令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

問1 非同期型のe-learningの問題点

 同期型学習と非同期型学習、初めてこの言葉出てきました。定義もちゃんと文章中に書いてくれてるのでやさしいですねー

 同期型は「教師が行う授業をリアルタイムで遠隔地に配信する」
 非同期型は「インターネットにより動画や教材を配信する」

 同期型はリアルタイムなんで双方向のやり取りができるから緊張感も臨場感もあります。分からないことがあったら質問できますし良いですね。でもネット環境が整ってないととか、何日何時にやりますと言ってもその時間参加できない人もいるかもしれません。そういう制約はあります。
 非同期はリアルタイムじゃないので、時間があるときに動画を再生してみたいなことができて、自分のペースで勉強できます。その代わり双方向じゃないので教師にその場で質問できないし、デメリットもあります。このやり方だと自主的な学習が求められるので、そもそもモチベーションが高くない学習者にとっては長く続けられないかもしれません。 

 
 選択肢1
 上述の通り、非同期型はモチベーションが高くないと学習の継続が難しいです。リアルタイムの授業のほうが時間が決まってるので惰性でも参加しやすいですが、非同期型はやる気がないとできません。

 選択肢2
 同じ教案、教材を使えば、紙媒体でも配信された教材でも得られる知識量は同じです。どっちのほうが知識を獲得しやすいかは学習者の好みによります。

 選択肢3
 これは同期型の問題点です。
 非同期型で答えをクリックで選んでいくような簡単なテストを行う場合、クリックした瞬間に答えが分かります。分からないところがあったらいつでも戻って確認できます。これは非同期型の強みです。
 同期型はリアルタイムなので答えは教師が教えてくれるまで分かりません。また、分からないからといって巻き戻すこともできません。
 
 選択肢4
 非同期型は確かに、時間があるときいつでも自分のスマホ、パソコン、タブレットから授業を見れます。場所も問いません。
 しかし授業を見たかどうかはシステムによって把握されていることが多く、それによって出欠が判断されたりなんてこともあります。非同期型は教師が学習状況を把握しやすいです。

 したがって答えは1です。

 

問2 反転授業

 反転授業とは、学習者は教室外で予習を行い、教室での授業ではその予習で得た知識を応用して問題を解くような授業のことです。教師は全体的な導入を行わずに、困っている学習者の手助けを個別に指導する形式をとります。従来型の授業では教師が主体となって導入から応用問題までを行いますが、反転授業では教師は学習者のサポートが中心です。

 なので答えは1です。

 教師と学習者の役割が逆だから反転授業なのかな? って思ってしまったら選択肢2を選んでしまうはずですね!
 ちなみに私はそうでした。この問題腹立ちます。

 反転授業は23年度以降初めて出題された言葉なので知らなかったんです…



問3 インストラクショナル・デザイン (ID)のADDIEモデル

 ADDIEモデル
 学習者の学習意欲をより引き出せるような効率的な学習環境を設計・開発するための教授方法及びそのガイドラインであるインストラクショナル・デザインの理論のIDプロセスモデルの一つで、教授方法や教材などの設計を5つのプロセスに分け、それらを繰り返しながら改善していくというもの。「分析 (Analysis)」「設計 (Design)」「開発 (Develop)」「実施 (Implementation)」「評価 (Evaluation)」の5つのプロセスに沿って設計が進められる。

 5つのプロセスがそのまま選択肢3にあります。したがって答えは3です。

 この問題はぜひ捨ててください。覚えなくてもいいです。この用語も初めて出題されたもので来年出るかも怪しすぎます…

 

問4 著作権の侵害にならない例

 1 自分が書いたわけではないウェブ上の文章をアップするのは著作権の侵害になります。
 2 動画のURLをアップするのは著作権の侵害にはなりません。リンクを載せているだけです! もし動画をダウンロードしてアップロードしたり、使用したりしたら著作権の侵害です。
 3 日本では、著作権は作品を創作すると同時に自動的に発生します。
 4 自分の写真やイラストではないものを切り取って使うのは著作権の侵害になります。

 したがって答えは2です。

 

問5 項目応答理論 (IRT)

 項目応答理論 (Item Response Theory)
 試験の難易度に依存しないテストの点数を産出するための統計的テスト理論のことです。まぐれ当たりと認められた項目は点数の重みづけを減らし、より正確な能力を測定することができるようになります。年度の違う試験に適用することで、各年度の試験の難易度を基準にして採点するのではなく、共通した基準をもって採点可能になるのが特徴です。日本語能力試験や日本留学試験でも採用されています。

 この説明はwikiがすっごく詳しくて分かりやすいので、そちらを参考にしてください。

例えば、4択問題100問、配点が1問につき10点で構成され、600点で合格出来るテストを考える。この場合、全く問題に対する知識がない者でも、全ての選択肢を埋める事が出来れば理論上250点は正解出来てしまい、テストが50問ずつ違うジャンルで構成されている場合は片方のみ完璧に仕上げれば、後はまぐれ当たりでも理論的には合格できてしまう。また、きちんとした知識があれば50問のうち大半が正解できて然るべき問題群で12問前後当てられてしまう事もあり、正確な実力判定が難しくなる。 さらに、平均点が低い=実力不足なのか問題が難しかったのかという判定も相対的な尺度でしか確認できず(逆も同じ)、例えば1000点満点獲得した受験者は500点の受験者に比べて単純に実力が2倍あるという訳ではない。
 
 項目応答理論ではこう言った運や問題の難易度による実力判定の困難さをもたらす要素をなるべく排除し、受験者の実力を正確に測ろうとする理論と言える。具体的には下記のモデルを用い、例えば10問の問題群で知識があれば8問以上解けて然るべき問題で散発的にしか正解出来ない場合はまぐれ当たりとみなし、1問あたりの配点を10点未満にするという処置を取れる。
 - 項目応答理論 – Wikipediaより

 「違うテストを共通の基準で比較」 これがヒントになります。
 答えは4です。

 




2023年8月26日令和元年度, 日本語教育能力検定試験