【質問】「交差点で事故があった」はどうして「に」じゃなく「で」を使うの?

質問

質問者さん
(中国)

 交差点で事故があった

 「ある」の文型は「~に~がある」のはずなのに、どうしてこの文は「~で~がある」ですか?

管理人

 この文の「ある」は「起きる」「発生する」という意味で使われています。これは存在の「ある」ではなく、動作を表す「ある」です。動作を表すときは、その動作場所を「で」で表します。だから「交差点で」となっているんです。
 それぞれの文型はこうなります。

〔存在〕を表すとき
【存在場所】に【存在主体】がある

〔動作〕を表すとき
【動作場所】で【動作主体】がある

「ある」は色んな使い方がある

 「ある」の典型的な使い方は無情物の存在です。「AにBがある」の文型をとり、Aは存在場、Bは存在主体です。これらは存在という静的な事態を表します。

 (1) あそこに銀行がある。  (存在)
 (2) 大学には桜並木がある。 (存在)
 (3) 机の上にりんごがある。 (存在)

 しかし、存在ではなく、出来事の発生という動的な事態を表す「ある」もあります。この「ある」は「起きる」「発生する」などに言い換えられるように、存在ではなく、動的事象を表現しているものです。

 (4) きのう宮城県で地震があった
 (5) 交差点で事故があった
 (6) 昔ここで戦争があった

 格助詞「で」は動作場所を表します。動作場所の「で」を使うためには、述語は動的述語、つまり動作動詞でなければいけません。

 (7) 図書館で勉強した。 (動作動詞)
 (8) 家で野球観戦した。 (動作動詞)
 (9) プールで泳いだ。  (動作動詞)

 これらと同じく、(4)~(6)の「ある」も動作動詞として使われているので、その動作場所として「で」があるんです。「交差点で事故があった」は存在の「ある」ではなく、動作の「ある」。動作の「ある」は動作場所に「で」を使います。だから「~に~がある」の文型を取りません。

 
 参考文献
 寺村秀夫(1982)「日本語のシンタクスと意味Ⅰ」くろしお出版 156-157ページ

 




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