日本語コラム

 Perfume「1mm」は今から5年前にリリースされた曲です。
 当時チョコラBBプラスのCMソングとなってて今でもその印象が強く残ってます。
 ちょっと聴いてみてください!

 この曲のある部分の言葉がすっごく面白いんです。気付きました?
 5年も経ってるから今さらなんですけどね。

 

「もういい くないよ」

 「もういい くないよ」は1mmの歌詞の一部です。

 とりあえず日本語教師として真面目に書きますと…

 ここで使われている「いい」はい形容詞。通常い形容詞は最後の「い」を取り除いた部分が語幹とされ、否定形は”語幹+くない”として表されます。例えば「寒+くない」など。
 しかし、い形容詞の中でも「いい」は特別で、否定形の時は「よ+くない」となります。つまり語幹が変化します。初級の学習者なら間違えやすいところですね。

 でも歌詞では「もういい」の後に「くないよ」と来てます。
 文法的に見れば変ですが、ここではなんで使われてるんでしょ?

 

「くないよ」はとっさの否定

 曲を聴いてもらえれば分かる通り、この「もういい」と「くないよ」の間にはわずかに間(ま)があります。
 この間(ま)が意味するものはとっても大きいんです。

 例えば最初は「もういい」と思っていてそれを口にした瞬間、やっぱり違うと思ったらどう訂正しますか?

 普通なら「やっぱりよくない」と言い直すはずです。
 そしてそれを更に省略したのが「くない」。かなりとっさの判断の時に用いられます。

 ですからこの歌詞で「もういい」と言った時点では本当にそう思っていますが、言い終わった瞬間に考え方が変わってとっさに否定「くないよ」と言ったと推測されます。

 このような言い方は会話の中でも可能です。試験では高確率でダメ。
  ・「うま!…くないね」 (食べ物食べた瞬間)
  ・「仕方ない…くないわ」
  ・「簡単…じゃないな。」

 い形容詞:「くない」
 な形容詞:「じゃない」
 名詞:「じゃない」
 動詞:「ない」

 要するに文法が間違っているわけではなくて、そこには作詞の中田ヤスタカさんの豊富な表現力が多いに詰まっているんですね。
 とっさだと難しいですが、もし覚えてたら使ってみてください!

 

日本語コラム

 先日作文の授業で「自分の好きなところ」というテーマを出しました。

 私は「自分が思う自分の良いところ」という出題意図でこのテーマとしたんですが、しかし学生たちは「実家」「寮」「近くのお店」などと書いていてびっくり。

 その時気付きました。
 そっかこのテーマは2つの意味があるんだ…

 

所(ところ)

 「所」にはいろんな意味あります。

 1.物理的な空間、領域、場所(集団)
  (1) 夏休みはおばあちゃんのところに行く。
  (2) 暗いところを一人で歩くときは気を付けてください。

 2.あるものや状況に関する性質の一部分
  (3) 彼のそういう勇敢なところには感心させられる。
  (4) 彼女の好きなところはどこですか?

 3.経過の状態、場面、局面
  (5) 良いところだったのにセリフが棒読みで興ざめした。
  (6) できるところから始めてみてください。

 およそ大きく3つに分けられ、いずれも口語では「とこ」と省略して言うこともできます。
 文法に接続する「ところ」については省略しました。

 

「自分の好きなところ」の意味

 というわけで「ところ」にはいくつもの意味があるんですよね。

  (7) 自分の好きなところ

 なのでこの「ところ」の考えられる意味は2つ。
 1つは自分の性格や外見などのあらゆる特徴など、もう1つは物理的空間を指しています。

 文脈がなく突然こう聞かれれば二通りになってしまって確かにどちらか分からなくなります。
 学生と私の間で認識に齟齬が生じたのはこれが原因でした。

 じゃあ文脈に頼らず明確に伝えるためにはどう言えばいいか。
 まさしく好きな場所を問いたいのであれば「場所」を使えばいいです。性質を問うなら「自分のどんなところ」と言えば間違いありません。

  (8) 自分の好きな場所はどこですか? - 近くの喫茶店です。
  (9) 自分のどんなところが好きですか? - 外向的なところです。

 ちなみに疑問詞を加えても答えは変わりません。

  (10) 自分の好きなところはどこですか? - 外向的なところです。
  (11) 自分の好きなところはなんですか? - 外向的なところです。

 このようにこの言い方は、文脈がないと的確に伝えることができなさそうなんです。

 

作文のテーマはほとんどが名詞

  〇「わたしの家族」
  〇「夏休みの思い出」
  〇「大人になったらしたい事」

 作文のテーマはいずれも名詞です。どれだけ長くなっても文全体で名詞になるような接続をします。
 ですからこのようなテーマはなんか変に感じます。

  ✕「あなたの家族を紹介してください」
  ✕「夏休みの思い出は何ですか?」
  ✕「大人になったら何をしたい?」

 名詞化されていない「自分のどんなところが好き?」はテーマとして不適切。だから「自分の好きなところ」としました。これが後の誤解を生む原因となってしまったんですねー…。

 仮にちゃんと口頭で説明したとしても2通りの解釈があるのはテーマとして駄目!
 学生を混乱させてしまって結構反省してます。
 以後ちゃんと確認しよ。

 

日本語コラム

 学生の細かな間違いを分かるからと言って訂正しないで放っておくと、その言い方が自分の中にもだんだん馴染んできて、何が間違いで何が正しいのか分からなくなってくるなんてことは少なくありません。
 私の中のその最たるものは「私の数学は上手です。」です。

 まずこの場合上手ではなく得意を使うことは「【第45回】「得意」と「上手」の違い」で述べているので見てみてください。

 ここで触れたいのはその文型です。

 

「私の数学は上手です」は間違った言い方

 中国語では「我的数学不好」というような言い方があるため、このまま直訳した結果このような日本語となっています。
 これは数学のみならず、全ての科目に共通して言えることです。

 はっきり言って間違いです。もう使わないでください。
 絶対にこんな言い方はしません。私も中国に行くまで一度も聞いたことがない日本語でした。

  (1)✕私の数学は上手です。
  (2)✕私の歴史は得意です。

 助詞「の」は修飾と所有の2つの意味を持ちます。
 「我的数学不好」の「的」は修飾としての意味になりますが、「私の数学」の「の」は所有を表しているような気もして変。

  

正しい言い方

  (3) 私数学得意です。
  (4) 私歴史得意です。

 普通の日本人はこう言います。いわゆるはが構文というやつです。
 特に自己紹介なんかで使う頻度が高いですから、これを読んでくれた方はもう間違えないでくださいね!