令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 過剰般化

 よく出題される誤用の一種。

 うつくしい → うつくしくない
 きれい   → きれくない

 イ形容詞の否定形はイ形容詞語幹に「くない」をつけて作りますが、ナ形容詞「きれい」を形式上イ形容詞とみなして「くない」をつけたのが↑の例です。あるルールを別のところに持ち込んだ結果誤りになるようなもの過剰般化と呼んでいます。

 1 過剰般化の記述
 2 これなんだっけ、ちょっと思い出せない
 3 定着化(化石化)の記述 
 4 わからない

 答えは1です。

問2 誘導

 訂正フィードバックの分類です。「誘導」が出題されるのは知る限り初めて。

暗示的 理解確認 学習者の発話に対して、自分の理解を述べ、正しいかどうかを確認する。 正用を提示
インプット誘発型
リキャスト 間違っているところだけを正しく言い直して学習者に提示する。
明確化要求 言っていることが理解できなかったことを伝え、言い直させる。 正用は提示せず
自己訂正を促す
アウトプット促進型
プロンプト
繰り返し 間違っている発話全体や間違っている部分をそのまま繰り返す。
明示的 メタ言語的
フィードバック
文法を説明したり、情報を与えたりして間違っていることを教える。
誘導 途中まで文を与えるなどして、正しい言い方を引き出す。
明示的訂正 間違いがあることを指摘し、正しい言い方を提示する。 正用を提示
インプット誘発型

 1 誘導
 2 明示的訂正
 3 繰り返し
 4 理解確認

 答えは1です。



問3 書いて伝えるタイプのフィードバック

 口頭でフィードバックするんじゃなくて、学生が書いた作文に赤線引いたりして書くタイプのフィードバックの話をしています。この2つの比較。

 選択肢1
 口頭フィードバックははっきり誤りがあることを言ってもいいし、「なんていった?」みたいに誤用の存在を明示しない暗示的なやり方でもできます。でも作文添削で暗示的に間違いを指摘する内容を書く先生っていないでしょう。明示的な訂正に適しているのでこの選択肢は間違い。

 選択肢2
 口頭だったらその場で意思疎通して分からないところを学生に確認できますけど、作文添削は目の前に学生がいるわけじゃないので書いた内容の意図が分からずその場では何もできない、なんてことがよくよくあります。だからこの選択肢は逆で間違い。

 選択肢3
 口頭フィードバックは文字の力を借りずに音で指摘しますから、聞く方は難しいんですよね。でも作文添削のように書いてフィードバックすると、読み手はゆっくり読んで内容を理解する時間があります。短期記憶の面で言うと口頭フィードバックのほうは負荷が高く、書くタイプのフィードバックは比較的低いです。
 この選択肢は正しい。

 選択肢4
 口頭フィードバックは一つひとつの小さい誤りを伝えるのはかなり向いています。でも作文添削で一つひとつの細かい誤りを訂正しまくると紙が赤ペンだらけになって大変。口頭フィードバックのほうが細かい指導に向き、作文添削のほうが全体的な指導に向いています。この選択肢は逆。

 したがって答えは3です。

問4 FonF

 外国語教授法の大きな流れを理解するため、それぞれの教授法がどういう考えに基づいて指導するのかを知るためにこれが役立ちます。

 フォーカス・オン・フォームズ → 言語形式を重視
 フォーカス・オン・ミーニング → 意味・機能を重視
 フォーカス・オン・フォーム  → 意味・機能を重視しながら、必要があれば言語形式も

 最初は言語形式を重視していたんですが、形式ばっかり授業でやるとコミュニケーションができなくなってしまいました。そこでコミュニケーションを重視するフォーカス・オン・ミーニングの教授法が出てきます。しかしコミュニケーション重視したことで今度は文法がボロボロになっちゃいました。次に考えられたのはコミュニケーションを重視しながら必要があれば文法もやるというフォーカス・オン・フォーム

 1 フォーカス・オン・フォームズ (文法用語を用いて説明)
 2 フォーカス・オン・フォーム  (言語形式+コミュニケーション)
 3 フォーカス・オン・フォームズ (言語形式に集中)
 4 フォーカス・オン・ミーニング (言語の意味を重視)

 したがって答えは2です。

問5 タスク中心の教授法

 タスク中心の教授法は、1990年代以降に提唱されたオーディオリンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチのお互いの長所を組み合わせ、欠点を補い合った教授法です。実生活に必要なタスクの中で実際に使われる言葉を使うことによって自然なコミュニケーション能力を身につけさせるやり方をとります。現実的な課題を与えたロールプレイみたいなものだと思えばいいです。

 1 タスク重視なので難易度順になるとは限りません
 2 新出文型の産出ではなく、タスクの達成を目的としています
 3 正しい記述
 4 複数の学習者の相互作用が起こる授業だから一人ではできません

 学習者が例えばこれから面接があるってとき、授業で面接やってみようなんて使い方が可能。だからニーズを満たすような使い方ができます。
 したがって答えは3です。




2022年10月27日令和4年度, 日本語教育能力検定試験