令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題2(5)解説
(5)「うれしいです」
これはぱっと見謎だった。試験中飛ばしました。あとで考えてみたら、どうも第三者の感情・感覚に対して断言してるっていう共通点が見えてきました。例えば「私はとても嬉しいです!」とは言えるけど、「あなたはとても嬉しいです!」とは言えません。なぜなら「嬉しい」という感情はその人にしか分からないことで、基本的にはその人以外の人は断言できないからです。そこで「嬉しそうです」とか「嬉しがっています」とか、こういった様態の表現をつけて他の人の感情・感覚を表すわけです。
この場合、妹は父の感情を完璧に理解することはできないので「うれしそうです」と言ったほうがいいんだろうと。
だから「~そうです」で試してみましょう。
1 ○大好きだそうです
2 ○買いたいそうです
3 ○痛いそうです
4 ✕思うそうです → ○思っています
選択肢1~3は「~そうです」がつけられました。だから答えは4かな? と思ったんですが、ここには一つの疑問と落とし穴があります。
疑問は選択肢1の「~を大好きです」の助詞が間違っている点。規範的な言い方は「~が大好きです」のように「が」を使います。このような助詞の誤りは他の選択肢には見られません。だとすると他の選択肢は何か共通した誤りをしていないといけないわけですが…
1 助詞の誤り (+主観的な推測「~そうだ」の欠落)
2 主観的な推測「~そうだ」の欠落
3 主観的な推測「~そうだ」の欠落
4 主観的な推測「~っています」の欠落
選択肢1はは助詞の誤りに加え、主観的な推測「~そうだ」の欠落がありそう。ただ、主観的な推測の表現「そうです」「がっています」とかってその様子から見て明らかな場合、あるいはこれまでの情報からその感情・感覚を持っていることが明らかな場合は省略可能です。例えば選択肢1では、これまで何年も何十年も母がタイ料理を食べ続けてきたところを見てきたんだったら、母がタイ料理を好きなことは他人であっても分かり切っていることなんで「大好きです」と言い切っても大丈夫。別に「大好きだそうです」っていってもいいんですけど。そういう意味では選択肢1は主観的な推測の表現が欠落していると言わなくても良さそうです。
他の選択肢は主観的な推測が欠落している点で共通しています。選択肢4は「~そうだ」が付けられませんが、同じ推測を表す「~ている」が欠けています。形式を統一して出題していないのでこの点に騙されました。
したがって答えは1です。
参考:【N4文法】~そうだ