令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 プロセス・アプローチ

 この問題はですね! 個人的に衝撃的でした。

 プロセス・アプローチって「構想」「文章化」「推敲」をそれぞれ行き来して作文を書いていこうという作文教授法なんです。で、平成25年度 試験Ⅰ 問題4 問5の問題では「計画」「創作」「書き直し」という言い方を変えて出題をしたり、令和元年度 試験Ⅰ 問題6 問3でも「推敲を繰り返し」といったり、このキーワードは保ったまま出題されてきたんです。

 でもこの問題には「構想」「文章化」「推敲」もないし、「計画」「創作」「書き直し」もないんですよ。完全に傾向を外してきた出題の仕方です。性格悪って思いました。

 1 制限作文アプローチの記述
 2 新旧レトリックアプローチの記述
 3 「各活動」っていう言い方が構想、文章化、推敲のことを指しているんですね。これがプロセス・アプローチ。
 4 学術英語アプローチの記述

 したがって答えは3です。

 

問2 メタ認知ストラテジー

 優れた言語学習者になるためにはどんな資質が必要なのか。オックスフォードはその必要な資質として次の6つを挙げています。それが学習ストラテジーです。

直接 記憶 記憶するために用いる暗記、暗唱、復習、動作などの記憶術。新しい知識を蓄え、蓄えた知識の想起を支えるもの。
認知 記憶した情報の操作や変換に用いるストラテジー。リハーサルしたり、既知の要素を組み合わせて長い連鎖を作ったり、分析・推論するなど。または、より理解を深めたりアウトプットするためにメモ、要約、線引き、色分けなどをして知識を構造化するなど。
補償 外国語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために用いるストラテジー。知識が十分でなくても推測やジェスチャーなどによって限界を越え、話したり書いたりできるようになる。
間接 メタ認知 学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。自分の認知を自分でコントロールし、自ら学習の司令塔となって学習過程を調整したり、自分自身をモニターする。
情意 学習者が学習者自身の感情、態度、動機などの情意的側面をコントロールし、否定的な感情を克服するためのストラテジー。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなど。
社会的 学習に他者が関わることによって学習を促進させるストラテジー。質問したり、明確化を求めたり、協力したりするなど。

 1 教師が関係してくるので社会的ストラテジー
 2 認知ストラテジー
 3 「チェック」からメタ認知ストラテジー
 4 コミュニケーション・ストラテジーの言い換え

 したがって答えは3です。



問3 熟達した書き手

 熟達した書き手ってなんかカッコいいですね。

 1 「一方的」じゃなくて「双方向的」のほうがいい
 2 熟達してますねー
 3 熟達してます
 4 熟達しすぎです。

 答えは1です。

 

問4 視点の置き方

 ここにきて急に文法問題出てきました。

 選択肢1
 許可の「~ていいです」を、目上の先生に使う誤り。
 正しくは「書いていただけませんか」というべきですけど、どちらも動作主は先生なので視点は変わってません。

 選択肢2
 「嬉しかった」のは自分なんだから、「電話した」のも主語は自分のほうがいい感じがする。この文だと、「母が嬉しかった」という解釈も可能になっちゃう。視点を「母」ではなく「私」にして、「私は母に電話して~」と言ったほうがもっと良いですね。この言い方は視点の置き方がおかしくなってます。

 選択肢3
 ふわっとした不自然な言い方ですね。
 どうやって直すか困りますけど、これも視点とは関係なし。

 選択肢4
 「私の足は痛いです」というような言い方は中国でもよく聞きました。日本語母語話者だったら「私は足が痛いです」のようにハガ構文にします。とはいっても別にどっちの表現でも正しいですから、指導の必要は別にないと思ってます。

 したがって答えは2です。

 

問5 ルーブリック

 ルーブリックは2年ぶり。直近だと令和元年度 問題7 問2に出題されています。

 ルーブリックとは、縦軸に複数の具体的な評価項目、横軸にはその到達度を置き、学習が各評価項目のどのレベルまで到達しているかを測ることができる評価表のことです。こんな感じの表ですね。

評価項目1 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目2 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目3 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目4 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準

C:努力が必要 B:概ね良し A:十分 S:期待以上

 選択肢4の内容がルーブリックのものです。評価観点があり、到達度が記入でき、全体的な成果が確認できます。
 したがって答えは4です。

 




2022年9月23日令和3年度, 日本語教育能力検定試験