平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説

 平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B
 B【アスペクトに関わる諸形式】

 アスペクト(相)とは、ある動作や出来事がどの局面にあるかを表す文法形式です。
 問題文でも触れられているようにアスペクトに関する表現は多くあります。例えばタ形や補助動詞、複合動詞を用いたり、接尾辞や形式名詞を用いる形式もあります。

 (1) 食べるところだ。(直前)
 (2) 食べ始めた。(開始)
 (3) 食べている。(継続)
 (4) 食事中だ。(継続)
 (5) 食べているところだ。(継続・進展)
 (6) 食べたばかりだ。(直後)
 (7) 食べ終わった。(終結)

 

(6)「テイル形」に関する記述

 「テイル形」の性質に関する問題です。

 1 自他の対立
 「開けている」と「開いている」の違いだと思われます。しかし、自他の対立は「ている」ではなく、接続されている動詞の自他によるものです。「開ける」は他動詞、「開く」は自動詞。したがって「テイル形」自体に自他の対立はありません。

 2 有生・無生の対立
 日本語の存在表現は、主語が無生物の場合は「ある」、有生物の場合は「いる」が用いられます。「テイル形」にはこのような対立がありません。

 3 完了を表す
 「テイル形」の用法は辞書によるといくつかあります。
  ①動作の持続 : 雨が降っている。/子供が走っている。
  ②動作の結果 : 彼が身に付けている腕時計は高い。
  ③動作の反復 : 週1回ジムに通っている。
  ④経   歴 : 沖縄には3回訪れている。
  ⑤動作の完了 : 着いたときにはもう始まっていた。
  ⑥単純な状態 : 山がそびえている。

 「テイル形」には動作の完了の用法があります。

 ④所有を表す
 上記から、「テイル形」には所有を表す用法はありません。

 したがって答えは3です。

 

(7)アスペクトを表す用法の「ばかり」

 4の「ばかり」は直後のアスペクトを表す用法です。
 1、2、3の「ばかり」はアスペクトとは関係のない、取り立て助詞です。
 したがって答えは4です。

 

(8)終結のアスペクト

 1 「~ておく」
 あらかじめ物事を済ませることを表す補助動詞です。終結のアスペクトとは関係がありません。
 参考:【N4文法】~ておく/とく

 2 「~きる」
 動作の完了を表す複合動詞です。「走りきる」は「走る」という動作が終わっているので、終結を表すアスペクトです。
 参考:【N3文法】~きる/きれる/きれない

 3 「~てくる」
 ある地点からこちらへ移動することを表す補助動詞です。アスペクトとは関係がありません。

 4 「~つつある」
 「~つつある」は、ある変化が完成(終了)する方向に向かっていることを表します。継続や進展のアスペクトです。

 したがって答えは2です。

 

(9)動き動詞

 アスペクトは動き動詞、個々のアスペクト形式、副詞類と、文全体で表されるものです。そのうち動き動詞とはどのようなものかを問う問題です。

 知覚動詞(感覚動詞)とは、目や耳、鼻、舌、肌などの感覚器官に関係する動詞のこと。見る、聞く、感じる、匂う、気づくなど。

 心理動詞とは、心の中に感じたり思ったりする動詞のこと。内で完結して対象に作用しない。 思う、怒る、愛するなど。

 動作動詞とは、動作を表す動詞のこと。歩く、飲む、話す、壊すなど。

 状態動詞とは、状態を表す動詞のこと。優れる、尖る、濁る、似るなど。

 変化動詞とは、主体がどのような変化をするかを表す動詞のこと。変わる、死ぬ、消えるなど。

 二項動詞とは、「戦う」「飲む」「結婚する」のように2種類の格助詞を必要とする動詞のこと。
 私は彼女と結婚する。/AとBが戦う。/私は水を飲む。

 三項動詞とは、「教える」「借りる」「貸す」「送る」「置く」のように3種類の格助詞を必要とする動詞のこと。
 私は彼に勉強を教える。/私は友達から本を借りる。

 複合動詞は、後ろ側の動詞の担う意味・機能によって、語彙的複合動詞と統語的複合動詞の2つに分けられます。
 語彙的複合動詞とは、後ろ側の動詞が結合後も本来の語彙的な意味を担っているものです。

 (8) 逃げ回る
 (9) 立ちくらむ
 (10) 書き記す

 統語的複合動詞は、後ろ側の動詞が文法的な機能を担うようになっているものです。

 (11) 食べ切る
 (12) 話し込む
 (13) 溶け出す

 1 知覚動詞や心理動詞は動き動詞ではない。
 2 動き動詞は動作動詞と変化動詞の2つに分けられます。
 3 項が多いかどうかはアスペクトに関係のない要素。
 4 語彙的複合動詞と統語的複合動詞は動き動詞とは関係がない。

 したがって答えは2です。
 

(10)副詞が述語のアスペクトの解釈を変更している例

 副詞が述語のアスペクトに影響しているかどうかを見ます。

 1 粉々に
 副詞「粉々に」は「割れている」を修飾していますが、どのように割れているかを説明しているだけで、アスペクトの解釈を変更しているわけではありません。

 2 ゆっくり
 副詞「ゆっくり」は「下りている」を修飾しています。もし「ゆっくり」がなければ、「幕が下りている」は幕が現在進行形で下りているか、もしくは既に下りているかの2種類の解釈ができます。しかし「ゆっくり」を加えることによって、幕が下りている最中という意味になります。これはつまり、副詞がアスペクトの解釈を変更・限定しているということです。

 3 次々と
 副詞「次々と」は「確定している」を修飾しています。これも同様に「次々と」がなければ2種類の解釈ができます。「次々と」があることによって、物事の継続や進展のアスペクトを表しています。

 4 毎日
 「毎日」がなければ、今現在飲んでいる最中なのか、習慣なのかはっきりしません。「毎日」が加えられることによってアスペクトの解釈が変わっています。

 したがって答えは1です。