平成22年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

 平成22年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A
 A【言語的環境と対立】

(1)アクセント型の対立

 選択肢1
 「端」は「低高」、「端が」は「低高
 「橋」は「低高」、「箸が」は「低高
 語だけのときアクセントは同じですが、助詞を付けた時にアクセントの違いが顕在化しています。

 選択肢2
 「川」は「低高」、「川が」は「低高低」
 「皮」は「低高」、「皮が」は「低高低」
 語だけでも、助詞をつけてもアクセントは同じです。

 選択肢3
 「雨」は「高低」、「雨が」は「高低低」
 「飴」は「低高」、「飴が」は「低高高」
 語だけでもアクセントが違うので、下線部Aの内容と一致しません。

 選択肢4
 「意思」は「高低」、「意思が」は「高低低」
 「医師」は「高低」、「医師が」は「高低低」
 語だけでも、助詞をつけてもアクセントは同じです。

 したがって答えは1です。

 

(2)「ある」と「いる」の対立

 問題文では、生物かどうかで使い分けされるだけでなく、生物の中でも自らの意志で動くことができるかどうかが「いる」と「ある」の使い分けだと書かれています。

 ただし、「ある」と「いる」の両方使える場面もあるとのこと。
 各選択肢の「いる」や「ある」に違和感あるかどうか見てみます。

 1 〇楽しむものもいる 〇楽しむものもある
 2 ✕魚屋さんがいる 〇魚屋さんがある
 3 〇子供がいる 〇子供がある
 4 〇希望者がいれば 〇希望者があれば

 選択肢2は道案内か何かの想定だと思います。人を指しているわけではなく、魚屋の建物を指しているので、「いる」より「ある」のほうが自然です。

 選択肢4の「希望者」は確実に人であり、自ら動くことができる存在です。だから「いる」を使うべきですが、実際は「いる」も「ある」も可能です。それはなぜか。

 例えば「向こうに人がいる」では、この「人」の動きが前景化しているので「いる」が使いやすくなっています。
 しかし「希望者があれば日程を調整します」の「希望者」は、まだ目の前には表れていない観念世界の抽象概念としての存在です。概念として指し示す時は、そのものに動きがあるとしてもその動きが前景化することはなく、「ある」が使えるようになります。
 「いる」は主観的に事態を扱い、「ある」は物事を客観的に概念として扱います。動けるかどうかより、動きを前景化して述べるかどうかで「ある」と「いる」を使い分けているということ。

 1 花見の花見客を客観的に見る場面では「ある」も使えます。
 2 そもそも魚屋さんは「ある」です。
 3 子供の存在を客観的に見る場合、「ある」も使えます。
 4 上述の通り、「ある」も使えます。

 したがって答えは2です。

 

(3)テイルの用法

 1 この「喜んでいる」は継続を表しています。
 2 この「通っている」は継続を表しています。
 3 この「走っている」は継続ではなく、過去の経験を表すものです。
 4 この「結婚している」は継続を表しています。

 したがって答えは3です。

 

(4)「タ」と「テイル」の対立解消

 「雨が降っている」の「ている」は、現在、継続している事態を表しています。
 「ごはんを食べている」「テレビを見ている」などの「ている」も同じです。
 しかし名詞修飾節内では「ている」ではなく「た」を使っても、同様に継続している事態を表すことができるそうです。

 名詞修飾節は名詞について詳しく説明している部分のことです。
 彼女が作った料理を食べた。
 昨日買った服を着て行く。

 
 選択肢1
 「手紙を書いた少女」の「書いた」は過去の動作。
 「手紙を書いている少女」の「書いている」は現在継続している動作。

 選択肢2
 「お酒を飲んだ人」の「飲んだ」は過去の動作。
 「お酒を飲んでいる人」の「飲んでいる」は現在継続している動作。

 選択肢3
 「めがねをかけた男」の「かけた」は現在継続している動作。
 「めがねをかけている男」の「かけているも現在継続している動作。

 選択肢4
 「ホームランを打った選手」の「打った」は過去の動作。
 「ホームランを打っている選手」の「打っている」も過去の動作。
 試合の振り返りでどちらを使ってもいいので、やっぱり過去の動作の「打った」「打っている」です。

 選択肢3はお互いに言い換えられ、「た」と「ている」の対立が解消されています。
 したがって答えは3です。

 




2021年5月4日平成22年度, 日本語教育能力検定試験 解説