キラキラネームに賛成? 反対? 歴史を見ると自然な流れかも…

 幼稚園や保育園の先生が現場でその増加を実感してるっていうキラキラネーム、否定的に捉える人が多いような印象を受けます。ひどいキラキラネームももしかしたら普通になっていくかも? という話を歴史を交えて見ていきます。

 

最近キラキラネーム多いよね!

 ネットでもこの名前なんて読むかクイズみたいなのが溢れ、キラキラネームが広く認知されてきました。その多くはそれまでの常識とは違う漢字の読み方をしたり、これまでの日本語にはないような音の響きを持っている名前でとにかく初見では読めないのが特徴的です。

 私の住んでる町では毎月1回広報が各世帯に配られます。この広報には町に関するいろんな情報だけでなく、前月生まれたばかりの赤ちゃんの名前と顔写真が載ってるんです。(載せたくない場合は申し出ると掲載されないようになってます) そこからいくつか私の主観でキラキラネームっぽいなーと感じたものをあげると…

 晴友(はると)  優珠(ゆず)
 寿華(みこは)  凛空(りく)
 柊月(ひづき)  侑來(ゆき)
 奏汰(かなた)  蒼空(そら)
 絃叶(いとか)  蒔季(しき)
 暁允(かづま)  藍奈(らな)

 キラキラネームには、別名DQNネーム(ドキュンネーム)という言い方もあって、こっちはその名前をより否定的に捉えた言い方です。

 

キラキラネームはどういう気持ちでつけてる?

 生まれてきた赤ちゃんはやっぱり可愛いもの。とっておきで最高な名前をプレゼントしたいというのはきっとどんな親でも同じです。良い響きで、良い漢字で、良い画数で、かつ個性的で親が納得できるもの、とあれもこれもと入れ込んだ結果キラキラ化してます。親からすると完璧! と思っていても、第三者からすると驚かれたり。でもどうやらこうした名付けをする親にも、それがキラキラネームだと思っていない人もいるようです。

名前についてご質問させてください。「明煌(あきら)」という名前を検討しております。(中略)ご意見頂けましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。
 名前の読み方について質問します。「緒美」読めますか?(中略)この名前は、難読ですか? キラキラネームですか?

 Yahoo!知恵袋では赤ちゃんの命名について「これはキラキラネームですか?」みたいな質問が結構見られます。面白いなーと思うのは、質問者からはキラキラネームを回避したいという気持ちが文面から感じられるし、質問者の友達からもキラキラネームは避けたほうがいいなどアドバイスを受けてるケースもあったり。

 いわゆるキラキラネームをつけている親たちであってもそれを回避したいと考えている(考えていた)人もいて、そうなるとキラキラネームとは何か、絶対的な定義ってのは定められないんだろうと思います。私はキラキラネームだと思う、私はそう思わない、と人によって違うことが分かります。

 

キラキラネームに対する反応、約6割が否定的

 

 予想通り否定的が60.7%(145人)と圧倒的でした。次に多かったのは「どちらとも言えない」で29.3%(70人)。でもその意見には否定的なものが多かったです。肯定的に捉えているのはたった10.0%(24人)であまりにも少ない状況です。

 

「否定的」の意見

 学校でいじめられたりしないか、自己紹介するとき恥ずかしい、学校や病院で名前を呼ばれるときに困る、就職活動などで不利になる、大人になったら、おじいちゃんおばあちゃんになったら辛そうなどなど、人生の多くの場面で不利になるのではないかという意見がほとんど。

 ●その子が成長して、大人、老人になってもその名前で生きていかなければいけないのは辛そう。
 ●将来、子どもが大きくなった時に学校でいじめられて傷つくのではないかと思うため、キラキラネームに否定的な考えである。
 ●先生や病院で呼ばれるときに大変そう。
 ●大人になった時に、採用面接で恥ずかしい思いをしたり、すぐに読めない、読み方が全く想像できない名前は、つけられた子どもがかわいそう。
 ●教育関係の仕事をしているのですが、キラキラネームの子よりも一般的な読みの子の方が成績が良いように感じます。ご両親の教育水準に違いがあるのかもしれません。
 ●誰が見ても普通に読める名前が良いと思う
 ●漢字をあてる必要性がないならカタカナ・平仮名表記にすれば良いと思う。漢字を汚されているようで正直悲しくなる。
 ●役場などである程度の命名(漢字使用)制限が必要かなと思っています。
 ●漢字に本来ない読みをあてるのは意味不明で理解できない。
 ●子供より自分のことしか考えてないため。
 ●名前は他人にその人を識別させるツールなので、他人が容易に読み書き出来ないものは名前として機能不全である。
 ●子供本人が気に入っているなら何もいう事はありません。他人から見ると、可愛くない性格の子だと名前負けしてるなあと冷ややかに思うこともしばしば。ペットの名前のようで親は子供のことをペットと同じ感覚で考えているのかなあとも感じます。また、社会人になって相手が読めないと支障をきたす場面もあるのではと思います。
 ●子供の名前で遊ぶなと感じます
 ●昔の暴走族の当て字のように感じて個人的にはあまり好きではありません。
 ●子どもの将来を考えると、適切ではないと思う。
 ●男らしい女らしい名前がやっぱり良いと思う。
 ●どうしても馬鹿っぽい印象を受けてしまう。

