平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説

(11)言い換え・例示の接続詞

 選択肢1
 「つまり」は前述の内容を要約する機能がありますが、そのために比喩を用いるとは限りません。
 ・人には承認欲求がある。つまり、誰もが認めて欲しいという願望がある。
 ・彼は飲酒のコントロールができない。つまり、アルコール依存症だ。

 選択肢2
 「すなわち」は説明通り、何か見方を変えて言い換えたりするときに使います。
 ・もうこれで満足だという時は、 すなわち衰える時である。
 ・花粉症、すなわち鼻の死。

 選択肢3
 「要するに」は前述の内容を要約する機能がありますが、後件では具体例を挙げるのではなく、趣旨を変えずに別の言葉で短くまとめます。
 ・手段を問わず勝ちたい。要するに負けず嫌いだ。
 ・挑戦しなければ何も起きない。要するに無難である。

 選択肢4
 「例えば」は後件で前述の内容を短く言い換えるのではなく、具体例を挙げて説明します。
 ・最近つらい。例えば家事とか残業とか。
 ・良い習慣を身に付けたい。例えば運動とか。

 
 各選択肢を正しく言い換えるとこうなるます。

 1 「つまり」は、前述の内容を要約して示す。
 2 「すなわち」は、前述の内容を別の観点から取り上げて説明する。
 3 「要するに」は、結論を明示するために前述の内容を短く言い換える。
 4 「例えば」は、端的な具体例を挙げるために、比喩を用いる。

 したがって答えは2です。

 

(12)命令、依頼、意志など幅広い表現を後件に取れる接続詞

 問題は「だから」「それで」「そのため」「そこで」のうち後件に命令・依頼・意志表現が取れるものはどれかです。例として命令表現「~しなさい」、依頼表現「~てくれませんか」、意志表現「~つもりだ」で例文を作ってみます。

 1 だから
 「だから」は以下のように命令、依頼、意志表現全てに使えます。

遅い時間だから、早く帰りなさい。
遅い時間だから、早く帰ってくれませんか。
遅い時間だから、もうすぐ帰るつもりだ。

 2 それで
 「それで」は前件の原因を前提として話者の意思で選択できる行為が後件で表される場合に使います。なので意志表現しか後件に来れないはずです。

彼は今日来れないみたい。それで私が代わりに行くつもりだ。

 3 そのため
 「そのため」は原因・理由の意味を表す接続詞です。後件は常に客観的な事実が述べられるので、後件に命令、依頼、意志表現は来ません!

そのため、当店は事前予約制となっております。

 4 そこで
 「そこで」は前件の問題を改善、解決するための意志的動作がくる場合に使います。前件と後件には客観的な因果関係が無くてもよく、その場合は後件の目的を聞き手に想像させる性質を持ちます。なので命令、依頼表現には使えません。

貧血がひどい。そこで、鉄分のサプリメントを飲むことにした。

 したがって答えは1です。



(13)後続部の談話全体との関係

 接続詞には、順接や逆接など先行部と後続部の関係を示すものもありますが、後続部が談話全体とどのような関係にあるのかを示すものもあります。

 選択肢1
 「まず」は、いくつかある過程のうち最初にすることを後続部で示す接続詞です。先行部と後続部の関係を示しているのではなく、談話全体との関係性を表しています。

 選択肢2
 「でも」は、前件から予想される結果とは逆の結果になることを示す逆接の接続詞です。先行部と後続部の関係を示すものです。

 選択肢3
 「だって」は、前件についての理由を説明する接続詞です。先行部と後続部の関係を示すものです。

 選択肢4
 「とはいえ」は、前件から予想される結果とは逆の結果になることを示す逆説の接続詞です。先行部と後続部の関係を示すものです。

 したがって答えは1です。
 この問題の例文検証めんどすぎ。

 

(14)「すると」の口頭表現

 「すると」は、前件が原因・理由、後件が結果・結論となることを示す順接の接続詞です。文章だと物事の継起を表すことができます。何かの動作が終わった後に次の動作を行うことです。

電気を消した。すると、何も見えなくなった。
門限が過ぎた。すると、すぐ母から電話がかかってきた。

 しかし、口頭表現では継起以外の意味を表すみたい。例えばこういう使い方。

「すると、あなたは全て知っていたんですか?」
「月曜日は休みとった」「すると、今週末は三連休?」

 これは、相手の発言を受けて話し手の判断が続くことを示す表現です。
 したがって答えは4です。

 

(15)「もしくは」と「か」の文法的な違い

 「もしくは」と「か」は前件と後件から選択することを表す接続詞です。その違いは何でしょう、という問題。

 選択肢1
 「もしくは」も「か」も、「延期もしくは中止」「続行か中止」のように2つの並列はできます。
 3つ並列させたい場合は「続行、延期もしくは中止」「続行か延期か中止」のように言えば大丈夫。
 4つの場合でさえも「続行、延期、中止もしくは中断」「続行か延期か中止か中断」で大丈夫。
 「か」は二者択一の場合にしか使えないわけではないです。この選択肢は誤り。

 選択肢2
 「もしくは」は確かに名詞、動詞、格成分などの要素を並列させられます。

 【名詞】延期もしくは中止
 【動詞】延期する、もしくは中止する
 【格成分】学校で、もしくは家で

 でも「か」も同じことができます。

 【名詞】延期か中止か
 【動詞】延期するか中止するか
 【格成分】学校でか、家でか

 名詞の並列にしかできないわけじゃないです。この選択肢は誤り。

 選択肢3
 ここでいう「構造的な結びつき」とは強調と捉えていいんだと思います。
 「もしくは」は後続部を特に強調し、「か」は先行部を強調します。

 続行もしくは中止
 続行か中止か。

 だからこの選択肢は正しいです。

 選択肢4
 選択肢3とは逆のことを言っています。
 「もしくは」は後続部に情報の焦点(強調)があり、「か」は先行部に情報の焦点があります。
 だからこの選択肢は間違い。

 したがって答えは3です。




2023年9月3日平成29年度, 日本語教育能力検定試験