令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題6解説

令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説

問1 CEFR

 CEFRって出てきますね。
 これはヨーロッパ共通参照枠とも呼ばれている、言語能力を測定する指標のことです。レベルは6段階あって、一番下からA1、A2、B1、B2、C1、C2となっています。以下の参考サイトをご覧ください。

 参考:「学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」(CEFR) 共通参照レベル: 全体的な尺度

 で、話はここからなんですよ。
 各選択肢の言葉がそのまま転記されているわけではなく、少しずつ形を変えて言い換えられています。
 だから何がなんだか混乱してよく分からないんです。

 1 たぶんこれがB1
 2 たぶんこれがA2
 3 たぶんこれがA2
 4 たぶんこれがA2

 って思ってしまいました。A2が3つもある恐ろしさ、たぶん違います。
 おそらく答えは1です。みなさんどう思われますか?

 

問2 社会言語能力

 「社会言語能力」という言葉から、カナルとスウェイン (M.Canale & M.Swain)が提唱したコミュニケーション能力が思い出せましたか。コミュニケーション能力は次の4つからなると言いました。

談話能力 言語を理解し、構成する能力。会話の始め方、その順序、終わり方などのこと。
方略能力
(ストラテジー能力)
コミュニケーションを円滑に行うための能力。相手の言ったことが分からなかったとき、自分の言ったことがうまく伝わらなかったときの対応の仕方のことで、ジェスチャー、言い換えなどがあてはまる。
社会言語能力
(社会言語学的能力)
場面や状況に応じて適切な表現を使用できる能力。
文法能力 語、文法、音声、表記などを正確に使用できる能力。

 この4つに照らし合わせて選択肢を見てみます。

 1 「場面に適した」が社会言語能力
 2 コミュニケーション上の困難を乗り越えようとするストラテジー能力
 3 「順序立てて」が談話能力
 4 「正確な表現」が文法能力

 したがって答えは1です。
 教案の問題からコミュニケーション能力の問題を取り上げる、なんか新しい角度から出題してきましたね。

 

問3 ウォーミングアップ

 ウォーミングアップは授業の最初にやるものです。

 1 授業の最初なので、授業の目的なんか伝えるのはいいですね
 2 授業の冒頭から急に新出文型の意味? ウォーミングアップどこいった?
 3 授業と関係するような内容で雑談したりして、頭を慣れさせるみたいなことです。良い!
 4 これもいいですね。本作業に入る前に、語彙を少しずつ入れていきます。

 したがって答えは2です。

 

問4 シャドーイング

 シャドーイングは、まずテキストを見ないで音声を聞きます。そのあと聞こえてくる音声の後にあまり間を空けないで同じ言葉を繰り返します。
 シャドーイングは聞こえてくる音声をそのまま真似するような練習法なので、表現をいちいち考えないで口にできるようになったり、アクセントやリズム、イントネーションのそのまんまコピーも期待できます。(プロソディの習得に有効)

 1 高いレベルの発話を正確に理解させる? シャドーイングって繰り返すだけなので、発話を正確に理解させる効果はあまり期待できないです。
 2 そうです。語句をそのままコピー、記憶できます。
 3 上述した通り、合ってます。
 4 合ってます。

 したがって答えは1です。

 

問5 ロールプレイ

 ロールプレイは、こういうロールカードと呼ばれるものをそれぞれロールプレイの参加者に配ります。自分に配られたカードしか見れません。お互い何をするか、何が目的かが書かれていて、その目的を達成するために日本語を使って頑張ります。

 選択肢に「情報差」や「表現の選択権」という言葉が出てきていますが、まずはここから説明します。

 ロールプレイは参加者の間に持っている情報の差(インフォメーションギャップ)が必要です。お互い何が目的なのか分かっていると、ただ暗記した表現を言って形式的に演じればいいだけになってしまいます。相手の目的が何かが分からないと、そこに情報差が生まれ、実際のコミュニケーションに近くなります。情報差は活発なコミュニケーションを生み出すのにも役立ちますし、授業の盛り上がりも支えるものです。

 表現の選択権(チョイス)もロールプレイを支える要素の一つです。
 例えば他人に正しくアドバイスするロールプレイを考えてみます。あらかじめ「~したらどうですか」という文型を使えばいいことを知っていれば、これを使ってすぐロールプレイは終わりです。でも何を使えばいいのか分からない状況だと「~してください」「~しましょう」「~しませんか?」みたいないろんな表現が学習者の頭の中に渦巻いて、どの表現が一番ふさわしいか考えながら活動できます。そのロールプレイの中で自分がどのように振る舞うか、どのような表現を使うか、参加者にその選択権があれば活動は自由になり、盛り上がります。学習者にとっても考える機会となるので有意義です。

 情報差と選択権が分かりましたので、問題を見てみます。
 ロールカードXには「あなたの町は旅行先として有名」とあります。それから何か相手から質問が来ることも分かります。使用する語彙・文型として「有名な」「人気がある」「おすすめ」とあるので、何かそのような質問をするのだろうということも分かってしまいます。しかも質問に答えるときは「~といいですよ」を使えばいいんだということも分かってしまいます。何もかも分かってしまう、親切すぎるロールカードです。

 一方ロールカードYには、「相手におすすめの場所や店を聞く」とあり、タスクは明確です。
 しかし話の切り出しに使う「すみません」も書かれているし、「おすすめ」「人気がある」という言葉もあります。極めつけには「~ていただけませんか」を使えばいいということも分かります。

 整理しましょう。

 Xは有名な場所を質問されるということを知ってますし、Yもおすすめの場所を聞くというタスクを持っています。つまり情報差はありません。
 XもYもロールカードに書かれている語彙や文型を使えばいいと分かりますので、行動の選択権もありません。
 ロールカードの出来としては0点。

 したがって答えは4です。
 (ここまではっきり言い切って間違いだったら恥ずかしいけど…)





令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説