認知スタイルとストラテジーについて

目次

認知スタイル (cognitive styles)

情報の知覚、符号化、体制化、記憶などに対して個人が一貫して示す方法のこと。教師は学習者の認知スタイルによって教え方を変えることで学習効率を高めることができる。

場依存/場独立 (Field-Dependence/Independence)

★☆☆ 場依存型 (Field Dependence)

認知スタイルの分類の一つで、何かを行う際に視覚的な場に依存するタイプのこと。このタイプの学習者は状況から意味を捉えようとするため、会話の中で経験を重ねることでより自然な言語の獲得が可能となる。全体を直感的に理解する能力に長け、年少者に比較的多い。

★☆☆ 場独立型 (Field Independence)

認知スタイルの分類の一つで、視覚的な場に依存しないタイプのこと。このタイプの学習者は分析能力や論理的思考力が高いため、状況に依存することなく言語習得することができる。会話を行い経験を重ねながら身につけるよりも、単語や文法を直接暗記するような学習を好む傾向がある。年長者に比較的多い。

熟慮型/衝動型 (Reflectivity and Impulsivity)

☆☆☆ 熟慮型 (Reflectivity)

認知スタイルの分類の一つで、反応は思考の後に行われるタイプのこと。このタイプの学習者は一つひとつ間違えないように注意深く考え、誤りがないと確信できるまでは反応しない。誤用は少なくなるが、時間がかかる傾向がある。いわゆる情意フィルターが厚く発話を躊躇することが多い。会話能力の伸びは衝動型 (Impulsive)よりも遅いため、教師は学習者にリスクテイキングを促すような指導が求められる。

☆☆☆ 衝動型 (Impulsivity)

認知スタイルの分類の一つで、思考と反応が同時に行われるタイプのこと。このタイプの学習者は誤用をあまり気にせずどんどん反応を示す。熟慮型 (Reflective)に比べ文法的な規則などは正確さを欠くが、会話能力の伸びは非常に速い傾向がある。

あいまいさへの寛容度 (Tolerance-Intolerance of Ambiguity)

☆☆☆ あいまいさへの寛容 (Tolerance of Ambiguity)

認知スタイルの分類の一つで、学習過程において自身が理解できない状態に対する耐性が高いタイプのこと。このタイプの学習者は聴解問題などで分からない単語が出たとしても、その理解できない状態に耐えることができ、大枠を理解しようとする。耐性がありすぎると優柔不断になり、逆に必要な情報を知識として取り込みにくくなる。一般的には、年齢が上がるにつれてあいまいさへの寛容度は高くなる傾向がある。

☆☆☆ あいまいさへの非寛容 (Intolerance of Ambiguity)

認知スタイルの分類の一つで、学習過程において自身が理解できない状態に対して耐性が低いタイプのこと。このタイプの学習者は聴解問題などで分からない単語が出た場合、その理解できない状態に耐えることができず苦しむことになる。曖昧さを一つひとつ解き明かしていこうとするため、すぐに教師へ答えを求めたり、あるいは投げ出してしまったりすることがある。言語習得を促進させるためには多少のあいまいさを許容し、インプットを増やすことを優先させるような指導が求められる。ただし、全く理解できないことを早めに諦めることで他の可能性を高めることもできるため、耐性の高さに優劣はない。

視覚型/聴覚型 (Visual and Auditory Styles)

☆☆☆ 視覚型 (Visual Styles)

認知スタイルの分類の一つで、視覚的なインプットを好むタイプのこと。このタイプの学習者は読解やグラフ、絵などによる情報を好む傾向がある。

☆☆☆ 聴覚型 (Auditory Styles)

認知スタイルの分類の一つで、聴覚的なインプットを好むタイプのこと。このタイプの学習者は聴解や聴講による情報を好む傾向がある。

分析型/総合型

☆☆☆ 分析型

認知スタイルの分類の一つで、言語の理解を文法的に分析したりすることを好むタイプのこと。

☆☆☆ 総合型

認知スタイルの分類の一つで、言語の理解をその場の状況や様子から推測し、全体からポイントをつかむことを得意とするタイプのこと。

継次処理型/同時処理型

★☆☆ 継次処理型/順序型

認知スタイルの分類の一つで、情報を処理するときに一つひとつ順序立てて処理していくタイプのこと。部分から全体像を把握していくのを得意とする。

★☆☆ 同時処理型/全体型

認知スタイルの分類の一つで、全体を一度に見渡せる形で情報を処理するタイプのこと。全体から部分を取り出していくのを得意とする。

有意味学習/機械的学習

☆☆☆ 有意味学習 (meaningful learning)

認知スタイルの分類の一つで、既有知識と関連付けて学習するタイプのこと。新しい知識を既有知識に関連付けて覚えるため忘れにくく、機械的学習 (rote learning)よりも記憶の保持に優れている。ゆえに既有知識が多い年長者にこのタイプが多い。

☆☆☆ 機械的学習 (rote learning)

