令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

問1 学習者オートノミー

 学習者オートノミーというのは、学習者が自分の将来の目標とかニーズを満たすために自分の学習をコントロールする能力のことです。この能力があると自分はこれから何を勉強すればいいのかも分かってくるし、どのように勉強していけばいいのかのスケジュールも自分で立てられるし、そのスケジュールをちゃんと実行できるようになります。これはつまり自律学習ができるようになるってこと。

 選択肢4の記述がまさにこれ。
 答えは4です。

問2 学習

 加藤(2020)『学習アドバイジングにおける学習者オートノミーの育成:脳メカニズムへの影響に関する一考察』には学習者オートノミーと独習は異なるものであるとの記述が見られます。

 学習者オートノミーによって実現される自律的な学習とは「一人で学習すること」ではない。例えば、図書室で独習をしている学習者が必ずしも自律的であるとは限らない。

 学習者オートノミーと独習を対比させた記述がこの後も続きます。
 答えは2です。



問3 どんな能力が必要?

 目標を設定して、計画して、実行して、評価して… っていうサイクルを学習者主体で繰り返すにはどんな能力が必要?
 言語学習ストラテジーにメタ認知ストラテジーというのがあるんですが、これは自分が自分の学習の司令塔になり学習過程を調整したり、モニターするストラテジーのこと。このような能力があれば自律学習が可能になります。

 1 この能力はコミュニケーション場面で役立つ能力
 2 バリエーション能力? 言語変種を使い分ける能力? なにそれ
 3 CALPのこと
 4 これが答え

 したがって答えは4です。

問4 学習日誌の内容

 自律学習において、学習者自身がこういう学習日誌を書くことがあります。

 選択肢1
 自律学習は学習者が中心だから教師が自ら積極的にフィードバックを行ったり、学習者の学習に入り込むなんてことはありません。だからフィードバックを絶対毎日受けなければいけないっていうわけではありません。もちろん学習者が「先生フィードバックしてください毎日!」ってお願いしたらそれは学習者の意志によって決められた学習方法なので教師は全力サポートすることになりますけど。

 選択肢2
 学習日誌だから日常のこと要らないんじゃない?

 選択肢3
 これが答え。学習日誌は学習の改善のために書くもの。だからこそ選択肢2の日常の内容は不要。

 選択肢4
 これは悩ましいけど、「学習の改善のために書く」という目的を果たすためなら母語で書いても日本語で書いてもどっちでもいいわけだから、日本語で書かなければならないってことはないです。

 したがって答えは3です。

問5 教師の工夫

 学習者に自分の学習をコントロールする能力(学習者オートノミー)を身につけさせるために教師がすべき工夫とは何か。

 選択肢1
 何度も言ってますけど、自律学習では教師は積極的に学習に介入しません! だから教師は依頼がない限り教材を作るってこともしません。この選択肢は間違い。

 選択肢2
 学習者が自分で学習を進めていくと必ず分からないことにぶつかります。そのとき周りのリソースを使って問題を解決していくわけですが、必要なときに近くに参考書があるか、図書館があるか、ネットが使えるか、先生にすぐ質問できるか、などなどの教室環境を整えてあげたほうがいいです。これは教師の仕事。

 選択肢3
 こんなの自律学習じゃなくても、どんな学びでも悪いことなんてない。

 選択肢4
 地域の人も学習者の自律学習を助けてくれる存在で、学習過程における重要なリソースです。このネットワークを教師が作れれば確かに良さそう。

 間違っているのは1。
 したがって答えは1です。




2022年11月1日令和4年度, 日本語教育能力検定試験