平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説
問1 3母音体系
「アラビア語のような3母音体系」って言われても… と思うかもしれませんが、「舌の位置の前後・高低が最大限に離れるよう配置された組み合わせ」というヒントがあります! 最大限に離れた配置とはきっとこんな感じ。
したがって答えは1です。
アラビア語の知識がなくても、いいヒントを出してくれてます!
問2 自由変異の関係にある異音
異音とは、同じ音素に属する異なる音のことです。
例えば、日本語では「thank you」は「サンキュー」と読まれます。「th」は本来[θ]なんですが、この発音は日本語にありません。ですから最も音が近い[s]に置き換えられて「サ」になっています。つまり音素/s/に[s][θ]が含まれているということです! 同様に、日本語のラ行[ɾ]、江戸っ子口調のラ行[r]、英語「look」の「l」の[l]も本来音は違うんですが、全部ラ行として認識されます。[ɾ][r][l]が音素/r/に含まれてます。
日本語では[s]と[θ]はどっちで発音しても結局サ行と同じ意味を持ちますし、[ɾ][r][l]はどれもラ行と同じ意味になります。このような現れる条件が決まっていない異音は自由異音と呼びます。逆に現れる条件が決まっているのは条件異音です。
選択肢1
有声歯茎摩擦音[z]は語中の「ざずづぜぞ」、有声歯摩擦音[ð]は英語の[th]isの発音にあたります。本来は別の音ですが、日本語には[ð]の発音がないため、日本語で表記する場合は「ざずづぜぞ」になります。よってこれらは自由変異の関係にある異音です。
選択肢2
無声歯茎破擦音[ts]は「つ」、無声歯茎硬口蓋破擦音[tɕ]は「ち」です。
タ行子音/t/には3つの異音があります。「たてと」は[t]、「つ」は[ts]、「ち」は[tɕ]。
この3つは現れる条件が決まっている条件異音です。
選択肢3
有声歯茎鼻音[n]は「なぬねの」、有声硬口蓋鼻音[ɲ]は「に」です。
ナ行子音/n/には2つの異音があります。「なぬねの」は[n]、「に」は[ɲ]。
この2つは現れる条件が決まっている条件異音です。
選択肢4
無声声門摩擦音[h]は「はへほ」、無声硬口蓋摩擦音[ç]は「ひ」です。
ハ行子音/h/には3つの異音があります。「はへほ」は[h]、「ひ」は[ç]、「ふ」は[ɸ]。
この3つは現れる条件が決まっている条件異音です。
したがって答えは1です。
問3 韓国語のアクセント
韓国語については詳しくないので引用します。
朝鮮の標準語にはアクセントがない。もっと正確に言えば、アクセントがないのではなくて、アクセントの違いで単語の意味が変わることがない。例えば、「国」という意味の単語「나라」は、「나」を低く「라」を高く発音しようが、「나」を高く「라」を低く発音しようが、あるいは「나」も「라」も高く発音しようが、その意味が変わることはない。だから原理的に言えば、音の高低を無視して、適当に高低をつけて発音しても、何ら支障はないことになる。
- 要訣・朝鮮語 ― イントネーションより
上の記述は選択肢3と同じことを言ってます。韓国語は無アクセント言語なんですね!
したがって答えは3です。
問4 各国語の形容詞に関する記述
要検証、後回し!
答えだけ示しておきます。
答えは1です。
問5 日本語の特徴
1 中国語には敬称はありますが、日本語のような敬語の体系は存在しません。
2 日本語は文を作るときに主語-目的語-動詞の語順をとるSOV型です。wikiによると、SOV型の言語は世界で最も多いみたいです。
3 「学生がいる」の「学生」は単数を表す形式ですが、実際は複数の学生を指し示している場合もあります。日本語では、単数を表す形式で複数を表すことができます。
4 日本語は標準語も方言も高低アクセントです。
したがって答えは3です。