令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題14解説
問1 性差別的な日本語の例
選択肢1
「看護婦」が「婦」を含むから女性だけを指し、男性は一般的じゃないみたいな言い方がするから「看護師」に変えたっていう話は有名です。この記述は「看護師」じゃなくて「看護婦」だったら正解なんですけど。残念ながら間違い。
選択肢2
「保母」にも「母」が含まれてるから女性だけを指し、男性は一般的じゃないみたいな言い方。それが影響して今は「保育士」と呼ばれてます。なんか依存とかなんとか言ってますけど変なこと言ってるので間違い。
選択肢3
女性が優れているから「女優」? 適当に作った選択肢で出題者が手を抜きました。お疲れ様です。
選択肢4
これが答え。
「主人」の「主」が従属関係を想起させるってことなんでしょう。
答えは4です。
問2 ポリティカル・コレクトネス
ポリティカル・コレクトネス(olitical correctness)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することです。
三菱鉛筆株式会の「よくあるご質問」に「はだいろがなくなった」というやつがあります。そこにはこのように書かれてます。
「はだいろ(肌色)」の呼称を「うすだいだい」に変更しました。「はだいろ」の呼称は、人の肌の色へ固定観念を与える可能性があると指摘されていたことから…
そういうことで答えは1です。
問3 特定のジェンダーをイメージさせる表現
1 「学生か?」は男性的。この選択肢は間違い。
2 「うるさい」に対する「うるせえ」は男性的。この選択肢は間違い。
3 「~しろよ」は男性的。これが答えです。
4 「静かね」は女性的。これは間違い。
答えは3です。
問4 役割語
特定の人物像をイメージさせる表現は役割語のことです。「~じゃ」というとおじいさんの感じがしたり、「~だってばよ」といえばナルトを想起したり… そういうやつ。
選択肢1
書生ってなんか頭いい感じのイメージあるから「~ますの」「~だわ」って言わないイメージ。
「~ますの」「~だわ」はなんだろう、お嬢様系? 私のイメージは。
選択肢2
これが答えです。「~だこと」「~ですもの」はお嬢様の感じがします。
選択肢3
「わし」「~じゃ」はひげをたくわえたおじいさんという感じなので違います。
選択肢4
「あちき」「~ありんす」は遊女。
宮中の女房と言えば「お~」「~もじ」に代表される女房詞を使います。(おでん、しゃもじなど)
答えは2です。
問5 教師と学習者のコミュニケーション
選択肢1
これが正解。
まず潜在的カリキュラムについて、これは学校で学習者が潜在的に学んでいる価値観とか社会のルールのことです。例えば先生が教室の掃除をさせるときに男子生徒には重いものを、女子生徒には軽いもの扱わせたら、「力仕事は男性の仕事なんだ」みたいな考え方を刷り込むことになります。これがジェンダーに関する隠れたカリキュラムです。この選択肢にもあるように先生が男子には「君」、女子には「さん」をつけていたらそれが刷り込まれます。
選択肢2
ここで出てきている「教師と学習者の関係性に関する伝統的な価値観」とは、授業は教師が中心となり、教師から学習者に知識の伝達が行われるという考え方を指しています。このやり方で行われる授業では学習者は能動的、主体的、自律的な学習ができません。そこで近年学習者中心の授業形態が流行ってます。学習者中心の授業では教師はあくまで学習者のサポートに徹します。伝統的な価値観とは全く別物です。
この選択肢は間違い。
選択肢3
IRE/IRFとは、①教師の働きかけ、②学習者の応答、③教師の学習者の応答に対するフィードバックの3段階談話で構成される談話のことです。例えば次のような談話がIRE/IRF型。
教 師 : Aさんの趣味は何ですか?
学生A : 趣味はマラソンします。
教 師 : 違います。「趣味はマラソンです」ですよ。
この談話では教師の発話が2回、学生の発話が1回で発話機会は平等ではありません。この選択肢は間違いです。
選択肢4
意味分かんないこと言ってます。
答えは1です。