平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

問1 習得順序研究と発達順序研究

 習得順序研究複数の文法項目がどの順序で習得されるかを研究し、発達順序研究ある文法項目が完全習得に至るまでの順序を研究します。

 1 習得順序研究は学習者の産出に、発達順序研究は学習者の理解に着目します。
 2 習得順序研究も発達順序研究も縦断的に研究されます。
 3 習得順序研究は正用率を、発達順序研究は誤用率を基準に順序を決めます。
 4 正しいです。

 したがって答えは4です。

 

問2

 1 U字型発達(U-shaped development)
 言語習得はU字型の曲線を描きます。一度産出できるようになってから誤用産出の段階に戻り、再び正用を産出できるようになります。

 2 定着化(stabilization)
 定着化とは、間違いのない言語使用ができるようになることを指します。再び誤用産出の段階に戻っているのは定着していないと言えます。

 3 可変性(variability)
 セリンカー(Selinker)によって唱えられた概念に中間言語があります。第二言語学習過程において能動的に自分なりのルールを作り、そのルールで運用しているとしています。母語の影響を受けながらも、次第に目標言語に近づいていくものとし、この発展途上にある言語体系のことを中間言語と命名しました。この中間言語は徐々に目標言語に近づいていく性質があり、この性質を可変性と呼びます。

 4 逆行(backsliding)
 逆行とは、第二言語習得過程において、一度修正された誤用が、緊張や不安などの原因によって再び現れることです。

 したがって答えは2です。

 

問3 転移

 母語の干渉(言語転移)とは、学習言語における母語の影響のことです。それらの影響のうち、学習を促進させるものを正の転移、妨げとなるものを負の転移と呼びます。

 1 中国語にも漢字があることから、中国語母語話者は漢字語彙の意味を理解しやすいです。
 2 韓国語にも助詞があることから、韓国語母語話者は格助詞の意味を理解しやすいです。
 3 中国語と韓国語では気音の有無(有気音と無気音)によって意味が区別されますが、日本語では声帯振動の有無(有声音と無声音)によって意味が区別されます。そのため中国語・韓国語母語話者は有声音と無声音を区別しにくいです。
 4 正しいです。

 したがって答えは4です。

 

問4 有標性

 有標性差異仮説の記述です。エックマンにより提唱された仮説で、母語と第二言語との間に言語的な特殊な違いがある(有標である)場合は習得困難となり、単純で一般的なものである(無標である)場合は習得しやすいとされています。

 1 単数形は無標、複数形は有標
 2 否定文は有標、肯定文は無標
 3 規則動詞は無標、不規則動詞は有標
 4 主語の関係節化は無標、目的語の関係節化は有標

 したがって答えは2です。

 

問5 ディクトグロス

 ディクトグロスとは、4技能を組み合わせて個人学習とピア・ラーニングが行える統合的な学習法のことです。まず文法構造が多少複雑な短めのまとまった文章を数回読み、学習者はそのキーワードを聞き取ってメモし、そのメモをもとに各自元の文章の復元を試みます。次にペアやグループで復元していき、文章を完成させていきます。

 したがって答えは1です。