令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(13)解説

(13)使役文におけるヲ格名詞の意味

 うわーこれいい問題だーって試験中思いました。ホントにきれい。その美しさを分かってほしいので説明頑張ります。

 まず、使役文の文型には種類があるんです。

 ① 自動詞〔-ガ-ヲ〕型文型
   部長 部下 帰らせた。
 ② 自動詞〔-ガ-ニ〕型文型
   部長 部下 働かせて、給料をもらっている。
 ③ 他動詞〔-ガ-ヲ-ニ〕型文型
   部長 部下 激辛ペヤング 食べさせた。

 どの文型においてもガ格名詞は使役者を表す点で共通しています。上の場合は全部使役者である部長がガ格で表されていますよね。でも被使役者の格標示は違います。①の被使役者である部下はヲ格で、②③の被使役者である部下はニ格で表されています。同じ被使役者なのに文型によって格助詞が変わっているということをまず理解してください。

 で、①と②は自動詞で使役文を作ってます。自動詞は「~を」の形を取らないので文中に対象が出てきません。しかし③は他動詞で作った使役文だから対象の「を」が表れます。この場合は「食べる」という動作の対象、食べるものをヲ格で表すわけです。だから他動詞で作った文型だけが〔-ガ-ヲ-ニ〕型を取ります。

 ここまで分かったら問題も分かるはず! 分かりやすく省略されている使役者、被使役者を補完してみてみましょう。

 選択肢1

Aが Bに 入学式で 新入部員を 勧誘させた。

 →使役者はガ格、被使役者はニ格。
 「勧誘する」は他動詞だから勧誘の対象をヲ格で表します。だから「新入社員」は対象。
 
 選択肢2

Aが Bに 歓迎会で ギターを 弾かせた。

 →使役者はガ格、被使役者はニ格。
 「弾く」は他動詞だから弾く対象をヲ格で表します。だから「ギター」は対象。

 選択肢3

Aが Bに 教室で 反省文を 書かせた。

 →使役者はガ格、被使役者はニ格。
 「書く」は他動詞だから書く対象をヲ格で表します。だから「反省文」は対象。

 選択肢4

Aが 校庭で 太郎を 走らせた。

 →使役者はガ格、被使役者はヲ格。
 上の分類でいう①のタイプ。「走る」は自動詞なのでこうなってます。

 選択肢5

Aが Bに 授業で 自分の作文を 評価させた。

 →使役者はガ格、被使役者はニ格。
 「評価する」は他動詞だから評価する対象をヲ格で表します。だから「自分の作文」は対象。

 選択肢1、2、3、5のヲ格は対象、選択肢4のヲ格は被使役者。
 したがって答えは4です!

 




2022年10月29日令和4年度, 日本語教育能力検定試験