音節と拍(モーラ)の違いと言語のリズム

言語のリズム

 音楽にもリズムがあるように、言語にもリズムがあります。リズムとは強勢や音節、モーラなどが時間的に等間隔で繰り返されることによって生じる律動のことで、強勢リズムと音節リズムに大別されます。

強勢リズム
強勢拍の言語
強勢のある音節が時間的にほぼ等間隔に繰り返される言語のこと。 英語、ロシア語、ドイツ語など
音節リズム
音節拍の言語
各音節が時間的にほぼ等間隔に現れる言語。 中国語、スペイン語、フランス語など

 日本語も一応音節リズムに含まれますが、日本語は音節ではなく拍(モーラ)でリズムを刻むので、音節リズムの下位区分、モーラリズムの言語として扱います。

 強制リズムならアクセントの強勢から次の強勢までの時間がほぼ等間隔に現れ、音節リズムは各音節が等間隔に現れます。モーラリズムの日本語は1拍1拍が時間的に等間隔に並びます。このようなリズムの性質を等時性と呼びます。

 

音節

 音節は音声の聞こえ方の一種で、一定の時間的長さをもった音の単位です。日本語を音節区切りするときの基準は以下です。(音節の区切り方は言語によって違います)

 1.二重母音は一音節
 2.特殊拍は前の音と一緒に数えて一音節
 3.「イ」の前に「イ」段以外の音が来るときは二重母音になるので、それで一音節
   ただし二重母音にならないこともあるので分けて数えても良い
 4.それ以外は全部一音節

 子音で終わる音節は閉音節、母音で終わる音節は開音節と言います。
 /ʃάk/(shock)は子音[k]で終わってるので閉音節、/sakura/は母音[a]で終わってるので開音節。

 日本語は子音+母音、あるいは母音単体で1拍、あるいは1音節を形成するので開音節が多い言語です。逆に英語などは子音で終わる音節が多いです。

 (1) 死んだ → 死ん(閉音節) + だ(開音節)
 (2) 切った → 切っ(閉音節) + た(開音節)
 (3) 宇宙  → う (開音節) + ちゅう(開音節)
 (4) 日本語 → に (開音節) + ほん(閉音節) + ご(開音節)

 ※長音は長母音と呼ばれ、実は母音です。

 

拍(モーラ)

 拍(モーラ)も音声の聞こえ方の一種で、一定の時間的長さを持った音の単位です。日本語のリズムは拍を基本としています。「ゃ」「ゅ」「ょ」は前の仮名と一緒になって1拍、 それ以外の仮名は1文字で1拍を形成します。1拍1拍は必ず同じ時間で現れます。

直音 一つの母音または一子音と一母音からなるもの。
仮名一字で1拍(1モーラ)を形成します。
拗音 「しゃ」「しゅ」「しょ」のように、「ゃ」「ゅ」「ょ」を添えて表される音のこと。
子音+半母音+母音で構成され、仮名2文字で1拍を形成します。
特殊拍 長音 「-」のこと。長母音。
1文字で1モーラを形成し、前の母音が1拍分引き伸ばされます。
促音 「っ」のこと。1文字で1モーラを形成します。
語頭にも語末にも立たず、必ず先行する音、後続する音を必要とします。
原則カサタパ行の前にしか来ませんが、外来語ではその限りではありません。
撥音 「ん」のこと。1文字で1モーラを形成します。
語頭には立ちませんが、外来語ではその限りではありません。

 

音節と拍の違い

 「日本語教育」を音節と拍に区切るとこうなります。

6音節 に/ほん/ご/きょう/い/く
8拍 に/ほ/ん/ご/きょ/う/い/く

 「会話」「アイスブレイク」などを音節に区切ると、2通りの区切り方があります。なお、拍の区切り方は絶対1通りです。

会話 アイスブレイク
音節 か/い/わ (3音節)
かい/わ (2音節)
アイ/ス/ブ/レ/イ/ク (6音節)
アイ/ス/ブ/レー/ク (5音節)
か/い/わ (3拍) ア/イ/ス/ブ/レ/イ/ク (8拍)

 「い」の前にイ段以外の音「か」が来ているので、「かい」は二重母音になります。でも二重母音にならず「か」「い」が別々になることもあるので、「かいわ」は3音節になることもありますし、2音節になることもあります。

 「アイスブレイク」の「レイ」を長音だとみなせば、「レイ(レー)」で1音節です。長音ではなく「レ」と「イ」は別々に発音されるとすればそこで区切られて2音節になります。また、「レイ」は「イ」の前にイ段以外の音「レ」が来ているので二重母音だ! と思えば、やっぱり「レイ」で1音節になります。これはその人の読み方によるので、これもどっちも正しいです。




2021年8月11日日本語教育能力検定試験, 用語・まとめ