令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(1)解説
(1)口蓋音
例年1問目はIPA表記の問題と相場が決まっています。今年もそうでしたが、今年のものはちょっと難しめです。
1 [ʃ] 無声 後部歯茎 摩擦音
2 [ç] 無声 硬口蓋 摩擦音 (「ひ」の子音)
3 [c] 無声 硬口蓋 破裂音
4 [ɲ] 有声 硬口蓋 鼻音 (「に」の子音)
5 [j] 有声 硬口蓋 接近音 (「やゆよ」の子音)
まず答えは1です。
選択肢1以外は硬口蓋で調音する音で、選択肢1だけ後部歯茎音となっています。
問題の「口蓋音」というのは「硬口蓋音」のことです。最初の「硬」が省略されても同じです。
「ひにや硬口」という調音点の覚え方がありますが、それに照らすと2、4、5は硬口蓋だということが分かります。しかし1と3はよく分からないという人がいたはず… なぜなら1と3は日本語にはない発音だからです!
[ʃ]は日本語の「しゃししゅしぇしょ」に近い音に聞こえます。が、標準的な日本語の「しゃししゅしぇしょ」は[ɕ]無声歯茎硬口蓋摩擦音で、歯茎と硬口蓋にまたがって狭窄を作り、そこに息を通すことで摩擦音を出す音です。
[c]は完全に日本語にはなく、日本人には「じゃ」や「や」、あるいはその中間あたりに聞こえます。
これまでは日本語にない発音が1つくらい含まれている問題は別に珍しくなかったんですが、今回2つも含まれているこの問題が出題されました。
そろそろネタ切れで作問に困っている感が見えますね!