形態素とは?
形態素(morpheme)
形態素(morpheme)とは、意味を担う言語の最小単位です。
(1) 白猫
{しろ}{ねこ}
(2) お金
{お}{かね}
例えば「しろねこ(白猫)」という単語は「しろ」と「ねこ」という構成要素に分割可能で、「しろ」は色が白いことを、「ねこ」は動物の猫を表しています。この「しろ」と「ねこ」をさらに「し」と「ろ」、「ね」と「こ」に分割したら、それぞれが何か特定の意味を表すことはありません。したがって、「しろ」と「ねこ」は意味を担う言語の最小単位である形態素{しろ}と{ねこ}が実現したものと言えます。形態素は通常 { } で囲んで表します。厳密に言うと、単語をこのように分割して得られるのは形態素の一つの実現体である形態(morph)です。
形態素 | 形態 | 意味 | |
---|---|---|---|
彼 | {kare} | kare | 話し手でも聞き手でもない人物 |
は | {ha} | ha | 述語の主体、主題 |
神童 | {sindou} | sindou | 「神童」 |
と | {to} | to | 述語の命名の内容 |
呼ば | {yob} | yob | 「呼ぶ」 |
れ | {rare} | are | 受身 |
てい | {tei} | tei | 進行中 |
た | {ta} | ta | 過去時制 |
らしい | {rasii} | rasii | 伝聞、推測 |
よ | {yo} | yo | 感情表出 |
「彼は神童と呼ばれていたらしいよ」という文は10の形態素から成り立っています。これら形態素はこれ以上分割すると意味を持たなくなります。
参考文献
漆原朗子(2016)『朝倉日英対照言語学シリーズ4 形態論』朝倉書店.2,9,30,59,141頁
窪薗晴夫(1999)『日本語の音声』岩波書店.108-111頁
斎藤純男(2010)『言語学入門』三省堂.52-55頁
斎藤純男,田口善久,西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』三省堂.57頁
仁田義雄ら(2000)『文の骨格』岩波書店.19-20頁
森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』三省堂.51頁
リンゼイ J.ウェイリー,大堀壽夫ら訳(2006)『言語類型論入門-言語の普遍性と多様性』岩波書店.114-117頁