 

「どちらとも言えない」の意見

 ちゃんと考えて名付けたものだからそれに他人が文句を言うのは違うと前置きをしつつ、否定的な意見を述べているのが目立ちました。その名前をもらった子どもがどう思うかを重視し、ちゃんとした教育が施されているなら問題ないとする条件付き容認もあります。

 ●昔と変わってきたなという印象
 ●人が読むことを考えろと思う
 ●個人の自由だと思うので、その家庭で決めたのならなにも思わないが、自分の子どもにはつけたくない
 ●今は違和感があって付けられた子がかわいそうと思うが、キラキラネームが周りに普通にいる時代になると思うので、なんとも言えない。
 ●当て字すぎて読めないのはやめてほしい
 ●子供の将来のことや子供の気持ちをじゅうぶんに考えた名前ならいいと思います。
 ●きちんと育てているのであればキラキラネームでも問題ないと思います。
 ●名前をつけられた子自身がどう思うかによると思う。
 ●漢字をカタカナ読みするような名前は少し驚きますが オシャレで可愛い名前も実際に居るので、捉える人によって 思う事は違うと思います。
 ●その子が困らないのであれば良いと思う。人に何か言われた時に返せるように育てられれば良いと思う。
 ●親が考えた名前なので、いいとは思います。理由などがあり考えたからです。ですが、読み方が難しかったりするので、変にこだわりすぎるのも、子供の今後を考えると何とも言えません。
 ●変だなぁとは思いつつ、他人様の名前を貶めてはいけないと思うから口には出さない。
 ●個人の自由ですが奇抜過ぎるものはひいてしまいます。
 ●読みづらく内容配慮されていたり、読み間違えても怒らなければよいと思う
 ●気にしない
 ●1歳の子を持つ親の意見ですが、 キラキラネームを付ける際は言い方は良くないですが 親の自己満足だと感じています。 大きくなるにつれて学校の先生などから 名前が読めなくて困ると言う意見も出るかと思います。
 ●周りに馬鹿にされないやつなら良い
 ●子供が物心がついた時にこんな名前は嫌だと思わないぐらいだったらいいと思う。

 

「肯定的」の意見

 肯定派はそもそも少なかったので意見もとっても貴重でした。本人の自由、多様性、言葉の変化、慣れてきたなどの理由でキラキラネームを肯定しています。唯一無二で個性的な点に魅力を感じて羨ましいと答える方もいました。親も子供もそれに満足しているなら周りがとやかく言うことではないですもんね。

 ●自分達のことなんだから自分達で考えればと思う。
 ●学校の先生は最初読むのに大変だと思いますが、可愛らしいですし、両親がちゃんと意味を考えた名前だと思うので肯定的です。
 ●個性だから
 ●キラキラネームに慣れてきたからなんとも思わない
 ●最近は減少傾向で陽菜等ナチュラル系にシフトしている。キラキラネームも素敵だとは思いますよ。
 ●保護者が愛情を込めて名付けているのであれば、どのような名前でも悪く無いと思っています。
 ●いつの時代でも、若者の間で新語?のようなものが生まれるのたり、その中で定着したりするものもあるのでいいのではないでしょうか。
 ●唯一無二な感じてちょっと羨ましい。
 ●本人が恥ずかしく思うなら問題であるが、名前にも多様性があると思うので特に問題は無いと思う。
 ●本人の自由だからいいと思う。ただ、子供が名前を気に入らない場合に備えて、簡単に変えられる制度を導入すべき。
 ●明るくて未来を感じる名前なので私はいいと思います。
 ●自分の子供なので付けたいと思った名前をつければいいと思う
 ●最近かなり増えてきていて将来的には当たり前になるから大丈夫だと思う
 ●変な名前ではなく子供も喜ぶような可愛い名前なら、全然問題ないと思います。
 ●親が付ける名前だから意味があって付けているのももちろんあるので、良いと思います。人それぞれの感性があるからこそ、被らない世界で1人だけの名前というのも素敵だと思います。



