平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

(1)弁別機能と統語機能

 「橋」と「箸」に見られるように、アクセントが異なることで意味を弁別するのがアクセントの弁別機能です。また、「庭には二羽にわとりがいる」に見られるように、アクセントには1語をまとめ、言葉と言葉の切れ目を認識させる統語機能があります。

 したがって答えは2です。

 

(2)超分節的特徴

 超分節的特徴(韻律的特徴)は子音や母音などの音素や文に付加される音声特徴の総称です。アクセント・イントネーション・リズム・速さ・ポーズ・プロミネンス・強調などを指します。

 
 1 フォルマント
 言葉を発している人の音声のスペクトルを観察すると分かる、時間的に移動している複数のピークのこと。

 2 イントネーション(抑揚)
 話すときの声の上がり下がりのこと。感情のこもった「そんなわけないじゃん!」や「本当に!?」などは文頭イントネーションが変わったり、疑問文では文末が上昇調になったりする。超分節的特徴の一つです。

 3 リズム
 強勢や音節、モーラなどが時間的に等間隔で繰り返されることによって生じる律動のことです。日本語は音節リズムに分類されます(正確に言うと音節リズムの中のモーラリズム言語)。超分節的特徴の一つです。

 4 ポーズ
 発話中に出現する、実際には発話されない一呼吸置かれた時間のことです。分かりやすく伝えたり、相手に考えさせる時間を与えたりする機能を持ちます。超分節的特徴の一つです。

 したがって答えは1です。



(3)強弱アクセント

 言語のアクセントは高低アクセントと強弱アクセントに大別されます。
 高低アクセント(ピッチアクセント)は音の相対的な高低で定められたアクセントのことで、日本語がこれです。「橋(はし)」は「は」が低くて「し」が高いように、この高低で意味が弁別されます。ちなみに中国語は高低アクセントの中の声調アクセント言語です。中国語は高低ではなく4種類の声調で意味を弁別します。

 強弱アクセント(ストレスアクセント)は音の相対的な強弱で定められたものです。英語は高低ではなく、語の一部を強調するかしないかで意味が弁別されます。

 各言語の分類を見てみましょう。

 1 タイ語 高低アクセント
 2 中国語 高低アクセント(声調アクセント)
 3 ベトナム語 高低アクセント
 4 ポルトガル語 強弱アクセント

 したがって答えは4です。

 

(4)標準語のアクセント

 選択肢1
 ざっと思い浮かんだ漢語名詞のアクセントを見てみると、「掃除」のように語末から3拍目にアクセント核があるものもありますが、「説明」「建設」「開花」など平板式もかなり多いです。語末から3拍目で下がりやすいのは外来語です。思いつくのでいうと「ストレス」「ユーチューブ」「キーボード」などなど。でも「アクセント」「アドバイス」みたいにそうではないものもあり、これらは元々のアクセントをそのまま持ってきたものです。

 選択肢2
 正しいです!
 これについてはある程度規則性はあるものの複雑なんでここには書きません。以下のページを参考にしてください。
 参考:東外大言語モジュール|日本語|発音|実践編| 2 円滑なコミュニケーションのために 2.7.1 アクセント(複合名詞)

 選択肢3
 「蚊(が)」は平板型ですが、「絵(は)」は頭高型です。1拍名詞のアクセントは2種類あります。

 選択肢4
 名詞なら助詞「が」を付けてアクセント型を見るので平板、頭高、中高、尾高の4種類ありますが、動詞は助詞「が」を付けられないので、3拍動詞なら平板(浮かぶ)、中高型(放つ)、頭高型(帰る)の3種類です。

 したがって答えは2です。

 

(5)日本語の方言

 無アクセントは、東北・関東・九州などに分布しています。
 参考:無アクセント – Wikipedia

 したがって答えは4です。

 




2022年9月23日平成30年度, 日本語教育能力検定試験