母音の無声化で「です」「ます」の発音をキレイに!

 日本語学習者の中には「~です」「~ます」の最後の「す」をはっきり発音する人がいます! 日常会話なんかでは別に間違いじゃないし大きい問題にはならないけど相手に不慣れな感じや不自然な印象を与えることもあったり。そこで知っておきたいのが母音の無声化の規則。

 

母音の無声化

 学生の発音を録音したので、まずは聞いてみてください。

録音1
録音2

 録音1は文末の「す」をはっきり言っていて、録音2は「す」が薄くなっています。こうして聞き比べてみると録音1のほうが不慣れで不自然な感じがすると思います!

 先生こんにちは。
 私はそんしんひで
 私は19歳で
 私はけいだい出身で
 私の専攻は日本語で
 私の趣味はゲームで
 よろしくお願いします。

 録音2の薄くなっている「す」がまさに母音の無声化。本来発音されるはずの母音が、ある特定の条件下で声帯振動を伴わずに発音されるようになる音韻現象です。これは日本語だけじゃなく多くの言語で見られる現象です。
 綺麗に日本語を発音するために、いつ母音の無声化が起きるか勉強しましょう。無声化が起きる主な条件は次の2つ。

 

①狭母音が無声子音に挟まれたとき

 狭母音が無声子音に挟まれたときとは「無声子音+狭母音+無声子音」の形のこと。そしてこの真ん中の狭母音は無声化の条件を満たしています。ちなみに狭母音は /i,u/ 、無声子音は /k,s,t,h,p/ のことなので /k,s,t,h,p/ + /i,u/ + /k,s,t,h,p/ の形になるとき、間に挟まれた /i,u/ は無声化することがあります。本当はIPA(国際音声記号)に直して判断するのが正しいやり方なんですが、ここでは分かりやすくローマ字に直してみていきます。

 (1) 学生  g a k u s e i
 (2) 明日  a s i t a
 (3) 機会  k i k a i

 例えば(1)には「無声子音+狭母音+無声子音」の形が「kus」として現れています。/k/ も /s/ も無声子音なので、それに挟まれた狭母音 /u/ は前後の音に同化して無声化します。「がくせい」とはっきり言うんじゃなくて、皆さん実は「がkせい」と「う」をはっきり言わないはずです。

 

②無声子音に狭母音がついた音が語末・文末に来たとき

 続いて、「無声子音+母音」の形が語末や文末に来たときも無声化することがあります。

 (4) 私は日本人です。  d e s u
 (5) 8時に起きます。  o k i m a s u
 (6) 話         h a n a s i

 (4)(5)の文末「です」「ます」はいずれも「su」で終わっていて、「無声子音+狭母音」の条件を満たしています。こんなときは「です」「ます」とはっきり言わず、「でs」「まs」のように「う」がはっきり発音されません。

 

母音の無声化は絶対起きるわけじゃない!

 母音の無声化は必ず起きるわけではなく、上の2つの条件下で起きやすいというだけ。例えば「寿司」「服装」「キツツキ」みたいに無声化する母音が連続する語の場合、全て無声化してしまうと発音が不明瞭になり意味が分かりにくくなっちゃいます。意味が伝わらないと発話する意味もないので、こういうときは無声化が避けられます。

 (9) 寿司    s u s i
 (10) 服装    f u k u s o u
 (11) キツツキ  k i t u t u k i

 キツツキなんかは全ての母音が無声化する条件を満たしているけど、仮に全部無声化したら「kttk」みたいに子音だけの発音に近くなっちゃって意味が分からなくなります。だから意味伝達を優先するためにいずれかの母音をしっかり発音します。

 実際無声化してもしなくても意味は変わらないから、自然さや流暢さよりコミュニケーションを重視するなら無理に身につける必要もありません。先生は学習者のニーズにあわせて教えてあげてください。あっ、スピーチコンテストとかに出場するなら絶対必要です!




2022年8月20日日本語TIPS, 日本語のいろんなお話