イ形容詞とナ形容詞全般についてまとめ!

 ここではイ形容詞とナ形容詞、属性形容詞と感情・感覚形容詞などについてまとめています。
 間違いなどありましたらコメントください。

 

 

イ形容詞とナ形容詞について

名称について

美しい きれい(な)
日本語教育 イ形容詞 ナ形容詞
国文法 形容詞 形容動詞

 日本語教育ではイ形容詞とナ形容詞と呼ばれるものが、国文法では名称が違います。国文法の「形容詞」は日本語教育のイ形容詞を指し、「形容動詞」はナ形容詞を指します。
 日本語教育の「形容詞」はイ形容詞とナ形容詞の総称です。

 

イ形容詞とナ形容詞の見分け方

 イ形容詞もナ形容詞も物事の性質や状態を表す語で、役割は同じです。名詞を修飾するときの形や言い切りの形から見分けることができます。

 イ形容詞は終止形が「い」で終わり、名詞を修飾するときに「~い+名詞」の形をとります。

 (1) 大き態度
 (2) 重
 (3) 明る

 ナ形容詞は言い切りの形が「だ」で終わり、名詞を修飾するときに「~な+名詞」の形をとります。

 (4) ここは静か
 (5) 静かところ
 (5) 勇敢行動
 (6) 夕日が綺麗
 (7) 綺麗夕日だ

 ただし以下は「~な+名詞」の形を取っていますが、ナ形容詞ではなく連体詞です。

 (8) 大き鳥居
 (9) 小さ会社
 (10) おかし
 (11) いろんこと

 「静かな神社」の「な」より前の部分に着目すると「静かだ」「静かではない」のように活用できます。
 「大きな鳥居」の「な」より前は「大き」ですが、「大きだ」「大きではない」とは言えません。
 連体詞はそれ自体で活用できませんので、この点からナ形容詞と連体詞の区別がつきます。

 連体詞についてはこちらに詳しく書いています。
 参考:連体詞、副詞について

 

イ形容詞とナ形容詞のアクセント

 3拍のイ形容詞は単独で読むと2拍目にアクセントが置かれることが多いです。名詞に接続すると「い」のアクセントが高かったり低かったり安定しないのですが…
 厚い、遠い、多い、暗い等は2拍目にアクセントがなく例外です。「暑い」は「熱い」と意味を弁別するためにアクセントが変わっているみたいです。

青い、低い、すごい、太い、重い、古い、ほしい、暑い、辛い、白い、狭い、細い、高い、まずい、強い、速い、黒い、痛い、長い、安い、怖い、苦い、温い、弱い、寒い、若い、早い、赤い、広い、軽い、丸い、甘い、薄い、眠い、遅い…

 それから、4拍のイ形容詞は4拍目にアクセントが置かれることが多いです。
 例外は「平たい」だけ見つけました。他にもあると思います。

大きい、少ない、おかしい、明るい、涼しい、酸っぱい、可愛い、楽しい、危ない、黄色い、小さい、短い、汚い、優しい、寂しい、うるさい、嬉しい、親しい、険しい、しつこい、怪しい、貧しい、恋しい、四角い、茶色い…

 3拍の「か」で終わるナ形容詞は1拍目にアクセントに置かれます。
 例外は見つかりませんでしたが、あったら教えてください。

静か、確か、密か、遥か、にわか、わずか、かすか、おろか、のどか…

 

属性形容詞と感情・感覚形容詞について

属性形容詞と感情・感覚形容詞について

 物事の性質や状態を表すイ形容詞とナ形容詞は、属性形容詞と感情・感覚形容詞に分けられます。
 属性形容詞は対象の客観的な性質や状態を表すもので、感情・感覚形容詞人の主観的な感情や感覚を表すものを指します。

種類
属性形容詞 大きい体、体が重い、明るい光、高い場所、小さい手、短い棒、新しい話、黄色い花、汚い部屋、長い髪、静かな部屋…
感情形容詞 私は悲しい、高所が怖い、脚が痛い、光が眩しい、とても眠い、美味しいご飯を食べた、彼が嫌い、良い人だと思う、不安、得意…

 主観的な感情や感覚を表す性質上、感情・感覚形容詞は主語は一人称のときしか使うことができない制約があります。二人称、三人称を主語に取る場合は、「~そう」「~みたい」などの様態、推測の表現、「~がる」などの接尾辞がつきやすいです。ただし、感情・感覚形容詞の「好き」「嫌い」は例外的に三人称主語を取れます。

 (12) 〇私は嬉しい
 (13) ✕あなたは嬉しい → 〇(あなたは)嬉しそうですね
 (14) ✕彼は嬉しい → 〇彼は嬉しがっています

 

「~がる」が接続できるからといって感情・感覚形容詞とは限らない

 感情・感覚形容詞は二人称、三人称に使えない。使うときは「~そう」「~がる」が必要と言いましたが、逆に言うと「~そう」「~がる」が使えたらそれは感情・感覚形容詞ではないという考え方もできます。これは大部分の感情・感覚形容詞に当てはまりますが例外もあります

