平成22年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説

(9)取り立て助詞の特徴

 取り立て助詞は文中にない情報を暗示する機能を持っています。
 例えば「私も好きです」は私以外の人も好きであることを表します。その機能を担っているのが取り立て助詞「も」です。

 選択肢1
 「私コーラが好きです」のように、名詞+取り立て助詞の形は存在します。
 「食べてばかりいる」のように、動詞+取り立て助詞の形は存在します。
 「気温が高いだけだ」のように、形容詞+取り立て助詞の形は存在します。
 「ゆっくりなどできない」のように、副詞+取り立て助詞の形は存在します。
 この選択肢は正しいです。

 選択肢2
 「どの組み合わせでも二つ続けられる」という言い切りが気になります。
 「今こそチャンスだ」における限定の「こそ」、「子供でもできる」における極限の「でも」。この2つを組み合わせて「こそでも」や「でもこそ」などで何か例文が作れますか? 作れないっぽい。
 ただ、「日本語だけしか話せない」のように取り立て助詞「だけ」「しか」を組み合わせて使えるようなものもあります。

 選択肢3
 「私はできるが、彼はできない」の「が」が接続助詞です。取り立て助詞って接続助詞的に使うことができますか? もしかしたら例はあるかもしれませんが、思いつくだけでも使えないものばかり。「ほとんど」というのが誤りです。
 また、「現金はないけどpaypayなら」というように、取り立て助詞「なら」が最後に来るような言い方もできますが、これは果たして終助詞的な使い方なのかと言われると疑問です。ただの言いさし表現で後続部が省略されているだけ。終助詞として使える取り立て助詞の存在も怪しいです。

 選択肢4
 述語の動詞に特徴に依存しっていうのが訳分かりません。自動詞と他動詞、状態動詞と非状態動詞などの特徴によって使える取り立て助詞が限られると言いたいのでしょうけれどもそんなことはありません。また、文中の組み合わせも決まっていません。述語の動詞に対して固定的に使う取り立て助詞なんてあります?

 したがって答えは1です。

 

(10)格助詞と取り立て助詞

 「遊んでなどいない」の「など」は評価を表す取り立て助詞です。「遊び」に対する話し手の低い評価を表しています。この「など」は格助詞が伴って使えます。

 (1) 遊びなど行っている場合じゃない
 (2) くだらない遊びなど付き合うつもりはない。

 格助詞「に」が前接したり後接したりできます。
 したがって答えは2です。

 

(11)格助詞と取り立て助詞②

 「も」が付加されると消えてしまう格助詞を探せばいいんですが、まず強い格と弱い格に関する知識があればこの問題は考える必要がありません。

 (1) 私がやります。  → 私やります。
 (2) 音楽を聴きます。 → 音楽聴きます。

 会話においてはガ格とヲ格がとりわけ省略しやすく、それ以外の格助詞は省略しにくいです。このガ格をヲ格を強い格と呼んでおり、実は取り立て助詞を付加すると消えてしまいます。

 (3) 私もやります。  (ガ格が消えた)
 (4) 音楽も聴きます。 (ヲ格が消えた)

 というわけで答えは3です。

 

(12)「ばかり」と「だけ」

 選択肢1
 「お菓子ばかり食べている」はどちらかというと食べる頻度が高いことを、
 「お菓子だけ食べている」はお菓子以外は食べないことに焦点が当てられています。
 この選択肢は正しいです。

 選択肢2
 確かに「お菓子ばかり食べている」は否定的なニュアンスです。お菓子ばかり食べることに嫌な気持ちを抱いている感じがします。しかし「お菓子だけ食べている」もそういう否定的なニュアンスを持っています。

 選択肢3
 「ばかり」はアスペクトの用法を持っています。例えば「食べたばかりだ」は食べるという動作の完了直後を表します。
 ところが「だけ」は何か動作の局面を取り上げるような用法はありません。
 この選択肢は逆です。

 選択肢4
 お店で「10個ばかりください」というと大体10個くらいという概数を表すことができます。
 「10個だけ」というとまさに10個。概数ではありません。
 この選択肢も逆です。

 したがって答えは1です。

 参考:【N4文法】~ばかり




2021年5月23日平成22年度, 日本語教育能力検定試験 解説