「あとででいいよ」は正しい表現?

疑問

質問者さん
(日本)

「あとででいいよ」の「」はおかしいと思います。
「あとでいい」が正しいと思うのですが。

管理人

「あとででいいよ」は正しい表現です!
「未来のある時点でそれをやっても問題ない」といった許可・許容の意味を持つ文法的に適格な表現です。

 

①一つ目の「で」は区切りとなる時点を表す

 「あとででいいよ」の一つ目の「で」は区切りとなる時点を表しています。この「で」は他にもこんなものが。

 (1) あと話そう。
 (2) 明日終わりだ。
 (3) アンケートはこの項目完成だ。

 だから「あとででいいよ」の「あとで」は発話時よりも未来のある時点が区切り。

②2つの「で」の間には何かが省略されている

 「あとででいいよ」の1つ目と2つ目の「で」の間には”あとで何をするか“という内容が省略されています。次の用例で省略されているものを確認してみましょう。

 (4) あとででいいなら手伝うよ。
    →あとでやるでいいなら手伝うよ。
 (5) 今お仕事中なので、あとででいいですか。
    →今お仕事中なので、あとでやるでいいですか。
 (6) 電話してるのであとででいいですか。
    →電話してるのであとでやるでいいですか。

 ここでは全部「やる」で省略された部分を補完しました。これが省略されたので「でで」となってしまったというわけです。

 

③臨時名詞と2つ目の「で」

 二つ目の「で」は助詞なのでその前は名詞が来るはず。でも省略されてる部分を見てみると… 「あとでやるでいいなら手伝うよ」では名詞ではなく動詞「やる」が来てます。これは臨時名詞(nonce noun)と呼ばれるもので、本来名詞ではない語が臨時的に名詞相当の地位に置かれただけと考えます。例えば次のようなもの。

 (7) 逃げるは恥だが役に立つ
 (8) 「大きな」は連体詞です。
 (9) 「やる」は目上の人に使えません。

 だから「あとでやるでいいよ」の「やる」は臨時名詞で文法的に大丈夫。これが省略された「あとででいいよ」も文法的に大丈夫。

④2つ目の「で」は許可・許容

 次善や最低条件を表す名詞に「~でいい」「~で構わない」「~で差し支えない」などがついたとき、許可とか許容を表すことができます。

 (10) 3万円構いません。
 (11) そのような理解差し支えない。
 (12) 制限時間は1時間十分だろう。

 「あとででいいよ」の二つ目の「で」はこの用法です。

 そんなこんなで、「あとででいいよ」は「未来のある時点でそれをやっても問題ない」といった許可・許容の意味を持つ表現で文法的にも問題ない言い方です。




2023年5月15日日本語TIPS, 日本語の疑問