令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 カリキュラム案
下線部Aの標準的なカリキュラム案とは、日本で生活する外国人に対して、生活をしていく上で必要不可欠な行為をまとめたものです。そこで必要になる日本語の項目、関連情報なども同時にまとめられています。特に生活に使う日本語を早く学びたいという人を相手にした授業を作るときに役立ちます!
したがって答えは4です。
ちなみに選択肢2の「課題遂行能力を6段階で示した」ものはJFスタンダードです。
参考:「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」等
参考:「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案 活用のためのガイドブック
問2 モジュール型教材
モジュール型教材とは、各回完結型の教材のことです。
ここでは標準的なカリキュラム案を参考にしているので、例えば「賃金を払う」という日本での生活に必要な行為に関係する日本語を教えるため、「賃金を払う」ことに焦点を当てた教材を使おうとしています。
普通授業と言えば前回の授業が次の授業に繋がったり生かされたりするものを想像しますが、モジュール型教材はその課で完結するので、繋がりが無い状態で自由に用いることができます。特に生活に必要な日本語を早く学びたいという外国人に対して有効な教材です。
したがって答えは1です。
問3 STEP2で行う活動
この授業の目標は、地震が起きた時に適切な行動がとれるようになることです。
まずSTEP1で地震に関するスキーマを活性化させるようなことをして、とるべき行動についてグループで考えました。
STEP2ではより具体的な方策を考えたり、実際にレアリアに触れたりする活動が並んでいます。
1 STEP1に「感じたことを話し合い」とあります。この選択肢の内容はSTEP1に行うこと。
2 これが答え。自分の避難経路を考える活動はより具体的な内容なのでSTEP2で行うにふさわしいです。
3 この授業の目標は地震に対して適切な行動がとれるようになることです。感想文を書かせるのは目標と合ってません。
4 漢字の読み方を教え合うのも目標と合ってません。
したがって答えは2です。
問4 スキャニング
スキャニングとありますので、ここで一度意味確認。
スキャニング | 大量の文章から特定の情報を探し出すための読み方のこと。名簿から特定の名前を見つけたり、辞書で言葉の意味を調べるときなどに用いる読み方。スキャニングにはトップダウン処理がより必要とされる。 |
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スキミング | 文章の要点や全体の大意を理解するための読み方のこと。 |
1 この活動はディクトグロスです。
2 「大意」という言葉がありますので、スキミングです。
3 「概要を聞き取る」=「大意を把握する」なので、これもスキミング。
4 必要な情報を聞き取る活動なので、これがスキャニングです。
したがって答えは4です。
問5 対話中心の活動
『地域日本語教室における「対話中心の活動」の意義と効果に関する研究』にはこのように書かれています。
文型を中心とした機能主義的な「学校型」の活動が行われてきたが,近年では,外国人参加者と日本人参加者が同じ地域に暮らす住民として学びあい,人間関係を築く中で日本語コミュニケーション力を身につけようとするような活動が見られるようになってきた。このような「対話中心の活動」(以下,「対話活動」も同義とする)は徐々に広がりを見せ,そのためのボランティア養成講座が実施されたり,活動集が出版されたりしている。
「対話中心の活動」ってちゃんとした定義のある用語なんですね。初めて知りました。
私はつい学習者同士の対話、教師と学習者の対話のことかと思ったら違いました。まさか地域住民が対話の相手とは…
1 反転授業っぽいやつ
2 対話中心の活動はお互い学び合う活動なので、学習者に習得した知識を活用させる機会を与えるというのがちょっと違う感じがします。
3 ここでいう「支援者」が地域住民を指しているとすれば、これは対話中心の活動です!
4 私が勘違いした選択肢です。学習者同士の対話だと思った人はこの選択肢を選ぶはずですが、実は間違いでした。
したがって答えは3です。