認知スタイルの分類の一つで、機械的な反復を行って学習するタイプのこと。新しい知識を何とも復唱したり、書いたりして覚えるため、個別にそのまま知識として取り込むしかなく記憶の干渉が起こりやすい。そのため、有意味学習 (meaningful learning)よりも記憶の保持がしにくくなる。一般に年少者にこのタイプが多い。

 
 

言語学習ストラテジー/学習ストラテジー (learning strategy)

学習する際に用いるストラテジーのことで、記憶、認知、補償、メタ認知、情意、社会的の6つに分類される。目標言語に直接かかわる記憶ストラテジー、認知ストラテジー、補償ストラテジーの3つを直接ストラテジー、言語学習を間接的に支えるメタ認知ストラテジー、情意ストラテジー、社会的ストラテジーの3つを間接ストラテジーと呼ぶ。

分類 種類 説明
直接 記憶 記憶するために用いられるストラテジーのこと。知識と知識の知的連鎖を作ったり、語呂合わせなどで音やイメージを結びつけたり、繰り返し復習したり、単語カードを使ったりなどが挙げられる。
認知 理解を深めるために用いられるストラテジーのこと。メモしたり、線引きしたりなどが挙げられる。
補償 足りない知識を補うために用いるストラテジーのこと。分からない言葉を文脈から推測したりするなどが挙げられる。
間接 メタ認知 言語学習を間接的に支える間接ストラテジーのうち、学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジーのこと。学習のスケジューリングをしたり、目標を決めたりすることなどが挙げられる。
情意 学習者が自らの感情や態度や動機をコントロールするために用いるストラテジーのこと。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりすることなどが挙げられる。
社会的 学習に他者が関わるストラテジーのこと。質問をしたり、他の人と協力することなどが挙げられる。

★★★ 直接ストラテジー

学習する際に用いる言語学習ストラテジー(学習ストラテジー)のうち、目標言語に直接かかわるストラテジーのこと。記憶ストラテジー、認知ストラテジー、補償ストラテジーの3つに分けられる。

★★★ 記憶ストラテジー

目標言語に直接かかわる直接ストラテジーのうち、記憶するために用いられるストラテジーのこと。知識と知識の知的連鎖を作ったり、語呂合わせなどで音やイメージを結びつけたり、繰り返し復習したり、単語カードを使ったりなどが挙げられる。

★★★ 認知ストラテジー

目標言語に直接かかわる直接ストラテジーのうち、理解を深めるために用いられるストラテジーのこと。メモしたり、線引きしたりなどが挙げられる。

★★★ 補償ストラテジー

目標言語に直接かかわる直接ストラテジーのうち、足りない知識を補うために用いるストラテジーのこと。分からない言葉を文脈から推測したりするなどが挙げられる。

★★★ 間接ストラテジー

学習する際に用いる言語学習ストラテジー(学習ストラテジー)のうち、言語学習を間接的に支えるストラテジーのこと。メタ認知ストラテジー、情意ストラテジー、社会的ストラテジーの3つに分けられる。

★★★ メタ認知ストラテジー (metacognitive strategy)

言語学習を間接的に支える間接ストラテジーのうち、学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジーのこと。学習のスケジューリングをしたり、目標を決めたりすることなどが挙げられる。

★★★ 情意ストラテジー

目標言語に直接かかわる直接ストラテジーのうち、学習者が自らの感情や態度や動機をコントロールするために用いるストラテジーのこと。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりすることなどが挙げられる。

★★★ 社会的ストラテジー

目標言語に直接かかわる直接ストラテジーのうち、学習に他者が関わるストラテジーのこと。質問をしたり、他の人と協力することなどが挙げられる。

 
 

コミュニケーション・ストラテジー (communication strategy)

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるストラテジーのこと。回避、言い換え、意識的転移、助言要請(援助要請)、物まね(ジェスチャー)、時間稼ぎの6つに分けられる。

種類 説明
回避 語彙力や文法力が原因で表現できない際に他の話題を選んだり、中断すること。
言い換え 知らない語を、それに似た別の語で表現したり、新しく語を作ったりして説明すること。
意識的転移 母語や他の言語に依存して説明すること。
助言要請 辞書を使ったり、分からない言葉をネイティブに質問して教えてもらうこと。
物まね 身振り手振りなどの非言語手段で伝えること。
時間稼ぎ ポーズを挟んで考える時間を稼ぐこと。

★☆☆ 回避

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、語彙力や文法力が原因で表現できない際に他の話題を選んだり、中断すること。

★☆☆ 言い換え

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、知らない語を、それに似た別の語で表現したり、新しく語を作ったりして説明すること。

★☆☆ 意識的転移

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、母語や他の言語に依存して説明すること。

★☆☆ 助言要請/援助要求

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、辞書を使ったり、分からない言葉をネイティブに質問して教えてもらうこと。

★☆☆ 物まね/ジェスチャー

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、身振り手振りなどの非言語手段で伝えること。

★☆☆ 時間稼ぎ

自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるコミュニケーション・ストラテジーのうち、ポーズを挟んで考える時間を稼ぐこと。





日本語教育能力検定試験 解説, 用語集