平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説
(11)「極限」を表す取り立て助詞
取り立て助詞とは、文面にはない情報を暗示して意味を加える助詞のことです。例えば、「私も日本人です。」では、まず「私は日本人である」ことを明示しつつ、「も」によって「自分以外にも日本人がいる」ことを暗示しています。この「も」が取り立て助詞です。
取り立て助詞はいろんな種類があります。
比較 | は、も |
---|---|
特立(例示) | こそ |
極限 | さえ、すら、だに、でも、だって、まで、も |
限定 | だけ、のみ、ばかり、しか、は、も、など |
例示 | など、なんか、なんぞ、なんて、なぞ |
程度 | くらい(ぐらい)、ほど、ばかり、だ |
選択肢1
程度「くらい」:野球はできないが、キャッチボールくらいはできる。
累加「など」:チョコなどの甘い物が好き。
極限「まで」:部屋の隅まで掃除する。
選択肢2
累加「なんか」:チョコなんかの甘いものが好き。
程度「くらい」:野球はできないが、キャッチボールくらいはできる。
限定「ばかり」:チョコばかり食べる。
選択肢3
特立「こそ」:彼こそ英雄だ。
極限「さえ」:子どもさえもできる。
限定「ばかり」:チョコばかり食べる。
選択肢4
極限「さえ」:子供さえもできる。
極限「でも」:子供でもできる。
極限「まで」:部屋の隅まで掃除する。
したがって答えは4です。
(12)格助詞を伴う取り立て助詞で、基本的に明示されない格助詞
ここには、4つの格助詞「が」「で」「から」「を」が出てきてます。
それぞれ取り立て助詞を後接して例文作れるかどうか見てみます。
✕彼がさえ分かってる。
〇子どもでさえできる。
〇子どもからさえ非難された。
✕彼をさえ逃がした。
どうも「で」と「から」だけしか例文を作れないみたいで、「が」と「を」は作れませんでした。
だから答えは4です。
こうやって例文作って検証するのはこの試験の王道ですけど、実は強い格、弱い格の知識があれば一瞬です。
強い格 | ガ格、ヲ格 | 「私(が)食べる」「水(を)飲む」のように省略しやすい。「私がの~」「私をの~」みたいに「の」には接続できない。「私がさえ~」「私をさえ~」みたいに取り立て助詞で取り立てられない。 |
---|---|---|
中間的な格 | ニ格 | 強い格と弱い格の中間的な性質を持つ。省略できることもあるし、できないこともある。 |
弱い格 | それ以外の格 | 「学校(から)家(まで)歩く」みたいに省略できない。「私からの~」「学校での~」みたいに「の」に接続できる。「私でさえ~」「彼とさえ~」みたいに取り立て助詞で取り立てられる。 |
強い格は取り立て助詞で取り立てることはできません。一方、弱い格は格助詞「の」や取り立て助詞と接続することができます。
ガ格とヲ格は強い格。覚えておいてください!
(13)取り立て助詞の後に格助詞が現れる場合
通常は「格助詞+取り立て助詞」の順番ですが、逆になることもあるようです。
格助詞+取り立て助詞(通常の順番) | 取り立て助詞+格助詞(逆順) | |
---|---|---|
1 | ◯家でしか勉強しない。 | ✕家しかで勉強しない。 |
2 | ◯家でも勉強する。 | ✕家もで勉強する。 |
3 | ◯家でだけ勉強する。 | ◯家だけで勉強する。 |
4 | ◯家でなんて勉強しない。 | ✕家なんてで勉強しない。 |
取り立て助詞「だけ」に格助詞がつく場合は、前後どちらでも大丈夫でした。
したがって答えは3です。
(14)格助詞としても取り立て助詞としても働く場合
「まで」は格助詞のときもあるし、取り立て助詞のときもあるし。その見極めをする問題です。
格助詞「まで」の用法は一つしかありません。それは範囲の終点です。
家から学校まで2時間かかる。
明日まで半額。
そして何か文面にない情報を暗示してるのは取り立て助詞です。
1 文面にない情報を暗示しています。睡眠時間以外の時間も活用していることを表しています。
2 文面にない情報を暗示しています。バイト代以外も取り上げられたことを表しています。
3 文面にない情報を暗示しています。病気ではないうちは頑張るという意思を表しています。
4 これが範囲の終点を表す格助詞の「まで」。
したがって答えは4です。
(15)連体修飾節内の要素
「アイスが食べたくなる季節」のうち、「アイスが食べたくなる」が連体修飾節(名詞修飾節)。名詞「季節」を修飾しているのが「アイスが食べたくなる」です。ちなみに連体修飾節内の主語は「アイスの食べたくなる季節」みたいに「の」に言い換えることができます。
しかも! 文章中にあるように、対比を表す場合はこれが「は」に言い換えられます。例えば「女性は知らない男性の秘密」みたいな感じ。
選択肢1
「部屋」を修飾してるのが「関係者以外は入れない」です。この「は」は「が」や「の」に言い換えられます。だからこれが連体修飾節の主語。
関係者以外が入れない部屋
関係者以外の入れない部屋(「が」の代わり)
関係者以外は入れない部屋(対比)
選択肢2
「ぬいぐるみ」を修飾しているのは「おじいちゃんにもらった」です。「息子は」は連体修飾節の中に入ってませんので、この選択肢は間違い。
選択肢3
この文に連体修飾節はありません。
選択肢4
「店」を修飾しているのは「料理が安くておいしいお得な」です。「ここは」「は」は連体修飾節外の要素なので、この選択肢は間違い。
したがって答えは1です。