令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説
問1 インプット強化
言語形式のインプット強化ということは、学習者にアウトプットさせるよりも情報を与えるほうを優先するということ。
1 正しい文を書かせるのはアウトプット
2 聞き返したらアウトプットが強制的に促されます
3 文字の色を変えたりして効果的なインプットを促しています
4 教師が学習者に話しかけているので、これは学習者にとってのアウトプット
したがって答えは3です。
問2 最近接発達領域(ZPD)
ここでは最近接発達領域(ZDP)という言葉が出てきています。この言葉で思い出したいのはヴィゴツキー関係のお話。
学習とは何か、教育とは何かということについて、私たちは「何かを習得すること」という風に考えがちですが、ヴィゴツキーはこれとは全く異なる、「学習は参加の過程」という見方をしました。これは状況的学習論(situated learning)と呼ばれるもので、この問題と深く関係しています。
発達心理学者のヴィゴツキーは、周囲の親や年長者がいろんな方法で子どもを支援し、協働作業によってその発達を実現させていくと考えました。最初は周囲の大人が助けてくれてやっとできた行為が、次第に子ども一人でできるようになります。自転車なんかも最初は後ろのほうを支えられなければ乗れなかったのに、練習によって自力で乗れるようになるのと同じです。ここで出てくるのがZPD。「できる」と「できない」の間にある「誰かの助けがあればできる」という領域に最近接発達領域(the Zone of Proximal Development)と名前を付けました。その領域で周囲の人々が行う支援をスキャフォールディング(scaffolding)と言います。
つまり子どもは大人に支えられながら日常生活の実践に参加して、徐々になんでもできるようになっていくということです。レイブとウェンガー(Lave and Wenger)はこの過程を新しい学習観として正統的周辺参加論(legitimate peripheral participation)と名付け、提唱しています。
そして、選択肢1がそのZPDに関する記述、選択肢3が正統的周辺参加の記述となっています。
したがって答えは1です。
問3 プロジェクト型学習
教師から一方的に知識を教えるような授業ではなく、学習者が主体的に学習に参加できるような教授法をアクティブ・ラーニングと言い、これは問題文にも出てきています。このアクティブ・ラーニングを促すための一つのやり方としてプロジェクト型学習(PBL:Project Based Learning)があります。(課題解決型学習ともいう)
一般的な授業は国語の時間、数学の時間、英語の時間というように一つの科目ごとに分けて授業をしていましたが、プロジェクト型学習では学習者が主体的に問題を解決したり、プロジェクトを達成するような授業をします。ビニールの性質を勉強するのが教科学習なら、「なぜビニール袋が有料になったのか」のような問いを投げかけられるのがプロジェクト型学習です。いろんな方面に思考を広げ、教科の垣根を越えた横断的な学びが実現できます。
プロジェクト型学習ではある目標が設定され、個人あるいはグループで課題解決に取り組みます。コミュニケーションを通じて問題解決を目指しながら主体的な学習を促す、学習者にとっては面白い授業になります。思考力やコミュニケーション能力なども同時に伸ばせそうです。
1 主体的に情報収集させられるようなテーマは良い!
2 複雑なテーマを扱うことで、教科の垣根を超えた学びができそう。実社会で起こっている課題っていうのも良い!
3 グループ内のコミュニケーションが活性化するので良し
4 主体的に様々な方面に思考を広げていくことを期待しますので、すぐ見通しが立てられるようなテーマは好ましくなさそう。
したがって答えは4です。
問4 KJ法
KJ法はブレーンストーミングなどで出た意見を付箋などに書いて、同じグループにまとめて分析するような思考法です。
1 マインドマップの記述
2 KJ法の記述
3 全く分かりません。
4 KWLに似てますけど、これなんでしょう?
したがって答えは2です。
問5 ジグソー法
各自受け取った異なる情報をグループ内に持ち寄り、お互いのインフォメーションギャップを埋めるように話し合いを進めていくような活動をジグソー法と言います。ちょうどジグソーパズルのように情報というピースを持ち寄るのでこの名前が付けられています。
1 ジグソー法の記述
2 なんだろ、変則ディベート的な?
3 ディスカッションかな
4 分からない…
したがって答えは1です。