平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 ワーキングメモリ

 ワーキングメモリとは、「記憶には短期記憶と長期記憶があるという考え方」の二重貯蔵モデルで示された短期記憶には、ある情報をとどめつつも並行して長期記憶にアクセスしたり、別の情報を加えたりする情報処理の役割が備わっているという考え方のこと、またはその情報処理を行う作業領域のことです。作業記憶や作動記憶とも呼ばれます。現在では主流となっている考え方です。

 1 短期記憶は15秒~30秒ほど保持すると言われています。
 2 半永久的に記憶を保持するのは長期記憶です。
 3 音楽や運動、文法処理などのスキルとは関係ありません。
 4 ワーキングメモリは短期的な情報の保持と情報処理に用いられます。

 したがって答えは4です。

 

問2 橋渡し推論

 推論とは、読解において文章中に明示されていない情報を予想することです。橋渡し推論と精緻化推論に分けられます。

 橋渡し推論とは、直接表現されていないことを、文脈や既有知識によって理解することです。

向こうで一輪車を練習してた子供が大きい声で泣いていた。私は近づいて、「大丈夫?」と声をかけた。

 このような文章の中で、「子供は一輪車から落ちて怪我をした」という推測が橋渡し推論にあたります。橋渡し推論は読解中に常に行われており、正しく推論できなければ理解に大きな支障が生じます。

 精緻化推論とは、文章から読み取った事柄をもとに具体的なイメージを膨らませることです。主人公の顔、髪型、表情、性格、様子を想像したりするのがこれにあたります。想像したイメージは人によって異なります。橋渡し推論とは異なり、精緻化推論ができなくても理解には影響しません。

 1 橋渡し推論です。
 2 レストランのある場所について具体的なイメージを膨らませていますので精緻化推論です。
 3 「想像する」ですので精緻化推論です。
 4 髪型、服装、声を想像するのは精緻化推論です。

 したがって答えは1です。

 

問3 読みの過程で行われるモニタリング

 モニタリングとは、それが正しいかどうかを自らの知識や理解に照らし合わせてチェックしたり、修正したりすることです。これが正しく行われるかどうかによって文章の理解度に影響します。

 1 母語との比較は文章理解に役立つかもしれませんが、チェック・修正していないので間違いです。
 2 モニタリングについての記述です。
 3 自分で確認していませんので間違いです。
 4 自分で確認していませんので間違いです。

 したがって答えは2です。

  

問4 形式スキーマ

 その話題に関して既に持っている知識をスキーマ(既有知識)と言います。読解の際に用いるスキーマは形式スキーマと内容スキーマに分けられます。
 形式スキーマとは、文法などの言語形式に関する知識のことです。
 内容スキーマとは、読み手自身の経験や知識などから構成された社会的・文化的な内容の背景知識のことです。
 読み手はこの2つのスキーマを用いて読み進めていきます。

 1 談話展開には言語的な知識が必要なので、形式スキーマです。
 2 文字の意味に関する知識は内容スキーマです。
 3 専門用語に関する知識は内容スキーマです。
 4 文化・社会に関する知識は内容スキーマです。

 したがって答えは1です。

 

問5 ボトムアップ的な読み

  言語処理方法はトップダウン処理とボトムアップ処理に分けられます。
 既に持っている背景知識や文脈、タイトル、挿絵、表情などから推測しながら理解を進めていく言語処理方法トップダウン処理といいます。逆に、単語や音、文法などの言語知識を用いて、細かい部分から徐々に理解を進めていく言語処理方法ボトムアップ処理といいます。
 母語話者はこの2つを無意識に適宜組み合わせて使っているとされています。これを補償モデルといいます。

 1 読みながら自分が分かりやすいように表や図を書いて理解を進めるのはボトムアップ処理です。
 2 単語や文法から理解を進めようとしているのでボトムアップ処理です。
 3 タイトルや太字部分などから大意を理解しようとするのはトップダウン処理です。
 4 接続詞などの文法的な要素から理解を進めようとしているのでボトムアップ処理です。

 したがって答えは3です。