。[丸々と]太った、[二つに]分ける、[バラバラに]なった等…
程度量の副詞 「たっぷり」「たくさん」「どっさり」「ふんだんに」等の動詞に係ってその程度を限定する”程度の副詞”と、「結構」「ちょっと」「相当」等の動詞に係ってその量を限定する”量の副詞”と、「非常に」「大層」「とても」等の形容詞に係ってその属性・状態の程度を限定する”純粋程度の副詞”の3つのタイプに下位分類される。純粋程度の副詞は動詞にも共起できるが、その性質上、程度性を有する状態動詞にしか共起できない。

 文章中で述べられている定義と比べると…
 様態副詞の「事態の開始とともに発生し、終了とともに消える」とは、つまり動きの過程の様子を表しているとも言えます。言い方は違いますが言っている内容は同じです。
 程度副詞は「感情・感覚を表す動詞とも漸次的な変化を表す動詞とも結びつく」と書かれていますが、「悲しむ」「痛む」等の感情・感覚を表す動詞や「増える」「痩せる」等の漸次的な変化を表す動詞は程度性を有する動詞なので、上述した解説と整合性が取れています。

 
 1 どうか ゆっくり 進んでください。
 「どうか」は意味的な分類では陳述副詞ですが、形態論的な分類では何に分類されるか私には分かりません…。しかし、少なくも程度副詞ではないでしょう。
 「ゆっくり」は「進む」の過程がどのような様子であるかを表しているので様態の副詞です。

 2 かなり きっぱりと 断ったんです。
 この「かなり」は「きっぱりと断る」に係ってその程度を限定しているので程度の副詞です。
 「きっぱりと」は動きの過程がどのような様子であるかを表しているので様態の副詞です。

 3 けっこう すぐに 勝敗が決まるでしょう。
 「けっこう」は「すぐに決まる」に係ってその程度を限定しているので程度の副詞です。
 「すぐに」は「決まる」の時間的側面に言及しているので時間関係の副詞です。

 4 だんだん ぽかぽか してきましたね。
 「だんだん増える」は増える過程がどのような様子であるかを表しているので様態の副詞です。
 「ぽかぽか」は暖かくて気持ちいい様子(過程)を表しているので様態の副詞です。

 したがって答えは2です。

 「すぐに」は、意味的な分類では様態副詞、形態論的な分類では時間関係の副詞に分類されます。ややこしいです…。副詞自体の出題頻度は高いので、来年以降また形態論的な分類が出題される可能性があります。要注意です。

 

問4 他の品詞から転成した副詞

 1 「図る」の打ち消しに「も」が後接した「図らずも」
 「図る」には「真意を図る」のように、予測する、推し量るという意味があります。否定形「図らず」に「も」がついて「図らずも」となり、もともとの意味を引き継いで「予想していなかったさま」を表しています。

 2 「さん然」に並列の「と」が後接した「さん然と」
 「さん然」は「燦然と輝く」のように、動詞を修飾してどの動作がどのように起こったかを表す様態副詞です。また、「燦然たる光」のような言い方もできますので、(文語の)ナ形容詞にも分類できます。(この「たる」は「たり」の連体形)

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
たり たら たり たり たる たれ たれ

 様態副詞はオノマトペも含まれ、オノマトペは「キラキラ光る」「ぐっすりと寝ている」のように、間に「と」がつく場合もあります。この「と」が「燦然と輝く」の「と」と同じものです。
 選択肢にある「並列の『と』」とは、「私と彼は学生です」の「と」のことで、これは格助詞です。「さん然と」の「と」は格助詞ではありませんし、もちろん並列を表しているわけでもありません。よってこの選択肢は間違いです。

 3 「ある」の連用形に「とも」が前接した「ともあれ」
 「ある」の連用形は「あり/あっ」です。「あれ」ではありません。

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
ある あら
あろ
あり
あっ
ある ある あれ あれ

 4 「やすい」の連体形に「た」が前接した「たやすく」
 「たやすく」は「たやすい」の活用形です。

 したがって答えは1です。
 コメントでのご協力ありがとうございました!

 

問5 「急遽」

 選択肢1
 「急遽デートが決まった」や「急遽出張に行かなければならなくなった」のように、「急遽」はプラスでもマイナスでも使うことができます。

 選択肢2
 「急遽」は話し言葉でも用いることができます。

 選択肢3
 正しいです。急遽は”予定外の事態や突然の出来事にただちに対処する”ことを表しますので、突然雨が降った場合に使うことはできません。

 選択肢4
 「急遽」は漸次的ではなく、突発的、急激に事態が変化することを表します。

 したがって答えは3です。





2020年6月29日令和元年度, 日本語教育能力検定試験 解説