令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

問1 情報が共有されている場合

 選択肢1
 文脈指示のア系は記憶の中にある過去の出来事を指すので記憶指示と呼ばれています。話し手と聞き手がその会議に参加していたので、共有の記憶を指して「あの会議」と言ってます。これが答え。

 選択肢2
 この言い方だと、来週出張に行くことは「私」しか知らないです。

 選択肢3
 詠嘆の終助詞と言ってるので、これは一人で感傷的になってるものだと思います。情報共有ではありません。

 選択肢4
 知らないから疑問の「の」を使ってます。自分は知らない、相手は知ってる。情報共有はされていません。

 したがって答えは1です。

 

問2 話し方を変える

 選択肢1
 住民説明会の本来の聞き手は住民、その住民に対して方言を話してます。アコモデーション理論のコンバージェンスです。
 本来の聞き手以外の存在が登場しないので、この選択肢は間違い。

 選択肢2
 本来の聞き手はインタビューしている人ですが、インタビューしている人ではなく地元の聴衆を意識して方言を使っています。下線部Bと一致します!

 選択肢3
 運動会の開会式で校長先生が話してます。校長先生は「保護者と地域住民に向かって」話し方を変えました。ですから本来の聞き手も「保護者と地域住民」です。下線部Bの言ってることとは違います。

 選択肢4
 本来の聞き手は「面接官」で、面接官に向かって敬語を話してます。本来の聞き手以外の存在が登場しないので、この選択肢は間違い。

 コメントでのご指摘ありがとうございました!!
 答えは2です。



問3 「って」

 これは過去にも何度か見た問題です。ほとんど使いまわし。

 選択肢1
 「晴れるって言ってたよ」「晴れると言ってたよ」
 「言う」が後節するので、この「って(と)」は引用です。

 選択肢2
 「先に帰るって言ってたよ」だから引用の「って」

 選択肢3
 「ないよ、ないって言ってたよ」と言えないから、引用の「って」じゃないことは分かります。この「って」は相手の言葉に対する反問、主張を表すものです。
 
 選択肢4
 「再来月に来るんだって言ってたよ」だから引用の「って」

 したがって答えは3です。

 

問4 非優先応答

 非優先応答の前に、隣接ペアについてまず知ってないと。

 隣接ペアとは、挨拶に対する挨拶、問いに対する返答、誘いや申し出に対する返答などのお互いにペアとなっている2つの発話のことです。また、隣接ペアの中に別の新たな隣接ペアが入ることを挿入連鎖と言います。以下の会話では、隣接ペア①と④の中に、隣接ペア②と③が挿入されています。

 A:①暇? 遊びにいこう?
 B:②バイトないの?
 A:③うん、ないよ。
 B:④じゃあいこっか。

 隣接ペアにおいて、相手が産出する可能性がある複数の応答の中で、最も期待される応答のことを優先的応答、期待にそぐわない応答を非優先的応答と呼びます。例えば依頼に対する受諾が優先的応答で、拒否が非優先的応答です。

 1 「問い」に対する優先応答は「返答」、非優先応答は無視とか?
 2 「申し出」に対する優先応答は「受諾」、非優先応答は「拒否」
 3 「苦情」に対する優先応答は「謝罪」、「弁明」は非優先応答
 4 「要請」に対する優先応答は「許可」、非優先応答は「拒否」

 したがって答えは3です。

 

問5 口頭のパフォーマンス・テスト

 選択肢1
 私は昔即興性を測定するためにタスクの場面説明を行わないで口頭試験したことがあります。でも結果大失敗。
 条件を一定にするためにタスクの場面は同じものにしたのですが、一人目が終わるとその人は他の人に情報共有しますので、結果二人目からタスクが知られてしまうという事態に陥りました。タスクを知らなかったのは一人目だけで結果不平等。
 テストはちゃんと説明しておいたほうがいいです。

 選択肢2
 「テストでは課題遂行能力を評価します」などとはっきり評価基準を示しておけば学習者はその点頑張ればいいと分かります。何も分からない状態だとかえって緊張感や不安感が高まります。

 選択肢3
 モデル会話通りに進んでいると高評価ってのはちょっと…
 タスクに対してのアプローチは人それぞれだし、その人がどうやってタスクをこなしていくのかを見たほうが良いです。

 選択肢4
 現実場面での運用能力を測定するのは、まあ一番良いことに見えます。

 したがって答えは4です。

 




2022年9月23日令和2年度, 日本語教育能力検定試験