昔からあるキラキラネームたち

 鎌倉時代末期頃に吉田兼好が編んだ『徒然草』では奇抜な名前をつける人を次のように批判しています。ここでいう「目慣れぬ文字」というのが現代のキラキラネームに当たるんでしょうね。鎌倉時代にも奇抜な名付けがあったことがここから分かります。

<徒然草・第116段>
人の名も、目慣めなれぬ文字もんじを付かんとする、えきなき事なり。
何事も、めづらしき事を求め、異説いせつを好むは、浅才せんざいの人の必ずある事なりとぞ。

<現代語訳>
人の名に見慣れない文字を使って名付けることは意味のないことだ。何事も珍しいことを求め、奇抜さを好むのは、いかにも教養のない人がやることである。

 江戸時代にも漢字の難読な読みを使って誰も読めないような名前につけるのが大流行しました。この頃には「光多(みつな)」「毎敏(つねとし)」「信満(さねまろ)」「舎栄(いへよし)」「美臣 (よしを)」など、現代と同じようなキラキラネームが江戸時代にもあったようです。当時の国学者である本居宣長は随筆『玉勝間』の中で、当時のキラキラネームに対して次のように批判しています。

『玉勝間』<今の世の名の事[九三六]>
近き世の人の名には、名に似つかはしからぬ字をつくこと多し、又すべて名の訓は、よのつねならぬがおほきうちに、近きころの名には、ことにあやしき字、あやしき訓有て、いかにともよみがたきぞ多く見ゆる、すべて名は、いかにもやすらかなるもじの、訓のよくしられたるこそよけれ

<現代語訳>
最近の人の名前には、名前にふさわしくない字が多く使われている。また、全ての名前の訓は普通の読み方が多いのに、最近の名前は奇妙な字で奇妙な読み方をして、非常に読みづらい名前を多く見かける。すべての名前は、いかにも読みやすい文字で、訓がよく知られているものがいい。

 

名前に使われる「和」はどう読む?

 「和夫」「和美」「和子」「正和」などの人名はそれぞれ「かずお」「かずみ」「かずこ」「まさかず」と難なく読めるはず。そしてこれらをキラキラネームだと認識してる人はいないでしょう。でも「和」の訓読みは「やわ(らぐ)」「なご(む)」、音読みは「わ」で、どうやっても「かず」とは読めません。
 実は漢字には訓読み、音読みの他に、人名に使う「名乗り」という読み方があります。例えば「和」の名乗りはこんなにもあります。(漢字源改訂第四版より)

あい、あえ、かず、かた、かつ、かのう、たか、ちか、とし、とも、な、のどか、ひとし、まさ、ます、みきた、やす、やすし、やまと、やわ、やわら、よし、より、わたる

 名乗りはこれまでの名前で使われた用例の蓄積。この漢字は名前のときこう読む! と知っていて、かつその読みに慣れていないと分からなくなってしまいます。そしてこの「和」についても本居宣長が『玉勝間』で次のように触れています。

『玉勝間』<人の名の和字の事[十四]>
人の名に和字を加受カズとよむは誤也、これは加都カツにて、都は淸音なり、此言は、かてかつかつると活用て、物を和合こと也、萬葉歌に、醬酢爾ヒシホズニ蒜都伎合而ヒルツキカテヽとある、此合而なり、

<現代語訳>
人の名前に「和」を用いて「かず」と読むのは間違いである。これは「かつ」であり、「つ」は清音である。これは「かて」「かつ」「かつる」と活用し、物を”和合(あはす)”ことをいう。万葉集に「のびるを押しつぶして醬と酢をまぜ合わせて」という歌があり、この「まぜ合わせて」である。

 宣長が言っている「和」を「かつ」と読む読み方は名乗りの一覧にもあるもので、相当昔の名乗りみたい。それが江戸時代のこの頃には「かず」となり、それは間違っていると万葉集まで引用して指摘しています。

 

【まとめ】正統な名前とは何か?

 昭和に入ってから元号由来の「和」をつけた名前が多くなり、これを「かず」と読むのは今でこそ正統な名付け方として認知されているけど江戸時代は批判の対象になる読み方でした。こうして名前の歴史を見てみるとその時代ごとに支持される”正統な名前”があったようです。いつの時代もそれまでにない奇抜な命名に批判が起きていて、しかし長い時間をかけて私たちは慣れてきています。キラキラネームも今後慣れていく流れに乗っているんだろうと思います

 キラキラネームの基準は時代によって変わる曖昧で不安定なものなんですね。
 ここまで読んでいただいたらキラキラネームの見方が変わったんじゃないかなーと思います!

 




2022年9月29日日本語TIPS, 日本語のいろんなお話