平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

問1 伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス)

 コミュニケーション能力に関して、ハイムズは、コミュニケーションには正しい言語形式を使用するだけではなく、場面や状況に応じた使い方をすることが必要だと提唱しました。これを伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス)と言います。
 また、カナルは、伝達能力は文法能力、社会言語能力、方略能力、談話能力から成り立っていると主張しました。

文法能力 語、文法、音声、表記などを正確に使用できる能力。
社会言語能力
(社会言語学的能力)
場面や状況に応じて適切な表現を使用できる能力。
方略能力
(ストラテジー能力)
コミュニケーションを円滑に行うための能力。相手の言ったことが分からなかったとき、自分の言ったことがうまく伝わらなかったときの対応の仕方のことで、ジェスチャー、言い換えなどがあてはまります。
談話能力 言語を理解し、構成する能力。会話の始め方、その順序、終わり方などのこと。

 1 方略能力の欠如
 2 談話能力の欠如
 3 社会言語能力の欠如
 4 方略能力の欠如

 したがって答えは2です。

 

問2 インプットとインテイク

 インプットとは、学習の過程において注意が向けられた感覚情報のことです。さらにそのインプットのうち意味理解がなされたものインテイクと言います。インテイクは中間言語に取り入れられ、中間言語の再構築を促します。

 選択肢3に「意味を理解する」とあります。これがインテイクになる条件です。
 したがって答えは3です。

 

問3 インターアクション仮説

 インターアクション仮説とは、他者とのやりとり(インターアクション)の中で意味交渉し、インプットを理解可能なものに変えることが言語習得を促進するとする仮説です。

 意味交渉とは、コミュニケーションの中で相手の正しく理解できているか、相手が自分の話を正しく理解できるかどうかを確認することです。

 したがって答えは4です。

 

問4 意味交渉の種類

 インターアクション仮説とは、ロング(Long)が提唱した第二言語習得に関する仮説です。他者との言語を使ったやり取り(インターアクション)をお互いに行い意味交渉することで言語習得が促進されるとする仮説です。
 インターアクション仮説での意味交渉は3種類あります。

明確化要求 相手の発話が曖昧で理解できないときに、発言を明確にするよう要求すること。
確認チェック 相手の発話を自分が正しく理解しているかどうか確認すること。
理解チェック 自分の発話を相手が正しく理解しているかどうか確認すること。

 1 明確化要求
 2 明確化要求
 3 意味交渉にあたりません
 4 確認チェック

 したがって答えは3です。

 

問5 訂正フィードバック

 その文が文法的に正しいと示す情報のこと肯定証拠といい、親が子どもに与えるインプットは肯定証拠しかないと考えられています。また、その文が文法的に誤りであることを示す情報のこと否定証拠といいます。子どもは訂正されることなく肯定証拠だけを与えられて正しい文法を獲得するのか、それとも暗示的フィードバック(リキャスト)によって否定証拠を与えられて獲得するのかは今なお分かっていません。

 1 母語習得の際に否定証拠は役割を果たさないと言い切ることはできません。
 2 他者からの訂正フィードバックを受けることで、自分一人の学習だけでは得られないものを得ることができます。
 3 訂正フィードバックによって否定証拠を提示しますが、提示しなかった部分は肯定証拠であると分かります。
 4 中間言語の再構築は、否定証拠を与えられることによって起こりますが、母語話者からなどの肯定証拠を与えられることでも行われます。

 したがって答えは2です。