令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説

2021年10月29日令和3年度, 日本語教育能力検定試験 解説

(6)動き動詞

 この問題では、アスペクトの観点から分類した金田一の4つの動詞を聞いています。

状態動詞 動作や変化ではなく、状態を表す動詞。通常「~ている」の形をとらない。ある、いる、できる、要る…
継続動詞 継続的なある動作を表す動詞。「~ている」の形で動作が継続していることを表す。読む、書く、食べる、降る、泣く、笑う…
瞬間動詞 瞬間的に終わる動作を表す動詞。「~ている」の形で結果の状態を表す。死ぬ、つく、消える、見つかる、始まる、終わる、知る…
第四種の動詞 形容詞的に用いられ、物事の性質や様子を表す動詞。常に「~ている」の形で用いられる。そびえる、優れる、劣る、似る、澄む…

 このうち継続動詞と瞬間動詞はまとめて動き動詞と呼んでいます。

 1 「含む」は状態動詞
 2 「ある」は状態動詞
 3 「読める」のような可能形は、能力の所有という一種の性質・状態を表すので状態動詞
 4 「褒める」は継続動詞

 この問題、間違えるなら「読める」です。可能形は動きではなく状態ですよ、知ってますか?という問題は過去にもいくつかありました。また可能形が選択肢に入ってたので傾向通りですね。

 したがって答えは4です。

 

(7)動作名詞(動名詞)

 勉強、流行、確認、ドライブのような、それ自体では名詞なのに「する」をつけられるものが動作名詞です。

 1 ✕火事する
 2 ✕大会する
 3 ✕感覚する
 4 〇意味する

 したがって答えは4です。

 この問題まず4を選択したんですが、見直しのときに「意味する」があまりにも動作っぽくなく、なんとなーく騙されている気がして「火事」を選びなおしてしまいました… 動作っぽくないのに動作名詞な「意味する」を選ぶあたり、作問者さすがです。

 

(8)形容詞

 ここで「形容詞」と出てきていますが、これはイ形容詞とナ形容詞を含む言い方です。

 選択肢1
 「とても」「すごく」「大変」のような、程度を表す副詞は程度副詞と言います。
 程度副詞は主に形容詞などの状態性の語を修飾するという性質があるため、「とてもきれい」「とても美しい」みたいに言うことができます。
 程度副詞と形容詞の繋がりが分かっていればこの問題、すぐこれを選べます。

 選択肢2
 動作動詞が表す動きの局面をアスペクトと言います。
 例えば「食べるところだ」「食べたばかりだ」「食べている」「食べ終わった」などの言い方がありますが、それぞれ動作直前、動作開始直後、動作進行中、動作完了という具合に、動詞の後ろにいろんな言葉を付け足すと、その動作の局面を指定することができます。このとき「~ところだ」「~たばかりだ」「~ている」「~終わる」をアスペクト表現と言います。

 とても重要なことを言います。アスペクト(動作局面)は、動作の中にしか現れません。「食べる」「帰る」のような動作を表す動詞であれば「食べている」「帰っている」のように局面が存在しますが、「ある」「そびえる」「カッコいい」などの事物の存在、性質、状態を表す状態性の述語には、取り上げる動きの局面が存在しないので、同時にアスペクトも存在しません。

 形容詞は状態を表す語で動作を表すわけではありませんのでアスペクトも存在しません。この選択肢は間違っています。

 選択肢3
 「カッコいいけど性格が残念だった」「きれいだけど性格が残念だった」のように、イ形容詞もナ形容詞も接続助詞「けど」に接続することができます。

 選択肢4
 「カッコいいだろう」「きれいだろう」のように、モダリティ表現「だろう」にも接続できます。

 したがって答えは1です。

 

(9)品詞

 (1) 幸せな生活  (ナ形容詞「幸せ」の連体形)
 (2) 私は幸せだ。 (名詞/ナ形容詞語幹)
 (3) 幸せの青い鳥 (名詞)
 (4) 幸せに暮らす。(ナ形容詞「幸せ」の連用形)

 「幸せ」は「な」を伴って名詞に接続できるのでナ形容詞です。ナ形容詞語幹は名詞と同じ働きをしますので、(2)のように「~だ」を伴って述語になることもできます。ただし、「幸せの青い鳥」のように使うときは名詞です。「幸せに」という言い方をすれば英語なら副詞ですが、日本語ならナ形容詞「幸せ」の連用形です。ただ活用しただけなのでナ形容詞であることには変わりありません。

 このように「幸せ」は名詞とナ形容詞にまたがる語です。
 したがって答えは3です。

 

(10)活用の揺れ

 私の昔話です。
 青森に生まれて青森の大学を卒業するまでの22年間、一度も「違かった」「違くて」という言い方を聞いたことがありませんでした。ところが大学を卒業して福島に就職したら、そのときの同期が「違かった」「違くて」を普通に使っていてびっくりしたことがあります。当時は日本語教師も志していなかったので「そういう言い方もあるんだ、方言かな?」くらいに感じていたんですが、実はこれ、若い世代を中心とした日本語の揺れと呼ばれるものだったんです。

 私たちは2つの間に性質上の食い違いがあること、あるいは正常ではない状態を指して動詞「違う」を使いますが、食い違いがあることも正常ではないことも状態です。状態に対して動詞「違う」を使うことに疑問を感じませんか? まあ日本語はそういうものと言われるとそうなんですが… 普通状態を形容するときは形容詞を用います。しかし「違う」は形容詞ではなく動詞であって、他と少し異なります。

 「違う」の連用形「違い」は「違いは何ですか?」のように名詞として機能します。でも語尾が「い」で終わっているので、本来名詞である「違い」をイ形容詞とみなし、活用してみるという変化が生まれました。(※「違う」自体をイ形容詞とみなした説もあります)

 (1) 美し → 美しかった
     美し → 美しくて
 (2) 違  → 違かった
     違  → 違くて

 こうして「違かった」「違くて」が生まれたと考えられています。
 で、問題に戻ります。

 典型的な動詞は通常事態の変化、主体の動作などを表すんですが、「違う」は動作というよりも状態を表す変わった動詞です。動作を表しにくいので、若者の間ではイ形容詞とみなされ、「違かった」「違くて」のような活用の揺れが生じています。(ちなみに「違う」は英語では形容詞)
 したがって答えは1です。

 





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