令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説
問1 イ形容詞とナ形容詞
事物を形容する形容詞は否定形にしたときに「語幹+くない」になるものと、「語幹+ではない」になるものに分かれます。「美しい」は前者、「きれい」は後者です。日本語におけるこのような語の変化を活用と呼んでいて、つまりこの2つは活用が違うということです。これは語の形態(形)が違うという風に考えます。
答えは1です。
問2 イ形容詞とナ形容詞の混同
選択肢1
理由の「~ので」に接続するときは、ナ形容詞は「ナ形容詞語幹+なので」の形になります。
「ナ形容詞語幹+だので」だと勘違いしているみたいです。
イ形容詞とは関係なく、ナ形容詞の接続を誤って覚えています。
選択肢2
2つのイ形容詞を並べるとき、「安くてうまい」みたいに「~くて」で繋げます。
この学習者は基本形を使って繋げているふりをしていますけど間違いです。
ナ形容詞とは関係なく、イ形容詞の用法を誤って覚えています。
選択肢3
イ形容詞は「語幹+かった」の形で過去形になりますが、ナ形容詞は「語幹+でした」です。
「苦しい」はイ形容詞なので「苦しかった」と言うべきですが、ナ形容詞の活用を変に適用して「苦しいでした」になっています。
イ形容詞とナ形容詞を混同しています。
選択肢4
イ形容詞の連用形は「語幹+く」の形をとります。例えば「美しくなる」「苦しくない」などです。
しかしイ形容詞「いい」は連用形で「よく」になる、変則的な活用をする語です。「カッコいい」も「カッコよく」となりますよね。
それを知らないことで「いくありません」と誤用しています。イ形容詞の用法を誤って覚えているだけです。ナ形容詞とは関係ありません。
したがって答えは3です。
問3 例外的な形容詞
「同じ」は一応ナ形容詞として分類されています。
「です」「ではありません」をつけるなら、その語幹に後接させればいいだけです。
(ナ形)静か → 静かです/静かではありません
(ナ形)自由 → 自由です/自由ではありません
(ナ形)同じ → 同じです/同じではありません
しかし問題文にあるように、連体形のときはおかしな活用をします。
(ナ形)静か → 〇静かなところ
(ナ形)自由 → 〇自由な考え方
(ナ形)同じ → 〇同じ人 ✕同じな人
普通名詞に接続するときは「な」を必要とするのが典型的なナ形容詞です。でも「同じ」は「な」が必要ありません。
続いて「多い」について。
イ形容詞を単独で用いて名詞に繋がるとき、名詞の前に「な」とか「の」とか何も要りません。そのまま接続できます。しかし「多い」はそれができません。
(イ形)美しい → 〇美しい人
(イ形)おいしい → 〇おいしい店
(イ形)多い → ✕多い人 〇多くの人
「多くの+名詞」の形にならないとダメなんです。これが例外です。
ちなみに「非常に多い量」「必要量よりはるかに多い量を摂取した」みたいに単独でない場はそのまま名詞に接続できるんですけどね。
なので答えは1です。
問4 連体詞
「大きな」「小さな」がナ形容詞ではないことに気付きますでしょうか。
ナ形容詞は名詞に接続するときは「語幹+な+名詞」の形になり、必ず「な」を必要とします。例えば「静かなところ」「変な人」など。「な」よりも前の部分は語幹と呼ばれていまして、その語幹は「静かです」「変です」みたいに単独で用いれるし、述語にもなれます。
しかし「大きな」「小さな」は違います。「な」よりも前の部分は「大き」「小さ」であり、「大きです」「小さです」とはいえません。この「な」は名詞に繋げるためのものではなく、実は「大きな」「小さな」で一語の連体詞なんです。
連体詞は絶対活用しません。そして必ず体言に接続します。「大きなもの」「小さなもの」みたいなことです。
選択肢3には「活用しないため」とあり、これが連体詞としての正しい記述です。
したがって答えは3です。
問5 注意が必要な形容詞の特性
選択肢1
名詞述語の否定形は「学生ではありません」「学生ではないです」の2つ。口語形も含めると「学生じゃありません」「学生じゃないです」の4つもあります。
形容詞述語、ナ形容詞述語は名詞述語と同じですが、イ形容詞だったら「美しくない」「美しくありません」の2つ。
1つじゃないので間違い。
選択肢2
思いついたのはイ形容詞「無い」。対義語は動詞「ある」です。
対義語は同じ品詞とは限りません。
選択肢3
イ形容詞なんて死ぬほどあるし、変化の「なる」を付けられないものだってあるんじゃないか?って思ったんですけど、本当に無いんですね。
選択肢4
これも選択肢3と同じく、本当にないみたいです。
したがって答えは2です。