 (15) (感情・感覚形容詞)好き → ✕好きがる
 (16) (感情・感覚形容詞)幸せ → ✕幸せがる
 (17) (感情・感覚形容詞)嫌い → ✕嫌がる(きらがる)

 上記は全て感情・感覚形容詞ですが、「~がる」を接続できません。
 「嫌な(いやな)」は「嫌がる(いやがる)」と言えるが、「嫌いな(きらい)」は「嫌いがる(きらいがる)」とは言えません。

 (18) (属性形容詞)強い → 〇強がる
 (19) (属性形容詞)汚い → 〇汚がる
 (20) (属性形容詞)新しい → 〇新しがる

 逆に、属性形容詞なのに「~がる」が接続できてしまう例もあります
 「~そう」「~がる」で感情・感覚形容詞か属性形容詞かを判断するのは危なさそうですけど、大部分はこれで判断できますので一つの判断基準にはなるかなと思います。

 属性形容詞と感情・感覚形容詞って言ってますが、これって実はだいぶ曖昧ですよね…
 「冷たい」は対象の温度が低いことを表す属性形容詞ですが、実際に「冷たい」と感じるのは人です。「大きい」も属性形容詞ですが、160cmの人が170cmの人を見たときに「大きい」と言えるのに、180cmの人が170cmを「大きい」とは言いにくいです。物事が持っている特徴を感覚で捉えて、その特徴に名前を付けただけっていう感じ。属性形容詞って言っても結局人の感覚で捉えたものなので、話者の感覚や比較対象によって表現は変わり得ます。

 

属性形容詞は中和ができる

 属性形容詞はある文脈において対義関係にあたる語との対立を解消し、中立的に用いることができます。これを中和と呼びます。

買い物でレジ袋についてお客さんに尋ねる場面において
店員:大きさはいかがいたしましょうか。
お客:大きいのください。

 店員が言った「大きさ」は大きいものを指しているのではなく、そのサイズを指しています。サイズには大きいサイズ、中くらいのサイズ、小さいサイズ等があり、それらの上位語が「大きさ」です。「大きい」はもともと「小さい」と対立していますが、この文脈においてはその対立関係を解消して中立的に用いています。
 一方、お客の「大きい」は「小さい」と対立する語として用いており、中和は起きていません。

 感情・感覚形容詞には中和は起きません。属性形容詞だけに起こるものです。
 この方法で両者を判別する方法もありますね。

 

属性なのか感情・感覚なのか判断がつきにくいケース

大阪の海は 悲しい色やね

 これは『悲しい色やね』の歌詞の一部です。
 「悲しい」と感じるのはその人なので感情・感覚形容詞だけど、海の色を形容して「悲しい色」と言っているので属性形容詞としても見れそうです。

 また、何かデザインするとき、配色を決めるときなどに言う「うるさい色」。
 「うるさい」は感情・感覚形容詞ですけど、これも「色」を形容して「うるさい」と言っているので属性形容詞っぽい働き。

 共感覚表現はどちらに分類されるのか判断しにくいです。こういうのに名前ついてるんですか?

 

補助形容詞

補助形容詞 (形式形容詞)

 補助形容詞は以下の語に後接して文法的な機能を担います。主に「ない」「ほしい」「いい」「よい」がそうです。

イ形容詞連用形 身長はあまり高くない
高くなくてもいい
ナ形容詞連用形 そこまで綺麗ではない
静かじゃない
一部の助動詞 彼は学生ではない
男らしくない
食べたくない
動テ形 まだ食べてない
食べてほしい

 補助形容詞はその直前に「は」や「も」などの取り立て助詞を挿入できます。この方法は見分け方としてめちゃくちゃ優秀です。

 (21) あまり高くない → あまり高くない (補助形容詞)
 (22) 静かでない → 静かでない (補助形容詞)
 (23) 彼は学生でない → 彼は学生でない (補助形容詞)
 (24) まだ食べてない → まだ食べてない (補助形容詞)
 (25) 食べてほしい → 食べてほしい (補助形容詞)

 「ない」には特に注意が必要です。「ない=補助形容詞」というわけではありません。同じ「ない」でも品詞が異なったりします。

 (26) 自信がない (イ形容詞)
 (27) 小骨が全くない (イ形容詞)
 (28) その動きに迷いはなかった (イ形容詞)

 例文(28)は、「は」が挿入できているみたいに見えますけど「迷い」は名詞です。「迷いがない」の「ない」は別の語に後接しているわけではなく単独で用いているのでただのイ形容詞です。

 (29) 部屋がきたない (イ形容詞の一部)
 (30) 量が少ない (イ形容詞の一部)
 (31) 授業がつまらない (イ形容詞の一部)

 イ形容詞にはもともと「ない」が含まれているものがありますが、これは語の一部です。否定の意味を持つものではありません。

 (32) お菓子は食べない (助動詞)
 (33) 何も知らない (助動詞)
 (34) バイトにはもう行かない (助動詞)

 「ない」が「ぬ」に置き換えられる場合、それは助動詞です





日本語教育能力検定試験 解説, 用語集