相補的対義語の例から消えた「男/女」の謎

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 対義語の分類について、面白い話を聞きましたので紹介します!

 対義語はいろんな分類があるんですが、その一番最初によく挙げられるのが「相補的対義語」。
 相補的対義語は一方が肯定されれば、他方が否定される対義関係にある語です。コインは裏と表しかないので、裏だったら表じゃない、表だったら裏じゃないという関係が成り立ち、その他の要素が入る隙がありません。一番綺麗にまとまっている対義語です。

 これについて、赤本第4版の123ページ、相補的対義語の説明で挙げられている例に「男/女」があります。
 これも男じゃなければ女、女じゃなければ男と言えますから、これも確かに相補的。

 しかし…

 赤本第5版の134ページに書かれている説明では、「男/女」の記載が無くなりました。
 なんで?

 最近になって男女の垣根を越えた中間的な性を持つ人々が表に出てくることが増えました。今ではその人たちのことを認めていく風潮に変わってきています。男女という二項対立ではなく男性でも女性でもない人々も確かにいるので、だから相補的対義語の欄の「男/女」が消えたのではないか。「男/女」の解釈が変わってきて、単純に相補的対義語だと言えなくなってきている社会的側面があるのでしょう。

 平成29年度 試験Ⅰ 問題12 問1ではこういう問題がありました。

 言葉の選択は、自分が何者であるかという話し手のアイデンティティの主張でもある。そのような言葉の選択に関わる一つの要因として、男らしさ、女らしさのような社会文化的に形成された性、ジェンダーがある。

 生物学的な性別は男女の2つですが、社会文化的に見たジェンダーは男女以外にもたくさん。
 「男/女」の表記だけでは表せないものがあり、読者や受験者に配慮した形だと思います。

 ただ生物学的な性別では、「男/女」は確かに相補的対義語です。実際平成23年度 試験Ⅰ 3Bではちゃんと「男/女」という記載があります。もう10年近く前になりますが。
 こういった問題は配慮された結果、今後出題されないと思います。





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