令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説
問1 トップダウン処理
大きいものや抽象的なものから処理をはじめ、小さいものや具体的なものに向かっていくような処理をトップダウン処理と言います。その逆はボトムアップ処理です。
例えば学習者が学習言語の小説なんかを読むとき、一つひとつの単語や文法の意味を調べ、1文1文しっかり理解していくような読み方はボトムアップ処理になります。細かいところはいったん放っておいて、まず大意を理解してから細かいところに入っていくのはトップダウン処理です。
1 定型表現は細かいもの(ボトムアップ処理)
2 細かい部分に着目せずにいきなりどのコースが良いか選ぶのは大枠から処理することになるのでトップダウン処理
3 漢字は細かいもの(ボトムアップ処理)
4 語は細かいもの(ボトムアップ処理)
したがって答えは2です。
問2 多読
平成28年度にも多読についての問題が出題されていました。これもそれと似ています。
多読とは、できるだけたくさんのテキストを読む読み方のことです。多読には3つの原則があります。
多読三原則とは
①辞書は引かない
②わからないところは飛ばす
③合わないと思ったら投げる
参考:多読三原則とは – 英語多読|多読・TADOKUの知りたいことすべて
これに照らし合わせると…
答えは1か2だと思うんです。3と4は間違いです。
答えがどれか分からないので保留にしておきます。
2021/12/25 追記
公式発表の答えは1でした。
じゃあ2はどこがダメなのか… 多読であってもレベルに合うものを選べってことなんでしょうか。
なんだかふわふわした問題です。
問3 再話
読解活動、聴解活動の後に自分が理解したことを自分の言葉で話すことを再話と言います。教師が学生に再話させることで、活動の中で出てきた語彙や文法を使わせ、それらを定着させることを目的とします。
1 再生できる内容は当然人によって違うので他の人を混乱させるかもしれませんが、再話の目的は再話による語彙や文法の定着です。個人に対してもグループ活動としても機能します。
2 話す力の育成を目的とするわけではありません。語彙や文法の定着が目的です。
3 自分の理解を話す活動なので、理解が不十分だった場合はそもそも再生できません。
4 再話によって自分の理解を自分の言葉で表現し、再現しようとするので、再話する過程では理解が深まります。
したがって答えは4です。
問4 読解テスト
選択肢1
読解テストなので、長文を読ませて設問に答えさせるようなことをします。なのに長文とは全く関係のない知識勝負、記憶力勝負の問題などが含まれていると読解力を測る試験としては不適切になりまっす。そういった設問内容は工夫が必要です。
選択肢2
前の問題が解けないと次の問題も解けない、という問題の作り方はひどい! できれば1問1問独立して解くような問題が望ましいです。
選択肢3
読解テストなので書く技能まで測る必要はありません。
選択肢4
その通りです。
したがって答えは3です。
問5 クローズテスト
長文の中に空欄があり、そこに言葉を当てはめていくような問題をクローズテストと言います。
ちょうど選択肢4の内容がそれです。
したがって答えは4です。
ディスカッション
コメント一覧
問2は、私も選択肢1と2で迷いましたが、アルクの問題集(どの問題集だったかは忘れてしまいました)に同じような問題があり、正解は選択肢2のように「興味優先」だったように思うので、選択肢2を選びましたが、自信はありません(+_+)
高橋先生、度々申し訳ございません。
例の多読の問題ですが、アルクの問題集を見返してみたところ、次のような解説がありました。
(著作権のこともあるかと思いますので、当コメント非公開にしてくださっても大丈夫ですm(_ _)m
・2019年 日本教育能力検定試験 合格するための本(アルク2019)
(区分4の問題の解説を抜粋) …エクステンシブ・リーディングは多読と呼ばれる方法である。易しい物・自分の好みにあったものを、自分のペースで楽しくたくさん読む活動…
・新刊 日本教育能力検定試験 合格するための問題集(アルク2019)
(区分4の問題の解説を抜粋)…多読では、多くの本を読むことで読解能力を伸ばすことを目的とし、「易しい本から読む」「辞書を使わないで読む」「わからない所をとばして読む」「読んだ後の問いはなし」などの方法が提示されている…
どちらの解説も正とすると、選択肢1と2どちらも消せませんね・・・
問2についてです。
私は選択肢1を選びました。
選択肢2に関しては
”レベルに合うかどうかよりも興味を優先”
が多読のルールに引っかかるのではと考えました。
「多読は、まず極端に簡単なもの、例えば児童向けの絵本、から始める」とどこかで聞きました。
ソースが思い出せずすいません。
三郎さん、こんにちは。
今日になって持っている対策本を見直したところ、問題集Aの解説には「易しい本から読む」「辞書を使わないで読む」とあり、問題集Bの解説には「易しいもの・自分の好みに合ったものを、自分のペースでたのしくたくさん読む」とありました。どうやら、後者の解説の「自分の好み」の方が印象に残っていたようで、選択肢2を選んでしまいましたが、今は正解は選択肢1だろうと思います(涙)。
タルロさん
まだわかりませんよ、問題作成者がタルロさんの読まれた問題集Bの解説を支持している可能性もあります。
この検定の勉強、定義に惑わされてばかりでした。
教師、参考書、問題集、ネットの情報、どれもバラバラ、あやふやなんです。
自身の中で何を根拠とするか精査するだけで大変な負担でした。
せめて主催のJEESが用語に対する定義を公表すべきと感じています。