令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題8解説
問1 Can-do
この問題で見逃しちゃいけないのが「CEFR A2レベル」です。この基準が分からないとこの問題も解けません。
ここでいうヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)とは、ヨーロッパの言語教育が共通の基準で行われるように定められた、言語能力の測定基準を示したものです。低いほうからA1、A2、B1、B2、C1、C2の6レベルに分けられていて、このうちA2がここで出題されています。
ちなみにJF日本語教育スタンダードという枠組みはこのCEFRを基準にして作られました。さらにこのJF日本語教育スタンダードは、日本語能力試験(JLPT)やBJTビジネス日本語能力テストなどの難易度を決める際に基準となってます。
A1~C6の6段階と、JLPTの5段階の対応はだいたいこんな感じです。
CEFRのレベル | JLPTのレベル |
---|---|
A1~A2 | N5 |
A2 | N4 |
A2~B1 | N3 |
B1 | N3~N2 |
B1~B2 | N2~N1 |
B2 | N1 |
B2~C1 | N1以上 |
C1~C2 | すっごい日本語 |
このレベルの対応表は目安です。
詳しくはこちらを参考にしてください。
参考:JF日本語教育スタンダードに基づいた評価と日本語能力試験の合否判定との関係
参考:JFスタンダードとは
参考:「学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」(CEFR)共通参照レベル: 全体的な尺度
つまりCEFR A2レベルはJLPT N4くらいなので、かなりの初級です。そんなに難しいことはできません。各選択肢の中からこれは初級だろうって思われるものを探します。
1 「詳しく明瞭な」は明らかにN4じゃなさそう
2 「複数の紹介」「一つの流れにまとめた」はN4には無理そう
3 「自分の経験」を書くのもN4は厳しそうなのに、それを関連づけるのはもっと無理そう
4 「短い簡単な文」はN4でもできそう!
したがって答えは4です。
つまるところ、CEFRのレベルを知ってますか?という問題でした。
問2 マインドマップ
マインドマップはこんな図のことです。考えていることを書き出して整理するようなときに使います。
したがって答えは2です。
問3 ピア・レスポンス
ピア・レスポンス/ピア推敲とは、学習者がペア、あるいはグループでお互いの作文を読み合い、良いところや直したほうがいいところを伝え、そのフィードバックをもとに書き直す活動のことです。書く能力を向上させると同時に仲間との関係性を良くすることが主な目的です。
選択肢1
ピア・レスポンスは学習者間で書いた作文を添削し合うような活動です。仮に2人の能力が著しく離れていた場合、レベルが低い学習者は高い学習者のアドバイスを聞き取れなかったり、理解できなかったりします。ピア・レスポンスでのペアはレベルが近いほうが効果的であることが多いです。
選択肢2
正しい。何を書いているか分からない部分などは指摘される可能性があるので、その時点で自分の言いたいことを整理する必要がでてきます。
選択肢3
正しいです。他人の作文に意見する過程で自分の作文を見直すきっかけになるかもしれません。
選択肢4
その通りです。それまでは作文書いて先生に出して終わりーという流れですが、これだと本当に書いて終わり。実際目の前に読んでくれる人がいるとなるとちゃんと書こうとか、分かりやすく書こうとかそういう意識が生まれます。これが読み手を意識した活動に繋がります。
したがって答えは1です。
問4 教師によるフィードバック
選択肢1
これは完璧なフィードバックです! 学習者の作文を直すのって実はかなり苦労します。単語レベルの間違いもあるし、文型レベル、談話レベルの間違いもあります。部分的に訂正するのか、全体的に訂正するのかで教師の疲れも変わります。”原文を生かしながら”不自然な部分を添削できるとすれば、それは作文添削の神。だいたいマジで添削しようとすれば原文なんてほとんど残らないんですけどね…
選択肢2
「不公平が生じないように」で釣ってるんだと思いますけど、学習者によって苦手な部分は違うし、間違う部分も違うし、当然添削の仕方は変わってきます。
選択肢3
自分の作文を隅々まで添削されたらやる気を失うって人もいるでしょうけど、間違っている部分を指摘してあげるのは教師の責務なのでそのままにするのは良くないです。かなりメンタルやられてる学習者だったらカウンセリング方面の対応が必要になってくるでしょうけど。
選択肢4
優れた点をちゃんと褒めてあげるのも重要だし、間違っている部分をちゃんと指摘してあげるのも重要。どっちが重要とかはなく、どっちも重要です。
したがって答えは1です。
問5 ポートフォリオ
ポートフォリオとは、学習記録のことです。教師なら自分の授業を振り返るための記録など、学習者なら自分の学習過程で書いたノートや作文、作品などを指します。
1 活動記録も作品もポートフォリオに含まれます。
2 活動記録や作品が残っているので、それらから振り返りを行うことができます。
3 配った教材、プリントなどを保存させる? ファイリングか何かか?
4 ポートフォリオは教師も学習者も自分の反省のために用いるものなので、成績評価とは関係ありません。
したがって答えは2です。
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