令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説

2021年11月1日令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説

 解説疲れてきました… ここまで見て頂いている方、本当に感謝いたします。
 1年1回きり、もう少しですので頑張ります。

問1 場面・学習項目の導入

 教案見ますと、丁寧に許可を求めるために使う「させていただけませんか」の授業です。
 この表現を使う場面って結構限られます。少なくともその場面に目上の人が要る必要がありますね。

 選択肢1
 目上の人がいますよっていう状況をイラストなどで視覚的に理解させておくのは有効です。それをしないのは逆効果。

 選択肢2
 導入する文型を聞き取りやすくするんであれば、話すスピードや音色を変えたほうがいいです。

 選択肢3
 導入はちゃんとしとかないと後々まずい。1回しか聞かせないのはダメ!

 選択肢4
 これが正しいです。新しい学習項目を導入するときは、その学習項目の意味が辞書を使わなくても推測によって分かるような作りにするのが望ましいです。

 したがって答えは4です。

 

問2 

 選択肢1
 先生が「いつ行きますか?」などのキューを出したら、それに学生が「1時に行きます」のように答える練習のことです。

 選択肢2
 先生が「泳ぎます」といったら「泳げます」、「読みます」といったら「読めます」と言わせるような練習のことです。
 下線部Bの練習はこれ。

 選択肢3
 先生が「学校に」と言ったら、「学校に行きます」
 先生が「自転車で」と言ったら、「自転車で学校に行きます」
 先生が「4時に」と言ったら、「4時に自転車で学校に行きます」というのような練習のことです。

 選択肢4
 先生が「本」といったら、「机の上に本があります」
 先生が「ペン」といったら、「机の上にペンがあります」
 先生が「皿」といったら、「机の上に皿があります」というような練習のことです。

 したがって答えは2です。

 

問3 使役表現が難しい理由

 使役表現「させる」を使っていろいろ例文検証のお時間になります。

 選択肢1
 主語が有情物だったら… 「母が私に部屋を掃除させた」と言えます。
 主語が無情物だったら… 「雨が私に別れを決めさせた」と言えます。
 有情物か無情物かで制約って、何か制約あります? どちらもいけるんでないと思うんですけど。

 選択肢2
 能動文「私が掃除した」は動作主をガ格で取ります。
 使役文「母が私に掃除させた」は動作主(被使役者)をニ格で取り、ガ格は使役者です。
 ガ格の意味が違ってくるので、学習者にとっては行為者と被行為者の関係が混乱しちゃうのもしょうがない。
 正しい記述です。

 選択肢3
 自動詞だったら… 「私が雨乞いで雨を降らせた」
 動作主はガ格で示されます。

 他動詞だったら… 「私が彼に謝罪させた」
 動作主はニ格で示されます。

 たしかに自動詞か他動詞かで動作主を表す格助詞が変わっていますね。

 選択肢4
 他動詞「聞く」の使役形は「聞かせる」で、これには似ている形の自動詞「聞こえる」があります。
 他動詞「見る」の使役形は「見せる」で、これには似ている形の自動詞「見える」があります。
 このことを言っているのかなーと試験中考えてました。
 確かに形が似ているので学生にとっては面倒なんですよねこれ。

 したがって答えは1です。

 

問4 インプット理解の重点を置いた活動

 インプットは聞いたり読んだりすることで、アウトプットは話したり書いたりすること。
 こと勉強においては、何か新しい知識を入れたり既有知識を呼び出すような作業がインプットで、持っている知識を産出することがアウトプットです。

 1 学習者は文を見て、自分の知識に照らし合わせて正しいものを選びます。インプットの活動です。
 2 学習者は文を読んで、自分の知識に照らし合わせて〇か✕か判断します。インプットの活動です。
 3 短い文を聞かされてディクテーション、つまり聞いた言葉を文字にする作業です。これはアウトプットの活動。
 4 学習者が受けた質問内容と自分の知識を照らし合わせて「はい」か「いいえ」で答える。インプットの活動です。

 したがって答えは3です。

 

問5 媒介語

 選択肢1
 これは媒介語の良い使い方です。
 例えば… 箸から箸へ物を受け渡す箸渡しはなぜ日本ではダメなのか、っていう問題が授業で出たとします。これを日本語で説明しようとすると、火葬、遺骨(骨)、骨壺、葬儀のような言葉が出てきます。これらは結構レベルの高い言葉なので、火葬は「死んだあとに人を燃やすこと」、遺骨は「死んだ人を焼いたあとの骨」みたいに言わないといけなくなって逆にややこしくなりがちです。こういう時はもう日本語で説明するのを諦めて、媒介語を使っちゃおうということ。
 文化的な側面はちゃんと知ったほうがいいことなので、媒介語でしっかり伝えてあげるのも大事です。

 選択肢2
 教室活動に関する定型的な指示とありますが、これは教室用語と考えればいいでしょう。
 「言ってください」「聞いてください」「もう一度」「ゆっくり」などなど、こういった教室を回すのに使う言葉は教室用語と言いまして、初級の授業の初めにちゃんと導入します。文法とか単語とか度外視して、これはこういう意味!という風にもう無理やり教えちゃいます。なぜなら教室用語は先生がそのまま使い、学生に指示するための言葉だからです。それを媒介語にする必要は全くありません。先生の指示は多いので、慣れさせるという意味でも日本語のほうが絶対いいです。

 選択肢3
 多国籍なクラスを想定していると思われます。
 クラスの中に中国人も韓国人もフィリピン人もベトナム人もいるようなのが多国籍クラスです。例えば中国人が最も多いクラスで中国語を媒介語として使っても、他の国籍の人には伝わりません。英語は一応最もメジャーな言語ではありますが、英語だって通じない国籍も十分にあります。多国籍なクラスだったら媒介語は基本的に使えないので、この記述は間違いです。

 選択肢4
 授業中は基本的に日本語を使います。学習者に何か話してもらう場面でも、日本語で指示を与え、日本語でフィードバックするのが普通です。そこで学習者の母語を使うのは何とも… 

 したがって答えは1です。

 





2021年11月1日令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説