平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説
(13)複合動詞
複合動詞は後部要素が動詞なので「複合動詞」って言います。もし後部要素が名詞なら「複合名詞」、形容詞なら「複合形容詞」です。そして複合動詞の前部要素に着目したとき、そこにはいろんな名詞が見られるそうです。まあ… そうですよね。
名詞+動詞 | 口ずさむ/巣立つ/恋愛する |
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動詞+動詞 | 逃げ回る/飛び越す |
形容詞+動詞 | 若返る |
「名詞+動詞」は死ぬほどありそう。
したがって答えは2です。
(14)複合動詞の前項と後項
選択肢1
差し戻す 前項だけ実質的な意味を失っています。
取りかかる 前項も後項も実質的な意味を失っています。
選択肢2
切り開く 前項も後項も実質的な意味を残しています。
出回る 後項だけ実質的な意味を失っています。
選択肢3
読み切る 後項だけ実質的な意味を失っています。
食べ残す 前項も後項も実質的な意味を残しています。
選択肢4
分け与える 前項も後項も実質的な意味を残しています。
送り届ける 前項も後項も実質的な意味を残しています。
したがって答えは3です。
(15)造語法
造語法とは新しい語を作り出す方法のことです。いろいろな種類に分けられます。
合成法 | 複数の形態素を結合する方法。ゴミ箱、大教室、スマホケース |
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転成 | 既存の語の品詞を変えて新しい語を作る方法。暮らし、物語、話 |
省略/略語/縮約 | 既存の語を省略・縮約して新しい語を作る方法。就活、日ハム、ハガレン |
借用 | 他言語から取り入れて新しい語とする方法。外来語。テレビ、メモ、マスク |
混淆(混交) | 複数の既存の語の一部を取って1語とする方法。「やぶる」と「さく」から「やぶく」を作るようなこと。 |
逆成 | 既存の語を派生語と見なし、その語末を派生接辞を捉え、それを切り離して新しい語を作り出す方法。「もくろみ」から「もくろむ」を作るのが逆成の例だそうですが、日本語ではほとんど例がありません。 |
文字・表記 | 百から一を引くと99になることから99歳を白寿、八十八を組み合わせると米になることから88歳を米寿とするなど、既存の漢字を分解して言葉を作る方法。また、ローマ字表記の頭文字を取ってTシャツやYシャツなど新しい言葉を作る方法。 |
下線部Bは動詞「乗り入れる」が名詞「乗り入れ」になってます。動詞の連用形は、動詞によっては名詞化する機能があります。これは上の表でいう転成です!
したがって答えは3です。
(16)前項、後項ともに動詞の複合動詞
(14)の8つの複合動詞を参考に解いていきます。一つ例外を見つけると選択肢を絞れます。
選択肢1
「取りかかる」は「~に取りかかる」のようにニ格をとりますが、前項「取る」は「~を取る」のようにヲ格をとります。同じとは限りません。
選択肢2
「取りかかる」の前項「取る」は他動詞、後項「かかる」は自動詞です。間違い。
選択肢3
「恋愛する」「調査する」などの漢語を用いたサ変動詞では、前項に漢語動詞が来ます。
選択肢4
「取る」は「る」の前にアクセント核があり、「かかる」は「る」の前にアクセント核があります。これらが合わさった「取りかかる」は「る」の前にアクセント核があります。一語になったことでアクセントも変わっています。
元々のアクセントを保持するとは限りません。
したがって答えは4です。